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“新車”はリース 息子1歳半、ドイツで子乗せ電動アシスト自転車はじめました

息子1歳半、ドイツ・ドルトムントで子乗せ電動アシスト自転車はじめました Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

“新車”はリース 息子1歳半、ドイツで子乗せ電動アシスト自転車はじめました

連載「ハローBaby ~子育てABC」<15>

つい先日、電動アシスト自転車を手に入れました。日頃ロードバイクやクロスバイクといったスポーツタイプの自転車に親しんでいたため、3台目(しかも電動)の必要性はさほど感じていなかったにもかかわらず。話が持ち上がったきっかけは、夫が会社から持ち帰った「JobRad」というパンフレット――自転車のリースの案内でした。

|社用車扱いの自転車リース会社「JobRad」


「JobRad」のパンフレット(写真右)が持ち込まれてからは、話はトントン拍子 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

「JobRad」のパンフレット(写真右)が持ち込まれてからは、話はトントン拍子 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA



リースでのクルマの社用車(私的利用可を含む)が一般的なドイツにあって、自転車はクルマ同様に「社用車特権」の税優遇対象(2012年以降)。そこでグンと数を増やしたのが、自転車のリースをあっせんする会社です。中でもJobRadは、現在ドイツ国内で1万5000社を顧客に抱える大手。顧客には、「ボッシュ」や「ドイツ鉄道(DB)」などの大企業が名を連ねています。

初めは「えー電動アシスト自転車なんていらないよ」とあしらっていたわたしも、パンフレットと共に話が持ち込まれてからは膨らむ想像。1台ある家族のクルマは平日夫が通勤に使い、わたしが息子と共に行動するのはベビーカー(徒歩)、スポーツバギー(ラン)、そしてバスのダブル利用あるいは単体利用が基本――それが電動アシスト自転車に代わるかもしれないのです。自分で歩き回るようになった息子の成長を見ても、でかけた先で到着後にベビーカーがなくても済むことが増えてきたきょうこの頃。考えれば考えるほどに、いまここで電動アシスト自転車を手に入れることが理にかなっているように思えてきました。


JobRadはまた、社用車としての自転車リースが雇い主にとっては社員の健康増進(福利厚生)、地球にとっては環境に優しい移動手段、従業員によってはより手頃な新車入手方法、地域の自転車屋にとっては増益ーーと、一石何鳥にもなると謳っています。試しに行きつけの地元自転車屋に聞いてみると、「JobRad? 扱ってるよ」。さらにめぼしい自転車のブランドを尋ねてみると、「うん、そのブランド扱ってるよ」。あらまぁ、それでは地元企業に貢献しなければ!

税制におけるタイミングとしても好機で、2019年頭から2021年末まで私的利用における課税対象が購入価格の全額から半額に。何がどう数字に働いてくるのか、まともに計算すると15項目も関わってきてクラクラするので解説は省略するとして、JobRadの専用フォームで試算してみると4099ユーロ(約50万5400円)の自転車が36カ月間月々77ユーロ(約9500円)と出ました。この77ユーロは毎月給料から引かれるしくみで、36カ月のリース期間後は自転車を個人で所有するか否か会社と相談となります。

勧められたのならば、断る理由がどこにあるでしょう…? 決まってからは、話はトントン。オーダーから1週間も待たずに新車に乗り始めることができました。JobRadをとおしての新車オーダーは、次のようなスムーズな流れでした。

オーダーから納車まで、JobRadをつうじてスムーズな流れ。写真は受取ナンバーと個人IDの確認画面 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

オーダーから納車まで、JobRadをつうじてスムーズな流れ。写真は受取ナンバーと個人IDの確認画面 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA



希望の自転車とキッズシート(備品)を選び、自転車屋へ連絡→ 【自転車屋がオファーを発行→ (夫の)会社が許可→ 自転車屋がオーダー→ 到着・セットアップ完了の連絡】→ JobRadのウェブサイトで表示された受取ナンバーと個人IDを確認し自転車屋にて引渡し→ 会社からJobRad経由で自転車屋に支払いが行なわれる。

※【】内はJobRadのウェブサイト上でのやりとり。

|“日本式”の子乗せ小径電動アシスト車は注目の的


実際に子乗せ電動アシスト自転車に乗り始めると、あってしかるべき乗り物だったということがよくわかりました。購入後20日間の全走行距離は72km。毎日乗っていない割にはまずまずの距離です。買物、通院など息子と共に行動する際はもちろん便利ですし、友人や息子の友だちと会うチャンスや場所のバラエティーが広がりました。

電動機能の操作ディスプレイ。走行距離や速度、現在選択中のモードでの残り走行可能距離を表示できる Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

電動機能の操作ディスプレイ。走行距離や速度、現在選択中のモードでの残り走行可能距離を表示できる Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA



またわたしにとって特に課題だったのが、およそ4km離れた場所に持っているシュレーバーガルテン(Schrebergarten ※)への行き来でした。シュレーバーガルテンへは体を動かすつもりで歩きやランで出かけてもいいのですが、所要時間は片道45分。シュレーバーガルテンでの畑仕事やガーデニングが目的なのに、往復に時間かかかるためあっという間に息子の食事・睡眠時間に。作業はいつも決まってラッシュor未完でした。それが、自転車であれば片道15分。作業内容は充実し、少し気持ちにゆとりが持てるようになったのは嬉しいかぎりです。

※主に都市部に用意されている貸し農園・ガーデン。サイズは様々で、我が家は400㎡(小屋付き)の広さ。

新車には、「Tern(ターン)」の電動アシスト小径車(小さな車輪)「GSD S10」を選びました(日本未発売モデル)。わたしが目をつけていたチャイルドシートのモデルが荷台に設置可能であると公式に記載されていたのが決め手です。さらにTernは小径車および折りたたみ自転車に強いブランドで、GSD S10もサドル高の変更がワンタッチ。推奨身長は150〜195cmと幅広く、身長159cmのわたしと189cmの夫が共用で使う自転車として納得できたのも理由のひとつです。

Ternの電動アシスト小径車「GSD S10」を選びました(日本未発売モデル) Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

Ternの電動アシスト小径車「GSD S10」を選びました(日本未発売モデル) Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA





日本で普及している子乗せ電動アシスト自転車は、この小径タイプですね。小径車は子供の乗せ降ろしがラクで、万が一の転倒・転落時に子供への衝撃がより小さいのがメリット。山坂・未舗装路がない都市部にあって、子供を乗せる自転車として検討する価値があると思っています。けれど、欧州で子育て用途の自転車として一般的に普及しているのは、がっしり丈夫で大型。例えば「子乗せ 電動アシスト自転車」とウェブ検索すると出てくるのはこういった自転車ばかりで、わたしには全くピンときませんでした。

大型自転車が主流なのは利用する人たちの体格を考えれば当然なのかもしれませんが、それ以外にも理由がありそうです。なぜなら、子育て用途の自転車はサイクルトレーラー(牽引)とチャイルドシート(子乗せ)が人気を二分するからです。いや、二分と言わずサイクルトレーラーが優勢かな。息子と同じ年頃の子が集まる場面では、自転車話といえばサイクルトレーラーを買うかどうかで持ちきり。ましてや小径車にチャイルドシート設置なんて見たことも聞いたこともありません。日本の光景を見せてみたい…。

そんなわけで、我が愛車はペデレック(最大アシスト時速25kmまでの電動自転車)大国ドイツでも注目の的。乗りに出ると各方向から視線を感じます。先日は、ツーリングへ出かけようとしていたモーターバイクのおじさまからも熱い視線を送られました(笑)



|かなめはセーフティー&セキュリティー


本当はかわいらしいピンクのヘルメットがお気に入りだったようです… Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

本当はかわいらしいピンクのヘルメットがお気に入りだったようです… Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA



自転車歴は30ウン年、スポーツバイク歴は10年、おまけに自転車や自転車関連のジャーナリストをやってきたわたしですが、肝は安全。電動アシスト自転車でいくら快適・快速とはいえ、セーフティーは常に優先すべきことです。息子を乗せて初めて走った時は、子の命はわたし次第だなと強く感じ少々震えました。

納車の日、店頭でヘルメットも購入しました。息子は、かわいらしいピンクのヘルメットがお気に入りだったようですが、あいにく該当サイズなし(ホッとしてごめんなさい)。ドイツブランド「ABUS(アブス)」の最小サイズ(頭囲45〜50cm)、たくさんの怪獣がわいわいうごめくデザインをチョイスしました。そういえば、お遊び教室でたまたま隣にいた子にかぶらせてもらったおニューのヘルメットも、ABUSだったなぁ。


息子の初ヘルメットは、ドイツブランド「ABUS」 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

息子の初ヘルメットは、ドイツブランド「ABUS」 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA





ABUSは、ドイツでは言わずと知れたロック(鍵)ブランド。スーパーマーケット前の駐輪場に停められていた自転車のロックがオールABUSだったこともあります。自転車屋の店主は、「装備すべきロック価格のめやすは、自転車価格の10%。400ユーロのロックはさすがにないね」とジョークを飛ばしていましたが、ドイツの街で乗る際ブランド車、新車、電動アシスト自転車とあれば、盗難の対策に対策を重ねてもまだ足りないと思っていたほうが無難です。適当なロックならなくても同じ。盗難保険に入っていたとしても(我が愛車もリース価格に保険が当然含まれています)、自転車に見合ったロックでなければ何か起こった時に相談しても取り合ってもらえないそうです。

慎重に、かつ自転車屋もイチ押しもあって選んだのは、ABUSのプレート連結モデルです。同社の“防御指数”最高15のうち、10。ドイツ製。重量1.4kgながらも、折りたたんだ状態で自転車のフレームにセットできるため持ち運びの心配はいりません。駐輪時は、路面に固定されたものに留める“地球ロック”が要。自転車屋の店主には、「標識などのポールが安全とは思わないほうがいいよ。大人の男性が2人もいれば、ポールの上に自転車を持ち上げてロックごと抜き取っていっちゃうんだから」と教えられ(脅され)ました。車体重量27kgの自転車をですか…ひえ〜。



■関連リンク
JobRad https://www.jobrad.org
Tern Bicycles https://www.ternbicycles.jp
ABUS http://www.diatechproducts.com/abus

シュルテ柄沢 亜希

Aki SCHULTE-KARASAWA ● 1982年生まれ、ドイツ・ドルトムント在住。フリージャーナリスト。執筆ジャンルは自転車・アウトドアアクティビティ、スポーツ、旅、食、アート、ライフスタイルなど文化全般。幼少期の5年間をハンブルクで過ごしたことがアイデンティティのベースにある。好きなものは、ビール、チーズ、タマゴ――ワイン、日本酒、ウイスキーも大好き。ランニング、ロードバイクライドにてカロリーを相殺する日々。ブログ「ドイツのにほんじん」に日記をつけ、産経デジタル「Cyclist」、三栄書房「GO OUT」などで執筆中。

シュルテ柄沢 亜希