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生後1カ月、はじめましての「ペーキップ」 外へ出るきっかけとお友だちに出逢えたベビーマッサージ

はじめましての「ペーキップ」。ペーキップは赤ちゃんと親が一緒に楽しむアクティビティーで、赤ちゃんが社会性を習得するための大事なステップ Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

生後1カ月、はじめましての「ペーキップ」 外へ出るきっかけとお友だちに出逢えたベビーマッサージ

連載「ハローBaby ~子育てABC」<3>

息子と共にどこかで誰かと初めて会うと、やたらと出てきたのが「ペーキップ(PEKiP)」というキーワード。わからないながら聞いていると、どうやらマッサージやヨガ、スイミング、プレイクラスなど赤ちゃんと親が一緒に楽しむアクティビティーのようでした。「そんな小さなころから参加するアクティビティーがあるのね」と驚いたのも最初だけ。息子が生後1カ月の時には実際にベビーマッサージへの参加が決まり、赤ちゃんを連れて出かける生活が始まりました。

|赤ちゃんが社会性を習得するステップ


「かわいい音の単語だなぁ」という初印象から“ペーキップ”の意味を掘り下げてみると、「Prager Eltern-Kind-Programm」(プラハ式親子のプログラム)の頭文字を取って生まれたことばだということがわかりました。“プラハ式”が指すとおり、ペーキップはプラハの心理学者により考案された0歳児から始める親子のアクティビティーで、ドイツへは70年代頃に取り入れられたようです。

ペーキップの目的は、赤ちゃんたちがコミュニケーションの取り方を学ぶこと。親子間で触れ合い絆を高めるのはもちろんですが、赤ちゃん自身が社会性を身につけるステップとして重要な位置づけとされています。加えて身体能力の発育にも好影響。ペーキップに参加してみると、わたしもそれを実感することができました。

例えば息子と共に参加をしたベビーマッサージでは、生後3〜4カ月で寝返りや腹ばいのできる子がたくさんいましたが、息子もそんな子たちから学び取った様子。ほかの子たちと一緒にいる時にその動きを見ては、積極的に体を動かしていました。そして生後4カ月までにはしっかりと自分で寝返って頭を上げ、周囲の観察を楽しむようになりましたよ。

息子は生後1カ月からベビーマッサージに参加。周囲の観察を楽しんでいました Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

息子は生後1カ月からベビーマッサージに参加。周囲の観察を楽しんでいました Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA



|新米ママパパのマッサージ“はじめ”


助産院(ヘバメプラクシス)で週1回、全5回開催されたベビーマッサージ教室には、9組の参加がありました。パパ+赤ちゃんのペアも1組。「仕事の都合によって、妻と隔週交代で参加することに決めたんだ」と話していました。

マッサージは、厚着に包まれてスヤスヤ状態で到着した赤ちゃんたちを、すっぽんぽんにするところからスタートしました。わたしが初めて参加をした頃は息子は生後1カ月…ということは、ママ歴も1カ月。すべてが初めての経験でチャレンジングです。インストラクターのカトリンは、そんな新米ママパパに適宜アドバイスをくれつつ、ぬいぐるみを見本にしてわたしたちにマッサージ方法を教えてくれました。

カトリンが実践するベビーマッサージは、インドで日常的に行なわれているマッサージだとか。そんなベビーマッサージ教室を、「15年継続しています」とカトリン。でもなんでインド式なのでしょう?

「フランスの婦人科ドクターの本を参考に、インド式ベビーマッサージを始めたの。SHIATSU(指圧)や西洋のマッサージ方法もあるけれど、オイルを使ってマッサージをするインド式は心地よく、赤ちゃんにぴったり。とてもうまくいってるわ」

初回をこなし次回のベビーマッサージ教室に集まると、赤ちゃんたちが「リラックスしていた」「よく寝た」という声がママパパから続出。またマッサージの回を重ねていくうち、単純に、裸でママパパと触れ合うということが楽しいと気付く赤ちゃんも多くいたように思います。

|インド式マッサージ HOW TO


ここでのベビーマッサージは、インド式とあってヨガの要素がたっぷり。持参したオイルを手元に置いて足しつつ、赤ちゃんの様子を見ながらマッサージしていきます。ともあれおむつ交換、入浴、体拭き以外に裸の赤ちゃんにペタペタ触る機会はまだなかったので、何式であろうともマッサージはとても新鮮な経験でした。

小さな教室に9〜10組のママパパ&赤ちゃんが集まったベビーマッサージ。マッサージ後は徐々に授乳タイムへ。ママたちが並んであれこれ話しているうちに赤ちゃんたちも顔見知りに Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

小さな教室に9〜10組のママパパ&赤ちゃんが集まったベビーマッサージ。マッサージ後は徐々に授乳タイムへ。ママたちが並んであれこれ話しているうちに赤ちゃんたちも顔見知りに Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA



内容を簡単に紹介しましょう――胸に手を当て上から下へ、“気”を送るようにゆっくりと流します。次いで脚を握っての付け根から先へ流し、同じ箇所を絞るようにマッサージ。足裏はかかとからつま先の方向へ、手のひら全体で「シュピーン」とマッサージします。上半身は、胸から手の指先へと開くように。そして自分の脚へ左右に頭と足がくるように腹ばいでのせて、背中を両手で左右にまぁるくなでなで。締めにおしりを片手で支え、肩からおしりへ向けて手のひら全体で「シュピーン」とマッサージをします。

マッサージ中は、ママパパそれぞれが自分の子供に集中。眠くないか、気持ちよさそうか、うんちの気配はないか、おしっこは飛んでないか、口からいろいろ出してないか――赤ちゃんと触れ合い、対話しながら1時間を過ごしました。我が子の身体をよく知ることができ、すばやく異変に気づくきっかけにもなるなと感じました。

|フォトグラファーによるベビー写真(おまけ)


ベビーマッサージの最終回、ヘバメプラクシスからすてきなサービスがありました。プロのフォトグラファーによるママパパ&赤ちゃんの出張撮影です。撮影希望者は別室へ赤ちゃんを連れて2〜3分、いくつかポージングをして終了。後日プリント写真を選んで購入する仕組みでした。枚数が増えるごとに単価が安くなるので迷ったものの、わたしは2枚を選び、17ユーロ(約2,250円)でした。

スペシャルな写真を撮りたいと思っていても、赤ちゃんを連れてフォトスタジオへ赴き改めて撮影時間を設けるのはそうそう気軽にできることではありません。教室へのフォトグラファー出張サービスは、なかなかいいビジネスアイディアだなと感心しました。




教室でのマッサージが終わり徐々に授乳タイムになると、ママパパ同士会話もはずみます。赤ちゃんの頭の向きについて、睡眠時間について、あるいは保育園・幼稚園のこと――あれこれ聞いたり話したりしているうちに息子には同じ月齢の友だち、そしてわたしにはママ友ができました。これもペーキップのメリットと言えそうですね。全5回の教室参加を終えたいまでも、毎週順番に各自の自宅を訪れて一緒にベビーマッサージを実践していますよ。

シュルテ柄沢 亜希

Aki SCHULTE-KARASAWA ● 1982年生まれ、ドイツ・ドルトムント在住。フリージャーナリスト。執筆ジャンルは自転車・アウトドアアクティビティ、スポーツ、旅、食、アート、ライフスタイルなど文化全般。幼少期の5年間をハンブルクで過ごしたことがアイデンティティのベースにある。好きなものは、ビール、チーズ、タマゴ――ワイン、日本酒、ウイスキーも大好き。ランニング、ロードバイクライドにてカロリーを相殺する日々。ブログ「ドイツのにほんじん」に日記をつけ、産経デジタル「Cyclist」、三栄書房「GO OUT」などで執筆中。

シュルテ柄沢 亜希