ゲーテ街道の美味しい旅⑧お菓子の宝庫ドレスデン
ゲーテ街道8都市横断の旅も最終回。ザクセン王国の首都として栄えた古都ドレスデンは、東部ドイツを代表する観光都市。クリスマス菓子の本場でもあり名物グルメの宝庫です。
【ゲーテ街道の美味しい旅】
フランクフルトから東へ向かったゲーテ街道の旅。ゴールの町ドレスデンにたどり着いた私を待っていたのは、自転車でした。
ドレスデン市内を効率よく取材するには自転車が一番、と提案してくれたガイドさんと一緒に、ドレスデンじゅうを自転車で走り回ることになったのです。
エルベ川沿いはかつて世界遺産だったほどの絶景が続き、自転車道が整備されているのでサイクリングには最適。郊外のブドウ畑やお屋敷街など、これまで知らなかったドレスデンを再発見することができました。
ドレスデン観光のメインとなるのは、ザクセン王国の時代にアウグスト強王が築いたバロック旧市街。ですが、じつは橋を渡った対岸に広がる新市街、ノイシュタットにも面白いスポットがたくさん。今回はこの新市街を中心にお届けしたいと思います。
新市街のなかでもオイセレ・ノイシュタットと呼ばれるエリアには、地元の人たちに人気の個性的なカフェやショップが密集しています。この界隈のシンボル的存在なのが、アーティストたちが運営するクンストホーフ・パッサージユ。5つの中庭が迷路のようにつながり、アパートや庭自体がアート作品となっている写真映えスポットです。
真っ青な壁一面に楽器をモチーフにした雨どいが張り巡らされているアパート。こんなところに暮らしたら、毎日が楽しそうですよね。
この近所に住むガイドさんに、秘密の抜け道をおしえてもらいました。
子どもたちの遊び場に山羊がいてびっくり!他にも馬やアヒルなどの動物たちがいて、自由に触れ合えるようになっています。町のど真ん中にこんな所があったなんて……まだまだ知らないことがたくさんあるなあ、ドレスデン。
新市街の名所といえば、ギネスに認定された「世界一美しい乳製品店」も見逃せません。何度訪れても美しさに圧倒されます。新鮮なバターミルクやザクセン名物のチーズケーキ、アイアーシェッケをいただくのも楽しみ。
ドレスデンは美味しいお菓子の宝庫で、このアイアーシェッケをはじめ、バウムクーヘンやシュトレンなど、他の町ではなかなかお目にかかれない伝統菓子に出会えます。
今回は老舗のコンディトライ・カフェを訪ねて、名物を色々といただきました。
ドレスデンが発祥とされるクリスマス菓子、シュトレン。ドレスデンのシュトレンは地域ブランドとして産地名称が保護されているブランド品です。冬季限定のお菓子なので、冬にドレスデンを目指したいですね。毎年12月にはシュトレン祭りも開催されます。
ドイツ銘菓としておなじみのバウムクーヘンですが、じつはドイツでは「王様のお菓子」ともいわれる高級菓子の位置付けで、なかなかお目にかかることはありません。高度な技術と経験に加えて専用のオーブンも必要なので、限られた職人さんだけが作ることができる「特別なお菓子」なんです。ドイツ東部にはいくつかバウムクーヘンの本場といわれる町があり、そのうちのひとつがドレスデン。生地の層と垂直方向に薄くスライスしていただくのがドイツ流です。
ザクセン地方の名物ケーキとして知られるアイアーシェッケ。アイアは卵、シェッケはまだらという意味で、焼いたケーキの表面がまだらになることに由来するともいわれています。ドレスデン風アイアーシェッケは、スポンジ生地の上にクヴァルクチーズの層、卵とバターたっぷりの層を重ねた3層構造が主流。日本人好みの、ふわふわで優しい味わいのチーズケーキです。
ドレスデンで味わいたいグルメは、甘いものだけではありません。
お酢や香辛料に漬けこんだ牛肉を蒸し焼きにしたザウアーブラーテンや、
地元以外ではほとんど出回らない貴重なザクセンワイン。なかでもぜひ飲みたいのが、ザクセンならではの品種、ゴルトリースリング(金のリースリング)です。
夏はエルベ川沿いのビアガーデンも最高に気持ちがいいです。※取材時は夏でした
新市街側から眺める、旧市街の景色もごちそう。
ゲーテ街道8都市の旅もこれにて終了。
道中(ここには書けないことも)色々ありましたが、無事にゴールにたどり着くことができました。これまで出会った町、人、美味しいものたちに思いを馳せながら一人で乾杯。
目の前には嘘みたいに美しいバロック建築群があり、まわりはロックダウン明けで幸せそうにビールをのむ人々……私は今、何という奇跡を味わっているのだろう!と胸がいっぱいになりました。
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生きてることは奇跡だな、とつくづく思うことが多い我が人生ですが、その思いはますます強くなる一方です。
戦争でなくても、日常的に無自覚に争ったり傷つけたりしてしまうのは、悲しいけれど人間の性なのかもしれません。自分のなかにも否応無しに備わっているものだとしても、残りの人生、自分も含めた人間の持つ悪意にできるだけ抗っていきたいです。
人間やってるだけで悲しいことは容赦なく起こるし、その度に苦しむのもしょうがないと分かっていても、辛いものは辛いのですよね。だから人は祈ったり、助け合うようにできているのだと思います。
自分のまわりの人、お店や電車でたまたま隣り合う人……みんなそう見えなくても何かしらの地獄にいるかもしれないので、できるだけ優しく接するように心がけたい。自分が何度も救われた経験から、そう願っています。
今回は何事もなかったように記事を終わらせることができず、個人的な思いを書かせていただきました。
読んでくださりありがとうございます。
※特定の団体とは関係のない一個人の思いです