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子供も大人も消防の魅力を身近に体験 “ヒーローの靴”を世界に送り出すドイツブランド「Haix」イベント

赤い光と蒸気で演出された“炎”がHaixの世界へお出迎え。家族みんなで楽しめるイベントでした Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

子供も大人も消防の魅力を身近に体験 “ヒーローの靴”を世界に送り出すドイツブランド「Haix」イベント

連載「ハローBaby ~子育てABC」<16>

ピーポーピーポーとサイレンの音(ドイツでの擬音は「ターテューターター」)が聞こえると、はたっと動きを止めて聞き入る子供たち。消防車、救急車、パトカーといった緊急車両は、いつの時代も子供たちに人気だなと感じる風景です。今回は、誰かのために奮闘するそんな“ヒーロー”たちにちなんだイベントがあると聞き息子を連れて行ってきました。

|“ヒーローが履く靴”


到着するやいなや爆音を鳴り響かせながら舞い降りるヘリコプター。かと思えば、レトロなバスが道路を走り、スタントマンたちが壁を速やかにつたい降りたり数メートルの高さから飛び降りたりとアクションを披露している会場――ここは、ドイツの安全靴ブランド「Haix」(ハイクス)が主催したイベントの会場です。イベントの開始時には、隣接する国道を止めて路上にヘリコプターが降り立ち、SWATチームのユニフォームをまとったボディガードに囲まれた同社CEOが現れる、というおおがかりなパフォーマンスまであったのだそうです(見たかった!)。

爆音を鳴り響かせながら舞い降りるヘリコプター。間近に見たのは初めての息子も大注目 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

爆音を鳴り響かせながら舞い降りるヘリコプター。間近に見たのは初めての息子も大注目 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA





Haixはドイツ南部のマインブルクを拠点とする企業で、消防士向けの靴を開発した1992年以降、世界中にそのブランド名をとどろかせてきました。現在Haixの靴は世界90カ国で販売されているほか、ドイツ国内の警察、軍、特殊部隊のみならず、欧州各国やアメリカ、サウジアラビアの警察や軍などに採用されています。会場に踊っていたフレーズは、「Heroes wear Haix」。今回のイベントで大々的にオープンしたコンセプトストア内にも、Haixが手がける7部門それぞれの“ヒーロー”に扮した人物写真が、名称・イメージと共にパネルレイアウトされていました。

Haixコンセプトストア内でひときわ目を引いたのは、同社が手がける7部門それぞれの“ヒーロー”に扮した人物写真パネル Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

Haixコンセプトストア内でひときわ目を引いたのは、同社が手がける7部門それぞれの“ヒーロー”に扮した人物写真パネル Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA



マインブルク周辺の地元ではHaixを知らない人はおらず、イベント会場は縁日のようで大にぎわい。もちろん、ビアガーデンも。「8000人の来場がありました」と誇らしげに語ったのは、インターナショナル・マーケティングコミュニケーションを率いるドミニク・シュライトゲンさん。「わたしたちの顧客の多くはボランティアや支援活動といったソーシャルサービスに携わる人たち。地域のイベントとしてはもちろん、そんな顧客の皆さんが家族全員で楽しめるようなイベントにしました。またドイツでは消防士の6割はボランティア。近年その人数が減っているということで、子供や若い人たちにより魅力を感じてもらえるように心がけました」

会場は地元マインブルクのブルワリー「Ziegler-Bräu」のビールを飲めるビアガーデンを中心に、縁日のようなにぎわい Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

会場は地元マインブルクのブルワリー「Ziegler-Bräu」のビールを飲めるビアガーデンを中心に、縁日のようなにぎわい Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA



会場に並んだフードトラックには来場者が集まり、地元マインブルクのブルワリー「Ziegler-Bräu」のビアステーションは昼間から忙しそう。またシュライトゲンさんが話すとおり、(息子を含め)子供たちも家族と一緒にあちこち会場内をめぐって忙しそうでした。そんな縁日のにぎわいがある一方で、肝心のコンセプトストアも大盛況。憧れの“ヒーローの靴”を手に入れ、紙袋を手に嬉しそうな来場者もたくさん見かけました。

「Heroes wear Haix」のキーフレーズが目立つ本社ビル Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

「Heroes wear Haix」のキーフレーズが目立つ本社ビル Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA





|乗って撮って消防クラシックカー


でもなぜ消防? それは、Haixのブランドスピリットが消防にあるからだそうです。CEOは元ボランティア消防士。消防士としても活動していた当時、現場で着用していたゴム長靴に同僚共々不満を覚えCEO自らが新しい靴の開発に乗り出しました。それまでハイキングシューズや一般的な安全靴のOEMで築いてきたHaixのノウハウを生かし作り出された「消防士の靴」は、瞬く間に知れ渡ることになったのです。



コンセプトストアに併設されていたHaixの歴史や技術を紹介するコーナーでは、歴代の靴として消防士の靴が展示されていました。赤い光と蒸気で演出された“炎”には、息子も興味津々。また紹介コーナーからは修理などを行なう工場を一部見学できるようになっていて、たくさんの機械やダクトが並んだ光景にも息子は釘付けになっていました。

屋外には、“消防”にちなんだ魅力がいっぱい。ブロック玩具「プレイモービル」のブースでは消防シリーズが展示されていたし、会場に設置されていたエアー遊具は消防車デザインでした。中でもハイライトは、現行およびクラシックカーとしての消防車展示(クラシックカーはCEOの個人コレクションだそうです)。小さなものから空中作業車まで実際に乗り込んで操作ができるようになっていて、子供たちだけでなく大人にも写真撮影スポットとして人気でした。

ハイライトは、会場に並んだ消防クラシックカー。実際に乗り込んで操作ができました Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

ハイライトは、会場に並んだ消防クラシックカー。実際に乗り込んで操作ができました Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA








なお、子供の緊急車両人気に一役買っているのは、消防の歌('Die Feuerwehr')でしょう。この歌は、どのお遊び教室(シュピールグルッペ)でも人気のわらべうたのひとつとしてが歌われます。この歌の中で登場する手遊び――両手をお椀を持つように前に出し、手首を左右に動かす――が子供たちも大好きで、「タテュタタ タテュタタ タテュタテュタター」と拍子を取りながら楽しく歌います。動画にもなっているのでご参照ください。

■関連リンク
'Die Feuerwehr'(わらべうた) https://youtu.be/1S3fH97muj4
Haix https://www.haix.com
Ziegler Bräu http://www.ziegler-braeu-mainburg.de

シュルテ柄沢 亜希

Aki SCHULTE-KARASAWA ● 1982年生まれ、ドイツ・ドルトムント在住。フリージャーナリスト。執筆ジャンルは自転車・アウトドアアクティビティ、スポーツ、旅、食、アート、ライフスタイルなど文化全般。幼少期の5年間をハンブルクで過ごしたことがアイデンティティのベースにある。好きなものは、ビール、チーズ、タマゴ――ワイン、日本酒、ウイスキーも大好き。ランニング、ロードバイクライドにてカロリーを相殺する日々。ブログ「ドイツのにほんじん」に日記をつけ、産経デジタル「Cyclist」、三栄書房「GO OUT」などで執筆中。

シュルテ柄沢 亜希