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ドイツワインコラム第2回「ドイツを除いては・・・」

ドイツワインコラム第2回「ドイツを除いては・・・」

「わー、このパンケーキ可愛い~」

カシャ!

「で、この前広志が結婚したんだよ」

「い、まじでぇ?お相手はどんな人?」

「えー、東大阪の子で・・・」

「あ~、刺身の船盛り来たよ。」

「でかい!」「すごいね!」

カシャ! カシャ!

「お、あれディーター・ボーレンじゃね?」

カシャ!カシャ!カシャ!

今やいたるところで見られる光景です。スマ-トフォンの普及に伴い、手軽な撮影、

撮影したもののSNS上への投稿、拡散が容易になりました。

つい10年前では考えられなかった事です。

私がワイナリーで修業を始めた15,6 年前は、デジタルではないカメラもかなりコンパクトになってはいましたが、

妙に新しい物好きだった私は当時出始めたばかりのごついデジカメを所有しており、

仕事場に持っていくには不向きだった為、その当時の写真が残念ながらあまり残っていません。

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貴重な(笑)当時の写真。

 

とにかく、私が渡独した1998年との違いは言うまでもなく、この10年でのインターネットや、コンピューター、デジタル機器の進歩は恐るべきスピードだと言えます。

ワイン業界はどうなのか?若干無理やりワインに話を持っていっている感は否めませんが、とりわけドイツワインという事になると、急速な変化、進歩という点においてはかなり類似したテーマとなります。

ざっくりと言うと、この20年でワイン業界の大きな動きは第三世界もしくは新世界ワインと呼ばれる新しいワインの中でも特に廉価で良質のワインを提供するチリや南アフリカのワインの台頭が見られました。

ただ、歴史あるヨーロッパのワイン生産国は良い意味で安定しており大きな変化はありませんでした。

 

ドイツを除いては・・・

 

ワインブームというのは様々な形である程度の周期でやってきます。ある意味ファッション業界のように流行の繰り返しがあることによって安定した業界でもあるのかもしれません。

そんな中90年代後半に起こった健康志向とあいまった、一大赤ワインブームは、それまで輸出の大半が甘口白ワインを主軸にしていたドイツワインにとって大きな変革を迫られる時でもありました。

ワイン業界全体の消費量は伸びたものの、ドイツワインにとっては大手を振って喜べる状況ではありませんでした。

ドイツワインは多くの危機、困難を乗り越えてきており、特にこの一大赤ワインブーム後の20年、ドイツワインは安定とは無縁であったように感じます。本当に多くの試行錯誤がなされてきました。

私がワイン学校にいた時もマーケティングの分野では、その当時制定された新しい格付けや規定に関して、先生達でさえも様々に意見が分かれるところでした。

ただ皆がある程度共通して感じていたのが、現状に対する危機感と国際的な市場の重要性でした。

変化、改革がなければ国際的に戦っていけないという状況の中、多くのワイナリーの世代交代が重なり、その歴史に幕を閉じるワイナリーが増える一方、手つかずとなった畑を統合し、大きくなるワイナリーも出てきました。

そうやって様々な流れがドイツワイン業界の中で起きている中、特筆されるのが優秀な若手醸造家たちの活躍です。伝統的な農法、醸造法を大事にしつつ、革新的で実験的なワイン造りをする若い醸造家が数多く出てきました。

彼らの多くは海外での経験を持つ者も多く、様々な国の醸造法、農法を取り入れ自分の哲学へ昇華し、国際的に通用するレベルの高い新しいワインがドイツ各地で生み出されるようになりました。

彼らは経営学などもしっかりと学び、造ることのみならず、新しい売り方というものにも真剣に取り組むようになりました。そういった若手たちは地域の色を強くうちだすために、複数のワイナリー同士が手を組み、一つのチームとして宣伝展開を行ったり、はたまた地域を越えて一つのブランドとして集まりその中での多様性を際立たせたりと、既成の経営方法にとらわれない、様々な展開を見せています。

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様々な演出で魅せるワイナリーも。

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これには前述のSNSやインターネットの発展も無縁ではなく、多くの醸造家が頻繁に互いの現状をSNS上でやり取りし、臨機応変な気候変化への対応、技術の相互提供などを実にお手軽におこなっています。たまにSNSなどの醸造家同士のやり取りを見ていると、わからない人には何のことかさっぱり理解できないけど、とても重要なやり取りや、技術についてのディスカッションなどを普通にやっています。

今、まさに天気がどうなってるかのやり取りができるのも、一日、下手すると数時間の判断が大きく影響することもあるワイン造りでは積み重なると意外と大きな効果があると思います。

たまに、ただただ酔っぱらってお尻が出てる画像とかもありますが・・・

 

私は、ドイツワインの輸入販売をしていますが、基本的にはワイン学校で一緒だった同級生など若手の醸造家の新しいワインを中心に取り扱っています。

そのほとんどが日本ではまだ名も知られていないワイナリーです、今彼らが海外の市場に打って出るには良いチャンスですが、なにかしらのつながりなどがないとまだ名の売れていない小さなワイナリーは難しいと思います。もちろん私の取り扱っているワインでなくても良いのですが、こちらを読まれてご興味を持たれた方は是非色々なドイツワインを試してみてください。本当にその多様性とレベルの高さに驚かれると思います。根強く持たれているドイツワイン=甘口という概念が1999年人類滅亡説並みに過去のものであると理解していただけると思います。

ただ、ここで誤解していただきたくないのは、甘口ワインのレベルが下がったというわけではないという事です。未だ素晴らしい伝統的な甘口ワインも多く存在します。

あれ?おかしいぞ、このコラムは自分のワインを売る為の振りに使ってるんじゃないか?合わせて高級羽毛布団を買わされるんじゃないか?と、思われた方もいらっしゃると思いますが、決してそういうことはございませんのでご安心ください。

ドイツワインコラム第3回 「泡(ゼクト)」     ♢    ドイツワインコラム第1回 「ドイツのワインって?」→

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著者プロフィール
高瀬亮

双子座 AB型
1998`-2014`在独

ローテンブルグ、ハイデルベルグ、リューデスハイム、マインツに居住。
ドイツにてワイン醸造の国家資格取得。4つのワイン産地5つのワイナリーで修業。
現在神戸にてドイツワイン輸入販売を営みドイツワイン専門ショップであるディ・エアーデのウェブサイトにて販売を行う。
随時神戸北野のサロン及び出張でのワイン会を行い、ドイツワインを紹介している。
www.dieerde.net

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