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創造的なアーティストが住むフリーデナウ地区に引越して

創造的なアーティストが住むフリーデナウ地区に引越して

こんにちは、ベルリン在住イラストレーターのKiKiです。

ロックダウンが解除され徐々に日常が戻りつつあるベルリンですが、企画されていたアートイベントや展示会などは中止やオンラインに移行され、直接作品をじっくり見ることができる機会はまだまだ全然ありません。1つ楽しみにしていたアートイベントも先日オンラインで行われたのですが、やはりオンラインでは作品の様子がつかめず、やるせない気持ちでいっぱいになりました。

この状況で、何をYoung Germanyさんのコラムでみなさんにお伝えしたら良いのか。とても悩みました。頭を抱えながら、近所を散歩していました。散歩をして、辺りを見渡して、ハッと気づいたテーマ『創造的なアーティストが住むフリーデナウ地区に引越して』。

今回は、そのお話のピロローグとして書きたいと思います。

 

コロナカオスが本格化した3月に、住む場所を失う

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▲フリーデナウのシンボルGuten Hirten教会

1年半一緒にルームシェア生活をしていた女性に、『3月1日から念願の新しい仕事が決まって、あなたの部屋を仕事部屋に使いたいから引越しをしてほしい』と、とてもショックな通達を2月1日に受けました。

ベルリンは近年価格が上がってきているとはいえど、他のヨーロッパの都市と比べたら物価はとても安く、それなのに国際都市で様々な文化が交差し、アートも盛んで、自由な風通しと雰囲気が人気を呼び、部屋探しは常に大変困難。ベルリンで部屋を借りたい人たちが、ベルリンにあるアパートの数を大幅に上回っているのです。なので、1つのアパートをルームシェアして(こちらではWGと言います)共有して借りることは一般的です。私の部屋の契約は、彼女が契約しているアパートの一室を間借りしているというものでした。

一緒に住む中で、彼女の長年の夢であった”新しい仕事”を得るまでの過程のお話を聞いたり、苦労や頑張っている姿を見ていて、1人の友人として心から応援をしていました。しかし、いざその仕事が決まったときに彼女から言われた言葉は”それ”で、心がぽっかりしてしまって、なんとも言えない虚無感に襲われたことを今でも覚えています。

いくら交渉しても、悲しいことに私が部屋を出て行かなくてはいけない事実は変わらなかったので、急いでベルリンの過酷な部屋探し争奪戦の渦に向かいました。

退去の約束の日。3月1日になっても、厳しい争奪戦に勝つことはできず、残念ながら引越し先を見つけることはできませんでした。優しい友人の元に1週間居候させてもらい、その後また友人の友人の部屋を紹介してもらい移動。そうこうしている間にコロナの状況は悪化し、そこから移動できなくなってしまいました。

そこが今でも私が住んでいる場所で、地区の名前をフリーデナウ(Friedenau)と言います。そして本当にありがたいことに、親切な同居人に恵まれ、この場所で当分落ち着いて生活ができそうです。

5月初めにロックダウンが解除され、心にも余裕ができてきて(油断をしてはいけませんが)ちょっとずつ外を散策できるようになった最近。

古い建物の街並み、落ち着いた人通り、緑も多く、大きな教会が地区のシンボルとして中心部にあって、毎時間を知らせる教会の鐘の音が心地よいということに、やっと気づいたのです。

 

フリーデナウ(Friedenau)の名前の意味は、『平和の氾濫原』

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▲Perelsplatz(子供達で賑わうとってものどかな公園)のDeluge噴水

氾濫原(はんらんげん)とは、河川の氾濫や河道の移動によってできた平野のこと。

1871年、旧ドイツヴィルマースドルフ邸宅の地所に裕福な通勤の町として誕生。この名前は、同年普仏戦争を終結させたフフランクフルト講和条約と平和を記念して、建築家ヘルマンハーネルの妻であるヘドウィグハーネルによって提案されました。

趣があって落ち着く古い建物たちの歴史は、20世紀初頭にまでさかのぼり、185もの建物が文化遺産として保護されているのだそう。

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▲区のところどころにある水汲み機も可愛い。

シューネベルク地区とテンペルホーフ地区に挟まれた、とても小さな地区。日本語で検索してもベルリンの観光地としての情報は全く出てこないような地区です。ですが調べてみると、特に作家を中心に、常に創造的なアーティストが住んでいた歴史があることがわかりました。

Max Bruch、作曲家

Hans Magnus Enzensberger、詩人、作家

Max Frisch、建築家、作家、

GünterGrass、作家、ノーベル文学賞受賞者

Georg Hermann、作家

Kurt Hiller、作家

Hannah Höch、アーティスト

Uwe Johnson、作家

Erich Kästner、作家

Heinrich Klemme、映画スタジオの創設者兼監督

Adam Kuckhoff、作家

Friedrich Luft、ドラマ評論家

Herta Müller、作家、ノーベル文学賞受賞者

Bernd Pohlenz、漫画家

Rainer Maria Rilke、叙情詩人

Karl Schmidt-Rottluff、画家

Walter Trier、イラストレーター

Kurt Tucholsky、風刺作家、作家

歴史や、住んでいたアーティストたち、そしてゆかりの地を調べれば調べるほど、面白いどんどんこの地区の魅力に惹かれていきました。

今はコロナの影響で、新しいアートイベントや展示会はクローズされてしまっていますし、遠出は難しい状況です。なので、このフリーデナウ地区で見つけたアートをご紹介してくコラムをコロナが落ち着くまで書いていこうと、散歩の最中に思い立ったのです。

大きなショックを受けたことに気を取られていると、すぐ近くにある素敵なものに気付けなかったりします。やっと近くにある素敵なものに目を向ける余裕が心に出来てきました。ここにもきっと何かご縁があって、辿り着いたのでしょう。

 

”ベルリンのアーティストが住む街”として、認知されることを祈って

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▲駅のホームの壁に描かれた『Komm mit nach Friedenau(フリーデナウにおいでよ!)』という歌の楽譜が気になっています。どんな歌なのだろう。楽譜が読めないのが悔しいです。

日本語で”ベルリンのアーティストが住む街”と検索すると、すぐ名前が上がる地区は、ノイケルン、クロイツベルク、プレンツラウアーベルクなどですが、この3つは”若くてエネルギッシュ”な印象です。(以前はプレンツラウアーベルクに住んでいて、そこも大好きな街です)

一方フリーデナウは、落ち着いていて、静かに創作に打ち込めるような場所です。私はこの落ち着いた雰囲気が大好きです。

フリーデナウも、このコラムをきっかけに”ベルリンのアーティストが住む街”の1つとして認識されるようになったら嬉しいなと思います◎

 

参照:

https://en.wikipedia.org/wiki/Friedenau#cite_ref-4

https://de.wikipedia.org/wiki/Berlin-Friedenau

KiKi

イラストレーター/コラムニスト

西伊豆の小さな美しい村出身。京都造形芸術大学キャラクターデザイン学科卒業後、同大学マンガ学科研究室にて副手として3年間勤務。その後フリーランスに。2016年夏よりベルリンに移住。例えば、私のように小さな集落で暮らしている子が旅立つ時期を迎えたとき、『世界はこんなにも広くて、こんなにも選択肢があるんだ』と気付けるようなものを残していけたら、最高だなと想いながら絵と文章をかいています。

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KiKi