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ドイツの赤ちゃんはなにを食べるの? 離乳食もやっぱり主食はジャガイモ

ドイツの赤ちゃんはなにを食べるの? オーガニック・旬のものを選ぶママが多い。写真はブロッコリーを食べている生後半年の赤ちゃん Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

ドイツの赤ちゃんはなにを食べるの? 離乳食もやっぱり主食はジャガイモ

連載「ハローBaby ~子育てABC」<5>

息子たちが生後5カ月が過ぎた頃、ベビーマッサージで出会った友人間で増えた話題といえば、離乳食。いつ始める? 最初の食べ物は? 手作りor既製品? わたしへは「日本ではなにを食べるの?」という質問も。それに対しては自信をもって「コメ(おかゆ)」と答えています。それでは、ドイツでは? わいわいがやがや友人たちと情報交換しながらスタートした離乳食生活、どんな様子なのかお伝えしますね。

|オーガニック・旬のものを選ぶママ多し


わたしの夫が赤ちゃんだった70年代ドイツの離乳食といえば、主に缶や瓶入りベビーフード。ドイツのベビーフード大手のひとつ「Hipp」(ヒップ)も、すでに創業していました(1932年創業)。Hippの創業者が出演する離乳食のTVCMはメジャーなチャンネルでも流れていますし、瓶入り製品はドラッグストアチェーンなどにずらりと並んでいます。中でもHippのイチオシは、長く培ったオーガニックのクオリティーなようです。



ベビーフードに限らず、オーガニック食品に対する意識が高いドイツ。例えばドルトムントだと、市内中南部に限ってもオーガニックスーパーマーケットがそれぞれの徒歩圏内に3軒あります。また、オーガニックスーパーマーケットでは当然地産の生鮮食品が多く、自然と旬のものを選ぶ機会が増えます。



離乳食を始める時期の赤ちゃんを持つママ同士の会話は、「●●にはオーガニックのカボチャが並んでいた」「シーズンのコールラビもいけた」といったかんじです。手作りではなく瓶入りベビーフードであっても、先のHippをはじめオーガニック製品の選択肢が豊富。わたしのまわりでも、オーガニック製品を手に取るママが多いですね。ちなみに市販のベビーフードはほとんどが瓶入り。ぱっと見ただけでは売場にパウチといった他のスタイルは確認できませんでした。

市販のベビーフードはほとんどが瓶入り。ぱっと見ただけでは売場にパウチといった他のスタイルは見当たらない Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

市販のベビーフードはほとんどが瓶入り。ぱっと見ただけでは売場にパウチといった他のスタイルは見当たらない Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA



手作り・市販品の割合は、「少量なので買っちゃてる」と割り切っているママもいるほど、トントンといった印象です。無理をせず、いい食材に出会った時や時間に追われていない時に調理するというのも手だと思います。わたし個人としては、出先や旅先以外は手作りの離乳食を与えています。基本的には多めに作ってフリージングしていますが、電子レンジ文化が日本ほど発展していないドイツにあってはフリージングはあまりメジャーでないようです。

|魚でなく肉


離乳食を進めるステップとしては、5カ月以降2〜4カ月をかけて食べられる種類を増やしていくのが標準的で、わたしも特に違和感なく始められました。我が家の通いヘバメ(※)も、日本の離乳食の本を見ながら「だいたい同じステップね」とうなずいていました。

※前回コラム「保険適用のありがたい存在『へバメ』とは?」参照。

ただし、ドイツでは最初の頃からしっかり肉を与えます。日本でも鶏ささみ肉は離乳食として一般的なので鶏肉かと思って瓶入りベビーフードをみてみると、牛肉。鶏肉もあったものの、どのブランドからも出ていてバリエーション豊かにラインナップされていたのは牛肉でした。実際に瓶入りベビーフードの肉をあげてみた友人に聞いてみると、「においはペットフードみたいだし味も微妙」とのことでしたが…。

各ブランドの瓶入りベビーフード。すべてオーガニック製品 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

各ブランドの瓶入りベビーフード。すべてオーガニック製品 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA



ひるがえって日本の離乳食の本で早い段階に出てくるのは、魚。新鮮な白身魚を手に入れたいところですが、日本のように身近に鮮魚店はありません。ママ友たちと話している時にわたしが「息子にあげられる魚を探さなきゃ」と言うと、「なんで魚?」と聞かれてしまいました。文化として、存在しないんですね。

離乳食中・後期には、食物繊維やビタミン、ミネラルを多く含むVollkorn、すなわち全粒穀物も推奨されています。ヘバメからは、水や母乳、粉ミルクと混ぜて与えるパウダー状のDinkel(スペルト小麦)を勧められました。新鮮な野菜はもちろんすばらしいですが、手軽に準備できるという点でも備えておくとよいアイテムですね。

なおコメはここでようやく全粒穀物と共に紹介され、順序としては肉より後。エネルギーとなる主食には、コメではなくジャガイモが採用されています。

水や母乳、粉ミルクと混ぜて与えるDinkel(スペルト小麦)。これもオーガニック製品 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

水や母乳、粉ミルクと混ぜて与えるDinkel(スペルト小麦)。これもオーガニック製品 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA



|日本の味も覚えてね


我が家の息子が最初に口にした離乳食は、「十倍がゆ」(コメに対して十倍の水で炊飯)。こればかりはなぜか譲れませんでした。実際のわたしたちおとなが食べる料理となると、きっちり日本食ばかりを作っているわけではまったくないんですけれど。将来、日本の食文化に対しても関心を持ってもらいたいなという想いです。

その他日本らしい離乳食としては、豆腐。オーガニックの絹豆腐が400gでおよそ380円と少々高価ですが、息子は気に入ってくれました。また野菜の合わせには昆布だしを使っています。日本の水(軟水)ほど旨味は出ないそうですが、味見をしてみておいしかったので問題はなさそうです。



とはいえ、日本の離乳食に凝り固まるのではなく柔軟に進めるようにしています。要は、双方のいいとこ取り! ヘバメは「きっと、たくさんいろいろ食べるようになるわね」と言ってくれました。食事が大好きになってくれますように。

シュルテ柄沢 亜希

Aki SCHULTE-KARASAWA ● 1982年生まれ、ドイツ・ドルトムント在住。フリージャーナリスト。執筆ジャンルは自転車・アウトドアアクティビティ、スポーツ、旅、食、アート、ライフスタイルなど文化全般。幼少期の5年間をハンブルクで過ごしたことがアイデンティティのベースにある。好きなものは、ビール、チーズ、タマゴ――ワイン、日本酒、ウイスキーも大好き。ランニング、ロードバイクライドにてカロリーを相殺する日々。ブログ「ドイツのにほんじん」に日記をつけ、産経デジタル「Cyclist」、三栄書房「GO OUT」などで執筆中。

シュルテ柄沢 亜希