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<ドイツのハッキリ、日本のハッキリ>~婚活編~

<ドイツのハッキリ、日本のハッキリ>~婚活編~

全体的な傾向として、ドイツ語のほうが日本語よりも「ハッキリ」が似合う言語ですよね。実際に、ドイツ人のほうが日本人よりも物事をハッキリ言っている印象を受けますし。

 

ただし前回書いたようにテーマが「夫」になると、ドイツ人女性よりも日本人女性のほうがモノをハッキリ言っていたりします(笑)

 

思えば「結婚」というものについて、そう、たとえば婚活という場においても、日本人女性のほうが相手に求める条件が「はっきり」していて、それを口に出して言う事がドイツ人女性よりも多いですね。「結婚相手の男性に求めること」について、日本人女性のほうがドイツ人女性よりも「はっきりと」語る事が多い印象です。

 

たとえば、ドイツにおいては女性が堂々と「結婚相手の男性は安定した職業で安定した収入の人がいいです」(“Mein potentieller Ehemann sollte einen stabilen Job und ein geregeltes Einkommen bieten können.“)と言えば、多くのドイツ人は二つの点でビックリすることでしょう。まず一つ目のビックリは「お金」のことをそこまでハッキリ言ってしまう、という点。そう、ドイツのほうが日本よりも「お金」について話すこと、お金にまつわるアレコレは汚いこととして扱われているフシがありますね。ですので節約の話は別として「お金がほしい」というような内容のことはドイツでは公の場であまり言ってはいけないこと、どちらかというとそういった話をするのはよろしくないこと、とされています。(まあ日本でもそうなんですけど、ドイツのほうが徹底していますね。)そして二つ目の(ドイツ人にとっての)ビックリは「男性」に対してこういう事を言ってしまうんだ・・・という点に尽きるでしょう。男性や将来夫となる人物に対して、もう少し敬意とか愛情とかそういうものがあるのかと思いきや職業と収入ですか!という(ドイツ人的な)驚き。このようなお金がらみの「理想」を語った日には、周りのドイツ人に“Sie ist berechnend.“(「彼女は計算高い女だ」)と思われる・言われることでしょう。

 

逆に日本の感覚だと、昔からの「お見合い」文化の影響もあり、「情報を事前に開示する」「条件を結婚前にはっきりと申し上げる」ことは比較的普通のことだったりします。お見合いに関して言えば、それこそ結婚前の段階で、職業や収入はある程度はっきりしていますし、それを前提とした縁談ですものね。『お見合いおばさん』などはそれこそ「真面目な●●(←職業)で安定した収入で誠実な人がいるのよ」という、経済面での安定性、つまりは「お金」の話をアピールしたりしますよね。

 

「相手の年収が分かった上で相手と会う、相手とお見合いをする」という説明をすると、ドイツ人から“Das ist aber nicht romantisch. Mit Liebe hat das ja überhaupt nicht zu tun.“(「全然ロマンチックじゃないね。愛情のかけらも感じられない。」) とお叱りを受ける事が多いのですが、お見合いや現在の日本の(一部の)婚活においては、なにも年収だけではなく、相手の趣味や週末の過ごし方、容姿など、ある程度事前に把握してからのご対面となることも少なくありません。これ、ドイツ人の言うromantisch(ロマンチック)とはちょっと違ったりするのですね。もしかしたらドイツ人は少なくとも出会いの段階においては未知の世界によりロマンを感じるのかもしれません。

 

ちなみに私サンドラは日本のお見合いや「結婚前にハッキリ条件を言う」システムが実は嫌いではありません。もちろんロマンチックかと聞かれれば、詳細を事前に知ることはロマンチックではないのかもしれません。しかし実際のところ、極端な例で恐縮ですが、ブランド物が大好きな女性が年収の低い男性と結婚をしても二人が幸せになるとは思えませんし、旅行好きの人が、飛行機や電車嫌いの人と結婚しても、二人で旅行することは難しかったりするわけです。子供を複数ほしいと思っている女性の場合、相手に「経済力」を求めるのも何だかうなずけます。

 

やはり現実的かつハッピーな結婚生活のためには日本流の「事前の確認事項」も必要なのかもしれません。

 

さて、もしかしたら読者の皆さんは「じゃ、ドイツの恋愛や結婚ってどうなの?」と興味を持ってらっしゃる方もいるかと思いますので、書いてみると・・・ドイツ女性の「求める男性像」って日本人女性とはだいぶ違いますね。

 

まず日本人女性が「収入の安定している男性と結婚したい。子供は二人ほしいから、20代で一人は産みたい」などと結婚前いや男性と出会う前から「予め」条件を決めていたり自分の中で割とハッキリしたヴィジョンがあるのに対し、ドイツ人女性の場合は「自分が恋をした男性に身をゆだね(…こういうと演歌風ですね)その後、男性と一緒になってから子供は作るか作らないか、その人の年収等が「後になって分かる」パターンが多いですね。つまり日本人女性が男性と出会う前から条件等を描いているのに対し、ドイツ人女性は恋をする男性に出会ってから「その後の流れで」子供や収入等のもろもろについて突き詰めていく感じですかね。そのぶん流れで子供を作ることになったり作らないことになったりという事がドイツのほうが多い気がします。

 

日本人女性は予め「流れ」を自分で決めているのに対しドイツ人女性は男性と出会った後に「流れ」が決まるという感じでしょうか。

 

つまり恋愛や結婚において、ドイツ人女性のほうがよく言えばロマンチック、悪く言うと事前の条件がはっきりしていない分だけだめんず(失礼!)に引っかかる確率が高いといえそうです。

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ちなみに安定した職に就かず夢を追いかける男性に対してはドイツの社会やドイツの女性のほうが優しいといえるでしょう。

 

日本の場合、女性の親のほうが「そんな寝ぼけた事を言う男性はやめなさい!」と言うような男性であっても、ドイツだったら意外にも「フツー」で通ったりします。

 

ドイツの男はぶっちゃけお金がなくても、恋愛市場において日本ほど自分の価値が下がりません。ドイツは女性が男性に対して表立って金銭等の保証を求めない社会(求めにくい雰囲気)だということですね。

 

・・・だいぶ話がそれた感がありますが、この女性側も条件をはっきり言うこの日本の文化、かつて多かった「お見合い」の文化と無関係ではないなと改めて思ったのでした。

 

ちなみに私自身は残念ながらお見合いはしたことはないのですが、今となっては経験のためにしておけばよかったとちょっぴり後悔。

 

この日独ハーフの視点ではドイツと日本の様々な違いや共通点について取り上げながら今まで恋愛についてはあまり書いてこなかったので、これからはそちらにもたまにはスポットをあててみようと思います。また近いうちに「ドイツ人の恋愛」について書きますね。

 

今後ともどうぞよろしくお願い致します。

サンドラ・ヘフェリン

ドイツ・ミュンヘン出身。日本歴19年、著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ) 、「ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ』(原作: サンドラ・ヘフェリン、漫画: ヒラマツオ/KADOKAWA)、「『小顔』ってニホンではホメ言葉なんだ!?~ドイツ人が驚く日本の「日常」~」(原作: サンドラ・ヘフェリン、漫画: 流水りんこ/KKベストセラーズ)」など計11冊。自身が日独ハーフであることから、≪ハーフはナニジン?≫、≪ハーフとバイリンガル教育≫、≪ハーフと日本のいじめ問題≫など「多文化共生」をテーマに執筆活動をしている。ホームページ 「ハーフを考えよう!」 を運営。趣味は時事トピックについてディベートすること、カラオケ、散歩。

サンドラ・ヘフェリン