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【ドイツ語の言い回し】Was der Bauer nicht kennt,frisst er nicht

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【ドイツ語の言い回し】Was der Bauer nicht kennt,frisst er nicht

いきなりですが、私は「食べること」が大好きです。だから基本的に「食べられないもの」はありません。特にこれといった主義もない人間ですので、ベジタリアンではなく、そしてもちろんヴィーガンでもなく、何でも食べます。

 

そんな私が最近改めて残念に思っているのは、これだけ人の往来が増え、昔と比べると世の中が国際化してきているはずなのに、「自分の文化圏で一般的とされている食べ物以外は食べたくない」もっというと「異なる文化圏で食べれられているものについて拒否感をもち、その拒否感を露骨に見せる人がいまだにいる」ということです。

 

先日、ドイツ人男性と結婚し、ドイツに住むある日本人女性のTwitterでの投稿が話題になりました。

 


 

ドイツでは「魚が苦手」という人は少なくありません。当然ながら日本の煮干しなんていうのは多くのドイツ人にとって「全く未知のもの」です。それはよいのですが、「そういったもの(煮干し)を食べるなんて、信じられない。オエー!」という態度をとってしまう人がいるのはやはり問題です。「いい大人がそんな大人げない態度を・・・」と思いそうなものですが、上記のRieさんが書いたように「大人がこうした態度をとってしまうケース」はドイツでたまに見かけます。それを見た子供が大人の真似をして、他人が食べているものについて「自分はそんなの食べない。オエー」とやってしまいうことにつながっています。

 

上に書いたようなことを私は「オエー問題」と呼んでいます。お察しの通り、この「オエー問題」は食に貪欲な人が多い日本よりも、食に対して保守的なスタンスの人が多いドイツでよく見られます。

 

今でこそヨーロッパはSUSHIブームですが、私が子供だった1980年代のドイツでは「生の魚を食べる」という行為は多くの人にとってグロテスクなものでした。当時「日本人って生の魚を食べるとか信じられない。オエー(ドイツ語でbäh)」「虫が湧きそう。オエー」といった発言をするドイツ人が結構な数いたと記憶しています。日本人が好んで飲むお味噌汁についても「泥水みたい」「尿みたい。オエー」という発言をする人も。

 

ドイツにはWas der Bauer nicht kennt,frisst er nicht. (和訳「農夫は知らないものを食べない」)という言い回しがありますが、これは「新しいものを常に警戒し触れようとしない人のことを揶揄した言い回し」です。この「オエー問題」の背景を理解するためにまさにこの言い回しがピッタリなのですが、「自分が食べられない」はまだ良いとして「他人が食べているものを堂々と気持ち悪がる」という行為はくれぐれもやめていただきたいものです。

 

和食に対して「オエー」をやられてずいぶんと悔しい思いをしてきた私ですが、今だったら“Du bist unhöflich.“または“Sie sind unhöflich.”(和訳「あなた、失礼です」)とピシャッと言ってやるのにな、なんて思います。

 

「腹が減っては戦ができぬ」が座右の銘である私は、冒頭に書いたように「食べること」について前向きなタイプです。でもグローバル化した今の世の中でも、「食に対して保守的な人」がいるのは頭の片隅に入れておいたほうが良いかもしれません。ここでいう「食に対して保守的な人」とは「自分の知らないものは絶対に食べたくない」と考えるタイプの人のことです。つまりはWas der Bauer nicht kennt,frisst er nicht.という言い回しにピッタリ当てはまる人のことですね。特にドイツに住んでいる日本人にとっては、「あー、オエーのような変なリアクションが来そう、来そう」と心の準備をしておいたほうがナイスな反撃(“Sie sind unhöflich.”など)ができるかもしれません。がんばりましょう!

 

ではまた来月!

 

サンドラ・ヘフェリン

 

サンドラ・ヘフェリン

ドイツ・ミュンヘン出身。日本歴19年、著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ) 、「ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ』(原作: サンドラ・ヘフェリン、漫画: ヒラマツオ/KADOKAWA)、「『小顔』ってニホンではホメ言葉なんだ!?~ドイツ人が驚く日本の「日常」~」(原作: サンドラ・ヘフェリン、漫画: 流水りんこ/KKベストセラーズ)」など計11冊。自身が日独ハーフであることから、≪ハーフはナニジン?≫、≪ハーフとバイリンガル教育≫、≪ハーフと日本のいじめ問題≫など「多文化共生」をテーマに執筆活動をしている。ホームページ 「ハーフを考えよう!」 を運営。趣味は時事トピックについてディベートすること、カラオケ、散歩。

サンドラ・ヘフェリン