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「みんなで一緒に食事」が近年ますます難しくなってきている理由

「みんなで一緒に食事」が近年ますます難しくなってきている理由

2020年から数年間続いていた「コロナ禍」では「みんなで一緒に食事をする」機会はありませんでした。「コロナ禍」が明けた今、また「みんなで一緒に食事をする」文化が戻ってきていて本当に嬉しいです。というのも私はみんなで一緒に食事をするのが大好き。

「友達と会う」となると、私の場合は、「踊りに行く」でもなく「バーで飲む」でもなく、「まずは食事」です。ゆっくり食事をしながらお話しをする時間が好きです。だから私にとってお酒はどちらかというと「プラスアルファ」です。

仕事関係者と食事をすることも多いのですが、ここ数年は困ったことが。それは、近年、ベジタリアンやヴィーガンのドイツ人が増えたため、「日本人とドイツ人のグループで皆で一緒に食事をする」というのがハードルの高いものになってしまっているのです。

たとえば二人でベジタリアン対応のお店で「ランチ」をするならば、東京にはベジタリアン専門店もありますし、都内には近年サラダバーが次から次へと出来ました。でも5、6人のグループで「夜」食事をする場合、サラダバーに行くわけも行きませんし、ベジタリアン専門店だに行くと、結局そのグループにいる「ベジタリアンでない人」や「お肉が好きな人」は物足りない思いをすることになってしまいます。

そうすると「お肉やお魚もまんべんなく出してくれて、かつベジタリアン対応またはヴィーガン対応をしてくれるお店」を探すことになるわけですが・・・幹事にとってこれはなかなか大変な作業です。というのも、ドイツなどのヨーロッパの国々に比べると、ベジタリアン対応が可能なお店というのは日本ではまだまだ少ないからです。私の経験だと、事情を説明した上で時間の余裕をもってお店の予約をすれば「ベジタリアン対応」をしてくれるお店も結構あります。ただ「ヴィーガン対応」となると一気にお店を探すのが難しくなる印象です。

上に「時間の余裕をもって予約すれば」と書きましたが、逆にそうでない場合はお店としてベジタリアン対応の食事を出すことが難しいこともあります。基本的にベジタリアンの人がいる場合、「今晩みんなで一緒に食事をしよう」とか「明日の夜、みんなで一緒に食事をしよう」というようなspontan な食事会は難しいと考えたほうが良さそうです。外国からのお客さんが多い人は、「ベジタリアン対応」や「ヴィーガン対応」をしてくれるような「馴染みの店」のリストがあると便利です。

 

「食事」に対するスタンスの違い

 

基本的に日本人とドイツ人では「みんなで一緒に食事をする」ことに対するスタンスが違うと感じることがあります。

 

日本では人と交流する上で「一緒に食事をすること」は何気に大事だと考えられています。もっというと「みんなで一緒に同じものを食べること」が大事だと考えられているフシがあります。だから日本では人の前で「これが食べられない」「あれが食べられない」「これが嫌い」「あれが嫌い」「私はベジタリアン」「私はヴィーガン」と堂々と言う日本人があまりいないのです。

 

ところがドイツではもともと「みんなで一緒に食事をする」ことが人間関係を築く上でそれほど大事なことだとは考えられていません。個人主義の人が多いため、昔から「この食材が嫌い」「これが食べられない」ということを割とハッキリ言うドイツ人が多い気がします。さらにここ数年は「地球と動物のこと」を考えてベジタリアンやヴィーガンになる人が増え、もちろん彼らも自分の主張をハッキリと主張します。ドイツ人は「食事はどちらかというとプライベートなものだから各自、家で済ませる」といった感覚の人が多いのです。

 

ドイツ人の付き合いを見ていると、「人と会って一緒にビールを飲むだけ」だったり「一緒にイベントに行くだけ」というようなことも多い印象。そもそもあまり一緒に食事はしないので、食生活が互いに違っても、あまり問題にはなりません。日本人の場合は夕方や夜にイベントがあると、その流れで「帰りに食事でも」となることが多い気がします。実は私がこれが好きなのですが、そういう意味では私は日本人的なのかもしれません。

 

色々書きましたが、要約すると、人との付き合いの中で「食事」が定めるウエイトが日本人とドイツ人では違うのです。(もちろんこれはあくまでも傾向なので、人による部分もありますが・・・)

 

このエッセイの中で何回か書いたように、私自身は「人と一緒に食事をするここと」が好きです。ただ近年のドイツの人の食生活は本当に多様化していますから、様々なこだわりのある人が増え、「みんなで一緒に食事をする」というのはなかなか大変だということを頭の片隅に入れておいてもよいかもしれません。イスラム教徒も多いドイツでは豚肉が食べられない人もいますし、前回書いたように「食」に対して保守的なドイツ人もまだまだ多く、それに加えて近年はベジタリアンやヴィーガンの人も増えていることを考えると、日本流の「みんなで一緒に食事」というのはなかなか「すんなり」いかないかもしれません。

 

・・・・それにしても、日本にもベジタリアン対応やヴィーガン対応のお店がどんどん増えるといいですね。

サンドラ・ヘフェリン

★こちらも是非読んでみてください★

 

ベジタリアン、ヴィーガンという「生き方」日本と欧米の違いは (讀賣新聞オンライン)

 

ベジタリアンと食事してうんざりする前に知っておきたいこと (讀賣新聞オンライン)

 

サンドラ・ヘフェリン

ドイツ・ミュンヘン出身。日本歴19年、著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ) 、「ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ』(原作: サンドラ・ヘフェリン、漫画: ヒラマツオ/KADOKAWA)、「『小顔』ってニホンではホメ言葉なんだ!?~ドイツ人が驚く日本の「日常」~」(原作: サンドラ・ヘフェリン、漫画: 流水りんこ/KKベストセラーズ)」など計11冊。自身が日独ハーフであることから、≪ハーフはナニジン?≫、≪ハーフとバイリンガル教育≫、≪ハーフと日本のいじめ問題≫など「多文化共生」をテーマに執筆活動をしている。ホームページ 「ハーフを考えよう!」 を運営。趣味は時事トピックについてディベートすること、カラオケ、散歩。

サンドラ・ヘフェリン