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【ドイツ語の言い回し】Jeder ist seines Glückes Schmied

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【ドイツ語の言い回し】Jeder ist seines Glückes Schmied

今回もまたドイツの言い回しをご紹介します。今回は珍しく「ポジティブ」な言い回しです!

 

こちらです。

 

Jeder ist seines Glückes Schmied.

 

直訳すると「誰もが自分自身の幸運の鍛冶屋である。」 です。「自分の幸せ、自分の人生は自分の手で切り拓くもの」という意味です。

 

Jeder ist seines Glückes Schmied.の由来には諸説ありますが、一説によると既にキリスト紀元前300年に共和政ローマ期の政治家のアッピウス・クラウディウス・カエクス(Appius Claudius Caecus)がこの言い回しを使っていたとのことです。

 

私に子供はいませんが、もし子供がいたら、この言い回しを言い聞かせていたと思います。子供のうちに「自分でできることをやる」「努力をする」のを覚えるのは大事なことですから。

 

昭和の時代の日本の親がよく子供に言っていた「バカも天才も関係ない。(勉強を)やるか・やらないかで差が出てくるだけだ。」という発言とちょっぴり趣旨というか意図が似ている気がします。やっぱり子供には「周りが何とかしてくれる」なんて思ってほしくないですし、「できるだけの努力をする習慣を身に着けてほしい」と親は考えるわけです。

 

ただ大人になって、社会のことが色々と見えてくると、この言い回しJeder ist seines Glückes Schmiedの問題点も見えてきます。例えば親が虐待をする家庭に育った子供は勉強やスポーツなどを「がんばる」環境になく、そもそも「努力をすることすら難しい環境」に置かれているわけです。全ての人に「幸せや運命は自分で切り拓くものだ」を当てはめようとするのは、家庭などで起きている様々な「歪み」について社会が責任を取らずに個人に責任を押し付ける「自己責任論」につながる面もあるのではないかと危惧します。・・・と、そんなことを考えていたら、Deutschlandfunk Kulturでもこの言い回しを問題視する宗教哲学者の意見が載っていました。こちらです。

Deutschlandfunk Kultur

記事の中で宗教哲学者のGesine Palmerさんは「自分の幸せを作るのは自分の責任」ということを信じてやまない人は必然的に「不幸な出来事が起きた人」に対して「(不幸なことが起きたのは)その人の責任である」という考え方をしてしまいがちなのが問題だと書いています。

 

人間、誰もが先進国に生まれるわけではありませんし、誰もが自分を歓迎してくれる親のもとに生まれてくるわけではありません。世界には戦地で暮らさなければいけない人もたくさんいます。これらのことは残念ながら「自分の努力で何とかなる」性質のものではないのです。だから人間の幸せに関しても不幸に関しても、全てを「その人の責任」とする考えは酷だしそもそも現実的ではないのですね。

 

でも、そういったことを考慮しながらも「自分の人生に必要なことについて、今日、自分にできる努力はする」ことをするようにしたいものです。あまり難しく考えないで「今日、できることから」始めたいと思います。

 

また来月!

 

サンドラ・ヘフェリン

サンドラ・ヘフェリン

ドイツ・ミュンヘン出身。日本歴19年、著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ) 、「ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ』(原作: サンドラ・ヘフェリン、漫画: ヒラマツオ/KADOKAWA)、「『小顔』ってニホンではホメ言葉なんだ!?~ドイツ人が驚く日本の「日常」~」(原作: サンドラ・ヘフェリン、漫画: 流水りんこ/KKベストセラーズ)」など計11冊。自身が日独ハーフであることから、≪ハーフはナニジン?≫、≪ハーフとバイリンガル教育≫、≪ハーフと日本のいじめ問題≫など「多文化共生」をテーマに執筆活動をしている。ホームページ 「ハーフを考えよう!」 を運営。趣味は時事トピックについてディベートすること、カラオケ、散歩。

サンドラ・ヘフェリン