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日本でよく使われている言い草は、ドイツ語に翻訳すると強烈になってしまう?!

日本でよく使われている言い草は、ドイツ語に翻訳すると強烈になってしまう?!

日本語は「あいまい」であるとか、ときには「ディベートには不向き」なんて言われていますよね。

 

たしかに日本語にはあいまいな表現が多いし、たとえばドイツ語と比べてみるとドイツ語のほうがハッキリしていますし、全体の傾向としてドイツ人のほうが「はっきりモノを言う」のは確かなようです。

 

が!

 

明らかにそうではない部分があります。

 

それは・・・はい、日本人の女性が「旦那さん」について語るとき!彼女達は非常に「ハッキリ」語るのです。

 

たとえば、昭和の時代に流行った(?)「ウチの旦那、仕事をやめてから、どこにもついて来たがって、ほんとう濡れ落ち葉みたいなのよ~。困っちゃうわ~。」という発言。

 

この「旦那が濡れ落ち葉みたいで、どこにでもついて来たがって困るのよ~」をドイツ語に訳すと、なんだか発言者の女性が物凄く残酷な女性に感じられてしまうから不思議です。

 

同時期(昭和の時代)に夫を陰で『粗大ゴミ』と言っていた女性達もいました。粗大ゴミ。。。こちらの表現も日本だと「かわいそう~、あはは・・・」で済みそうですが、ドイツで「夫は粗大ゴミ」(ドイツ語で粗大ゴミはSperrmüllといいますので、翻訳すると“Mein Mann ist wirklich so etwas wie eine Art Sperrmüll.“)なんて言った日には発言者の人格が疑われそうです。

 

さて、上記の「濡れ落ち葉」や「粗大ゴミ」は過去のちょっと強烈な例かもしれませんが、昭和に限らず、今の時代においても日本人の60代の女性と話をしていますと、彼女達はドイツではあまり聞かないような発言を好んでしています。

 

先日などドイツに住む、ドイツ人男性と国際結婚をした60代の日本人女性が「夫(ドイツ人)が死んだらやっぱり老後は日本で過ごしたいわ~。夫が死んだら、●●(←都内のお洒落エリアの名前)に住んで、毎日●●(←日本の食材の名前)を食べて…。やっぱり日本はいいわよね~。楽しみだわ~。」なんて話していました。続けてそれは楽しそうに、旦那が死んで自分が日本に住むことになったら、日本で国内旅行をしたいとか、どこそこに遊びに行くの♪…と楽しそうに語る彼女。周りの人が冗談で「ご主人、でもまだまだお元気なんですよね?」とツッコミを入れたところ、「そうなのよ~(怒)」とのことでした。「日本に来るのもいいけど、旦那さん、長生きするかもよ~」と周りの人が更に突っ込むと「それは困るわ~」と彼女。続けて「自分が70歳を過ぎたら旦那は●●歳だから、そのころには死んでるはず。そしたら私は日本に来て…」とまたまた将来の計画を楽しそうに語るのでした(苦笑)

 

さて。

 

実はこの手の話し方をする日本人女性というのは、何も国際結婚に限らず日本人同士の夫婦でもゴマンといます。

 

そう、「『老後』は旦那抜きで私が楽しむんだ!」と語る60代女性(いわゆる団塊の世代ですね)の多いこと。そしてそんな女性は決まって元気です。

 

日本だとこの手の話は「女性は強いなあ~」みたいにとらえられることも多く、ある意味ほほえましい(?)扱い方をされていたりしますが、この手の発言をドイツ語に訳したりドイツ語で言うのは実は要注意だったりします。だってドイツ語訳である“Wenn dann mein Mann tot ist, werde ich nach nach Japan ziehen, mir in einer poschen Gegend eine Wohnung kaufen und dann jeden Tag ●●essen.““In soundsoviel Jahren wird mein Mann dann verstorben sein, so daß ich danach…“みたいな話し方をした日には、周りのドイツ人から白い目で見られそうです。ドイツ人から「!!」というリアクションが返ってくることは間違いないです。ドイツにおいてこの手の話をすると第三者(つまり旦那さんではない人)から「旦那の死を待つ酷い女だ!」と激怒される可能性があることすら視野にいれておかなくてはいけません。

 

このあたりの日本とドイツの温度差はなんなのでしょうね・・・

 

もしかしたら日本では昔から「女子」と「男子」の世界が分けられているフシがあるため(お稽古事の世界なんてまさにそうですよね)、女性同士で旦那の悪口を言って女子同士の連帯感が深まったり、異性のいない世界で女性だけの世界を楽しむ・・・ということが日本でのほうが理解されやすいのかな、なんて思ってみたりしました。

 

preview_COLOURBOX2308463ドイツは意外とそこは体裁を気にするというか保守的な考え方が強いですね。観察していると「男性の悪口を言うなんて・・・」「夫の悪口を言うなんて・・・」という考え方というかプレッシャーはドイツのほうが強いと感じます。なので「女性としての思わぬ本音」はもしかしたらドイツでよりも、日本でのほうが言いやすいのかもしれません。しつこいようですがうっかりドイツ語で愚痴を言ってしまった際には決まって“Wenn Du ihn nicht liebst, warum lässt Du dich dann nicht scheiden?“(訳:「彼のことを愛していないのなら、なぜ離婚をしないの?」)というようなまっとうな(?)アドバイスが周りのドイツ人から来たりします。でも思うに、上に書いた日本人女性の場合、かならずしも離婚を考えているとか旦那が大嫌いというわけではなかったりするんですよね。あくまでも日本の感覚でちょっと愚痴と女の本音を言っただけだったりします。なので、そこはドイツ流に大真面目に離婚を勧められてもちょっと違うかもしれません。

 

ドイツ人は「ハッキリ言う」と言われているけれど、(一部の)60代以降の日本人女性の、「旦那さんや男性に対する愚痴」に関しては、日本人女性のほうが絶対に「ハッキリ」だよなあ、、、なんて思った筆者でした。

 

 

このテーマ<日本の「はっきり」、ドイツの「はっきり」>、また来月に続きますので、楽しみにしていてくださいね。

サンドラ・ヘフェリン

ドイツ・ミュンヘン出身。日本歴19年、著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ) 、「ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ』(原作: サンドラ・ヘフェリン、漫画: ヒラマツオ/KADOKAWA)、「『小顔』ってニホンではホメ言葉なんだ!?~ドイツ人が驚く日本の「日常」~」(原作: サンドラ・ヘフェリン、漫画: 流水りんこ/KKベストセラーズ)」など計11冊。自身が日独ハーフであることから、≪ハーフはナニジン?≫、≪ハーフとバイリンガル教育≫、≪ハーフと日本のいじめ問題≫など「多文化共生」をテーマに執筆活動をしている。ホームページ 「ハーフを考えよう!」 を運営。趣味は時事トピックについてディベートすること、カラオケ、散歩。

サンドラ・ヘフェリン