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色んな「感動」が奪われた2020年

色んな「感動」が奪われた2020年


秋ですね。ちょっと涼しくなってくると、まだ年末でもないのに、色んなことを考えてしみじみ。




今年は・・・コロナに翻弄されましたね、世界もニッポンも。




日本で感染者数や重病者の数は比較的抑えられてはいるものの、コロナは「日本人のあり方」に大きな影響を与えました。




日本人は「皆で団結して何かを成し遂げる」のが好きな国民性です。自分が皆と一緒に頑張るのも好きだし、他の人が皆で頑張っている姿を見るのも好き。




けれど、今年の夏はあの甲子園も、そしてオリンピックも中止になってしまいました。(もっともオリンピックに関しては中止ではなく延期との見方もありますが・・・・)




甲子園が中止になったのは79年ぶりで、オリンピックが中止になったのも第二次世界大戦以来です。ちなみに過去に中止になったオリンピックには1916年のベルリン(第一次世界大戦のため)と1940年の東京(日中戦争のため)も含まれているので、日本とドイツの両方が当事者です。。




野球好きの人にとってはニッポンの夏の恒例である「甲子園で頑張る高校生」が見られないのは一大事。オリンピックがなくなってしまい、一番気の毒なのはスポーツ選手たちですが、我々も「観る楽しみ」がなくなってしまいました。実は私自身はスポーツにあまり興味はないのですが、そうはいっても色んな国から人が集まるオリンピックは「お祭り気分」でワクワクするのです。やっぱりオリンピックがなくなるのって寂しいです。。




ところで今年の夏も暑かったですよね。本来はそんな暑いニッポンの夏に熱い応援(「●●選手、がんばれー!!!」)が加わるはずでした。ああ、こうやって書いていると何だか本当に悲しくなってきます。もともと体育会系的なことが好きではない私は、大声で応援するタイプではないのですが、それでも「声を出して応援」って、実はとても贅沢なことだったんだということに気付かされます。コロナウイルスというものが登場した今では、【声援⇒飛沫が飛ぶ】という方程式が有名になってしまいました。




オリンピックも甲子園も「勝利の涙」「感動の涙」、そして負けた時の「悔し涙」・・・色んな涙が流れます。




普段あまり感情を見せない日本人が、こういう場面では人前で泣くのがドイツ人の目から見ると不思議です。




日本のチーム競技では「皆で頑張って勝利を成し遂げた時の涙」、そして「皆で頑張ったけど負けた時の悔し涙」など【皆で流す涙】が多い気がします。




日本の卒業式でも泣く人が多いのは、「皆で頑張った何年間」があるからなのかもしれません。中学校の卒業式だったら、皆部活の経験もありますし、皆と一緒に朝練をしたり大会に出たりと、そんなことを思い出しながら涙する・・・のだと想像します。




その点、ドイツの学校にはいわゆる部活はなく、また卒業式も「式」というよりも「パーティー風」なので、日本のようなウエットなものにはならないのですね。




日本の卒業式に関しては「ああ卒業式で泣かないと冷たい人と言われそう」という歌詞(斉藤由貴さんの「卒業」という曲です。大好きです。)をみても分かるように「泣くことを周囲から期待されている」部分もあるようです。




今年の春、新型コロナウイルスの影響で日本の小中学校が休校になり、卒業式が中止になったり延期になった学校もありました。旦那と二人でテレビを見ていたら「卒業式のために皆で頑張ってきたのに、このまま休校になるなんて・・・」と泣いている小学生がいました。なんともかわいらしかったのですが、旦那と二人で「これ、ヨーロッパの小学生だったら、休校になって『やっほー!休みだー!いえーい!!』で終わっちゃう話だよね。子供がこういうことで泣くっていうのが日本っぽいね。」なんて話していました。




ドイツの子供は休校に関してカラッとしています(笑)ただコロナによるドイツの休校は地域によっては長期に渡るものだったため、最初は「やっほー!」と喜んでいた子供も、時間が経つにつれ家にいることを苦痛に思うようになったのだとか。でも少なくとも休校になったその時点では子供は休校を喜んでいたようです(ミュンヘンに住んでいるサンドラの友達(子供が二人)情報)。




そんな「カラッとサラッと」のドイツと比べると、日本では「皆で頑張っていたのに、成し遂げることができなかった」と悔し涙を流したり、逆に「皆で団結して何かを成し遂げた」ときに感動の涙を流したりと、やっぱり日本は「感動屋さん」が多いです。




・・・・この「感動」のツボが違うところが、ドイツの文化 VS 日本の文化の大きな違いかもしれないなあ。




日本とドイツの文化の違いというと、食べ物だとか建物だとか「目に見えるもの」にスポットが当たりがちなのですが、目に見えない「人の気持ち」や「人の感情」の部分が日本とドイツではけっこう違ったりするんですよね。だから互いに誤解も多いけど、新しい発見もあるという。




それにしても以前のように運動などの場面で「皆で団結して頑張る」スタイルが不可能になってしまった今、新型コロナウイルスは日本人から様々な場面での「感動」を奪っていっています。。




暗い〆になって、すみません。・・・来年2021年が今年よりも良い年になりますように!




って、なんだか年末みたいですが、今年もまだ2カ月以上あるので、あっと驚く【良いこと】があるかもしれません。Hoffen kann man ja…




それではまた11月にこの連載でお会いしましょう。




サンドラ・ヘフェリン

サンドラ・ヘフェリン

ドイツ・ミュンヘン出身。日本歴19年、著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ) 、「ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ』(原作: サンドラ・ヘフェリン、漫画: ヒラマツオ/KADOKAWA)、「『小顔』ってニホンではホメ言葉なんだ!?~ドイツ人が驚く日本の「日常」~」(原作: サンドラ・ヘフェリン、漫画: 流水りんこ/KKベストセラーズ)」など計11冊。自身が日独ハーフであることから、≪ハーフはナニジン?≫、≪ハーフとバイリンガル教育≫、≪ハーフと日本のいじめ問題≫など「多文化共生」をテーマに執筆活動をしている。ホームページ 「ハーフを考えよう!」 を運営。趣味は時事トピックについてディベートすること、カラオケ、散歩。

サンドラ・ヘフェリン