国際結婚家庭は「揉め事」が多い?!
誤解を招くようなタイトルですみません。
近年よく「ハーフの子供も今の時代は珍しくなくなった」とか「たまたまパートナーが外国人だっただけで、(そのほか大勢の)夫婦と変わらない」といった発言を聞くことがあります。
これには同意すると同時に、同意しかねる部分もあります。
というのも、特に「子供のいる国際結婚カップル」というのは「もしも「国際結婚」でなかったら、もしも子供が「ハーフ」でなかったら、決断しなくても良いこと」について決断を迫られるからです。
例えばこんな感じです。
●子供にバイリンガル教育をするか否か
日本人とドイツ人の国際結婚カップルに子供が生まれた場合、その子供に「日本語とドイツ語のバイリンガル教育をするのか」それとも「住んでいる国の一か国語だけを教えるのか」を決めなければいけません。夫婦だからといってこの問題について意見が一致するとは限りません。例えばドイツに住む「妻が日本人、夫がドイツ人の夫婦」の場合、妻が「子供に日本語を教えたい。そのために土曜日は日本語補習校に通わせたい」と考えていても、前回書いたように夫が「週末に子供の勉強に付き合うのは嫌。週末は家族みんなでレジャーを楽しみたい」と考えている場合もあります。そうなると、とことん話し合うか、どちらかが折れるか…となるわけですが、家族間で話す言語ひとつとっても、このように「ハーフの子供のいる国際結婚家庭」は「決めなければいけないこと」「話し合わなければいけないこと」が多いのです。
●子供を日本の学校に入れるかインターナショナルスクールに通わせるか
例えば日本に住んでいる「ドイツ人×日本人の夫婦」に子供がいる場合。もしも子供にドイツ語を覚えてほしいなら、横浜にあるドイツ学園(Deutsche Schule Tokyo Yokohama)に通わせるのが一番確実です。この学校はドイツ国内と同じ教育システムであるため、ここの学校の卒業試験に受かればドイツ国内で認められます。
ただドイツ人の親が「ぜひとも子供をDSTに入れたい」と思っても、日本人の親が「日本にいるのだから日本の学校に通うのが望ましい」という考えであれば、意見はかみ合わず、話し合うしかありません。
もちろん国際結婚ではない夫婦の場合も、たとえば「子供を公立の小学校に入れるか、それともお受験をさせて私立の学校に入れるか」という点について、夫婦で意見が違う場合もあります。ただ国際結婚家庭の場合は、選んだ学校が「子供が将来話せる言語」に直結します。ドイツ学園に通えば、ドイツ語の読み書きができるようになりますが、日本の学校に通う場合「日本にいながらドイツ語の読み書きができるようになる」ことは難しいかもしれません。
ちなみにこの学校DSTは基本的には「ドイツ語ができる子供」を受け入れいてるため、「途中で路線変更をする」ことは難しいのです。たとえば親が「子供を日本の小学校に入学させたけれど、小学校3年生からはドイツ学園に転校させたい」と思っても、その子供がドイツ語ができなければ学校は子供の入学を認めないこともあるようです。
そう考えると、親は「子供が幼稚園ぐらいの年齢から」いや、できれば「もっと早い段階」から「子供に将来、何語を話してほしいのか」「そのためには、どの学校に入れるべきなのか」を早い段階で考え決断しないといけないのです。そういった中で夫婦で意見が違い、揉めることもあるので、なかなか大変です。
●子供に日本とドイツの両方の国籍を持たせるのか
子供の将来の可能性や選択肢を考えると、私は「親は子供に二つの国籍を持たせて、将来、成人した時に、どうするかを子供に決めさせる」のが一番良いとい考えています。
ただ国籍の話は、ドイツの法律や日本の法律に関係していますので、このあたりの「法律」にまつわることを面倒に感じてしまい、国籍の制度について勉強をしないまま、「子供が二重国籍だと違法になってしまうから」と早とちりの勘違いをしてしまう親がちょくちょくいます。ドイツと日本のハーフなのに、親の勘違いで、子供に日本の国籍しか持たせず、大人になってから「なぜ僕に・私にドイツの国籍はないの?」と子供に恨まれる親もいます。
そう考えると、ハーフの子供を持つということは、自分が本来は興味のない分野(例えば国籍にまつわる法律)についても、勉強しなければいけないということになります。子供の将来にかかわってくる話ですから、同じく日独ハーフの子供を持つ親に国籍の話を予め聞いたり、国籍に詳しい弁護士さんに話を聞いたりして知識を深める必要があります。
・・・・どうですか?なんだか聞いていて、面倒くさいと思いましたか?
そうなんです!国際結婚をするということ、ハーフの子供を持つということは、世界が広がることであり、楽しいこともいっぱいありますが、「ほかの人だったら、やらなくてもよいこと」を沢山やらなくてはいけない、ということでもあるのです。要は「やらなくてはいけないこと」が増えます。
最近、家族の在り方について色々と考えることがあります。子供のいる家庭の場合、子供の教育方針も当たり前ですが、「家族」にかかっているのですね。
国際結婚家庭は意見の違いからタイトル通り「揉め事」も多いですが、その分、新しい発見があったり、通常だったら経験できないことを体験できたりと楽しいことも沢山あるかと思います。そのなかで「現実を見る」ことが大事なのだと思います。
この連載のタイトルは「日独ハーフの視点」ですので、久しぶりに「ハーフ」「日独ハーフ」の話について書いてみました。
それでは皆様、また来月お会いしましょう。
サンドラ・ヘフェリン