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日本とは違いがいっぱいのスキーリゾート ヘルメットの着用率は?

ドイツ人にも人気のスキーリゾート、オーストリアの渓谷「シュトゥバイタール」へ行ってきました Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

日本とは違いがいっぱいのスキーリゾート ヘルメットの着用率は?

連載「アクティブ ドイツ!」<6>

インスブルックの南に位置するオーストリアの渓谷「シュトゥバイタール(Stubaital)」。ミュンヘンからクルマで2時間とあって、ドイツ人にも人気の旅行先です。シュトゥバイタールにある人口4,000人の村、フルプメス(Fulpmes)へ4泊5日のスキーバケーションへ出かけてきました。泊まる場所からスキー場の様子まで、日本とは異なる(あるいは異なるであろう)スキーリゾート事情をまとめました。(2017年1月23日)

キーワードは、次の6つ+番外編。


  • 1) ホリデーフラット
  • 2) レンタルはセルフチェックイン
  • 3) ヘルメット
  • 4) BGM
  • 5) あったかシートのリフト
  • 6) 長めのコース
  • 【番外編】 スキー場にぴったりの自動販売機



|1) ホリデーフラット

ホリデーフラット、ドイツ語で「フェーリエンヴォーヌンク(Ferienwohnung)」とは、長期の休暇で借りる宿泊施設のこと。シュトゥバイタールでもフェーリエンヴォーヌンク文化が盛んで、Airbnbなど宿泊検索サイトに掲載されない宿泊施設も、地域で運営するウェブサイトにて検索することができました。

フェーリエンヴォーヌンクの目の前に広がった絶景。左下はフルプメスの街並み Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

フェーリエンヴォーヌンクの目の前に広がった絶景。左下はフルプメスの街並み Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA



わたしたちは、フェーリエンヴォーヌンクに一般的なキッチン付きのフラットを借りることができました。拠点としたフルプメスは、シュトゥバイタールの中でも小さすぎず中の上サイズの村。ニーズを満たす小・中規模スーパーマーケットが2つあり、自炊の買出しも問題なし。料理が好きなわたしたちは、夕食と昼食を各1度だけ外食しただけで、ブランチやディナーづくりをビールやワインを飲み飲み楽しみましたよ。

なんといってもフルプメスは、スキー場「シュリック2000(Schlick 2000)」のお膝元。宿からクルマで5分とかからずスキー場へアクセスできるのが魅力です。また、標高3,333mの山がそびえるオーストリア最大の氷河上スキー場「シュトゥバイアー・グレッチャー(Stubaier Gletscher)」へも、クルマで30分ほどでアクセスできます。

主にシュリック2000での滑走を選んだわたしたちは、遅めの朝食(ブランチ)を摂ってからゆっくりスキー場へ。休憩なしで16:00の終了までみっちり堪能し、“帰宅”してアットホームなディナーを楽しむという毎日でした。村とシュリック2000の間を10分間隔程度で無料バスが運行していて、ゴンドラターミナルとそれより少し下に位置する駐車場との行き来にも便利に乗車しました。

ある日のブランチ。地元のヴルストをカットして卵と混ぜたら、ボリューム満点のスクランブルエッグのできあがり Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

ある日のブランチ。地元のヴルストをカットして卵と混ぜたら、ボリューム満点のスクランブルエッグのできあがり Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA





|2) レンタルはセルフチェックイン

最近のレンタルって、みんなこんなに効率化されているんでしょうか? 少なくともわたしは、今回初めてセルフチェックインシステムを知りました。

店頭に設置されてたパソコン上のシステム2台には、ドイツ語を含めて19言語を選択することができ、クリックすると必要項目登録の画面へと進みます。名前や連絡先はもちろん、身長や足のサイズなどレンタル時に不可欠な項目に記入していくと、最後にその内容がプリントされたレシートのような紙がぺろっと出てきました。スタッフには、出てきた紙を渡せばいいだけ。これってかなり効率的じゃないでしょうか?

スキーのレンタルをする際のセルフチェックインシステム。19言語対応 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

スキーのレンタルをする際のセルフチェックインシステム。19言語対応 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA



システムには残念ながら日本語はありませんでしたが、英語がわかればドイツ語がわからなくても大丈夫。各国からのゲストが戸惑うことなく必要事項に回答できることは、スタッフの負担軽減につながります。また、スタッフが毎度同じ問いをしなければならない問題も片付き、字が汚くて読めないなんてこともなくなるはず。ユーザー情報の収集にも便利であれば、複数台の設置で混雑緩和にも役立ちますね。

ちなみに効率化したからといってコミュニケーションがないわけではありません。登録してプリントした情報をもとに手際よく該当するサイズのスキーやブーツをピックアップし、シューズ計測器を用いるなど最終的なフィッティングや調整はしっかりと対応していました。

レンタルしていたスキーを返却する際は、バーコードでピピッと読取り Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

レンタルしていたスキーを返却する際は、バーコードでピピッと読取り Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA



|3) ヘルメット

ヘルメットの着用は、欧州のスキー場で必須ではありませんが“強く推奨”されているといいます。深刻な事故も多くあり、自発的にヘルメットをかぶる意識が高まっているとのことでした。実際ゲレンデを見渡してみて、子どもから大人まで、スキーヤーやスノーボーダー共に当たり前のようにヘルメットをかぶっていました。わたしの印象では、97%はヘルメット着用といったかんじ。



もちろんわたしもヘルメット着用。防寒にも効果的…と言いたいところですが、あいにくわたしは自転車向けと兼用のラインナップを使っているので、ベンチレーション性能がとても優れています。(寒いけど)蒸れなくていいですよ(笑)

なお今回わたしは、中級コースを滑走中に相手の不注意で衝突され転倒。あたまを軽く打ちましたが、痛みも雪に突っ込んだ寒さもまったく感じることはありませんでした。何があるかわからない状況で、かぶって損なしに違いありません。

|4) BGM

日本のスキー場に慣れ親しんだ人が欧州のゲレンデに繰り出すと、さっそく違和感を覚えるかもしれません。BGMがないからです。

晴れた日のスキー場。BGMもなく穏やかな気候と壮大な自然を満喫できた Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

晴れた日のスキー場。BGMもなく穏やかな気候と壮大な自然を満喫できた Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA



わたしはこの静けさが、とても好きです。スキーのみならず、アウトドアアクティビティの魅力のひとつは、自然の中に身を置きその美しさや過酷さ、幸せを五感で堪能できること。その醍醐味を妨げられるばかりか、好きな音楽以外を強制的に聞かせられ続けるとなると、不快ですらあります。本筋からは離れますが、このBGMあるいは過剰なアナウンスはわたしにとって大のストレス。東京に住んでいた時は、東京の良さと引き換えに耐えるべきものと諦めていました。日本のスキー場においても然り。今回改めて、雑音のない本来のスキーを楽しめた気がします。

|5) あったかシートとリフト

可動式カバーの付いた6人乗りリフトに座った時のこと。「あれ? このシートあったかい?」――最初は、おしりが冷えすぎていて、自分の体温よりもシートの温度が高かったための気のせいかと思いました。それくらい、ふんわりと温かい程度。隣りにいた夫に聞いてみると、「うん、あったかいね。高い利用費払っているんだから良い設備であるべきだよ」と身も蓋もない反応でした。

ヒーティングシステムを採用したリフトと同型の6人乗りリフト ©Doppelmayr

ヒーティングシステムを採用したリフトと同型の6人乗りリフト ©Doppelmayr



本当のところはどうだったのか調べてみると、どうやら本物。わたしが体験したヒーティングシステムは、オーストリアの企業「ドッペルマイヤー(Doppelmayr Seilbahnen)」が2004年に世界で初めて製品化した技術でした。いまですら驚いている人間(わたし)がいるくらいなので、当時はさぞや革新的だったことでしょう。リフトがステーションへ戻ってきた際に、ワイヤーをはさむグリップ部の集電装置を通じてシート下が16〜21秒間温められ、ぽかぽか状態で乗客を迎えるという仕組み。ドッペルマイヤーの公式動画に、仕組みがわかりやすく説明されていました。

ああ、なんて幸せなリフト。とはいえこのヒーティングシステムが採用されたリフトに乗ると、下ってくるコースは中級コースのみ(初級コースは積雪・整備不足でオープンしていなかったため)。脚にくるので終盤にはきつかったのですが、ついついおしりを温めるためにリフトに乗りたくなったのでした。

|6) 長めのコース

ぽかぽかしたリフトでは、シュリック2000の最高地点2,240mまで上ることができます。そこから中級・初級をミックスしつつコースをたどってふもとのゴンドラステーションまで下りてくると、総距離7.8km。スムーズに下りてきて、わたしは20分以上かかりました。物足りない感じはなく疲労困憊でもない、ちょうどいい距離とレベルのコースは初めて。

これまでになくまとまったトレーニングを積めて、へっぴり腰だった滑りも上達しました。…となると、次回のスキーが待ち遠しい! 機会があればドイツのスキー場もレポートしますね。

総距離7.8kmのコースが備わる「シュリック2000」のステーション(左上)と、そのふもとに広がる駐車場。ステーションと駐車場は無料バスで行き来できる Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

総距離7.8kmのコースが備わる「シュリック2000」のステーション(左上)と、そのふもとに広がる駐車場。ステーションと駐車場は無料バスで行き来できる Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA




【番外編】 スキー場にぴったりの自動販売機:

日本で変わった自動販売機といえば、都内の駅ホームに設置されている文庫本自販機や駅周辺で見かけるバナナ(ナマモノ)自販機というところでしょうか。フルプメスで出逢ったのは、“肉屋の自販機 スキーリゾート仕様”! 販売されているどれもが興味深かったのですが、一番すごい並びだったのは、右からチロルの山チーズ→地元のベーコン→地元のサラミ→コカ・コーラ→レッドブル→牛乳。24時間営業のコンビニがないからこその、ニーズに合わせたセレクションかもしれませんね。

シュルテ柄沢 亜希

Aki SCHULTE-KARASAWA ● 1982年生まれ、ドイツ・ドルトムント在住。フリージャーナリスト。執筆ジャンルは自転車・アウトドアアクティビティ、スポーツ、旅、食、アート、ライフスタイルなど文化全般。幼少期の5年間をハンブルクで過ごしたことがアイデンティティのベースにある。好きなものは、ビール、チーズ、タマゴ――ワイン、日本酒、ウイスキーも大好き。ランニング、ロードバイクライドにてカロリーを相殺する日々。ブログ「ドイツのにほんじん」に日記をつけ、産経デジタル「Cyclist」、三栄書房「GO OUT」などで執筆中。

シュルテ柄沢 亜希