ハーフがあうイジメ「手を合わせてお辞儀」
前回「チン・チャン・チョン問題」について書きました。この「チン・チャン・チョン問題」以外に、ドイツに住む日独ハーフや、日本人を含む東洋人が直面するもう一つの「からかい」があります。
それは…
「手を合わせてお辞儀」です。
ドイツ人が日本人にニヤニヤしながら近づいてきて、イキナリ手を合わせてお辞儀をする、という「からかい」です。
この「からかい」について、ドイツやヨーロッパの事情をあまり知らない日本人にお話しをすると、必ず「そのドイツ人は日本人とお友達になりたかっただけなんじゃないの?」と言われます。
その「お友達になりたかったんじゃないの?」を聞くたびに、私はなんて純粋なんだろう! と感激するのですが、残念ながら実際は「お友達になりたい」のではありません。
一部のドイツ人の目には、日本に限らずアジアの「お辞儀」そのものが「ペコペコしている」というふうにうつるようです。お辞儀自体をバカにしているのです。だから東洋人にニヤニヤしながら近づき「手を合わせてお辞儀」をするのです。「ほーら、アジア人ってみんなこうやってペコペコしてるんでしょ?」と言いたげに。
ドイツで暮らした事がある日本人は経験があるのではないでしょうか?
この「手を合わせてお辞儀」は、本来はタイ風の挨拶ですから、タイ人に対してかなり失礼だと思っています。
でも日本人に対しても失礼だし、アジア全体に対して失礼ですよね。
この「手を合わせてお辞儀」、私には苦い思い出があります。それはギムナジウムでラテン語の先生と皆で修学旅行に出かけた時のこと。夜、ラテン語の先生とみんなでお酒を飲みながらおしゃべりをし、夏の夜を楽しんでいたのですが、そこでたまたま私が夏休みは日本に遊びに行く、という話をしました。すると、ほろ酔い気分になっていたラテン語の先生は「日本人っていまだに、こんな事やってるの?」とニヤニヤしながら言ったのです! もちろんお決まりの「手を合わせてお辞儀」をしながら。
私はその時、ラテン語は好きだったし、その先生の事もどちらかというと好きだったのですが、「ああ、これがこの先生の本音だったんだな」と思うと、一気に冷めました。
学校の先生で知識層と言われているラテン語の先生がこの手のイジメを平気でしちゃうんですから、(一部の) ドイツ人の東洋人蔑視はもしかしたらかなり根が深い問題なのかもしれません。実際の暴力ではなくても、こういった細かいところでの、東洋人をバカにしたような「からかい」がまかり通っているのは悲しいことですね。
「気にすることないよ」で片付けちゃうのは簡単だけれど、気長にこれからも訴えかけていきたいと思っています。
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サンドラ・ヘフェリン
ドイツ・ミュンヘン出身。日本歴12年、著書に「浪費が止まるドイツ節約生活の楽しみ」(光文社) など5冊。自らが日独ハーフである事から、「ハーフ」について詳しい。ちなみにハーフに関する連載は月刊誌に続き今回が2回目である。趣味は執筆と散歩。目黒川沿いや碑文谷をよく散歩している。