ドイツ情報満載 - YOUNG GERMANY by ドイツ大使館

イラストレーターとして、ベルリンで生活するということ #1

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イラストレーターとして、ベルリンで生活するということ #1

こんにちは!ベルリンを拠点に、イラストレーターをしているKiKiです◎

Young Germanyさんでは、2017年7月から自分自身のオペア留学の経験について、2018年7月からは『もっと多くの人のオペア留学の経験をシェアしたい!』という想いから、多くの現役・元オペアさんたちに協力してもらい、インタビュー記事をお届けしてきました。ドイツ大使館のみなさんをはじめ、多くの方たちのご協力のおかげで、この制度の情報を多くの方たちに届けられたことに感謝しています。実際に『オペアとしてドイツに行くことを決めました!』というメッセージも頂くようになりました。大変なことも沢山あるかと思いますが、そのきっかけが、彼女たちの今後の人生の夢を掴むチャンスになっていくことを陰ながら応援しています◎

さて私はというと、オペアを卒業して1年と4ヶ月が経ちました。わたしのオペア留学の目的は、ドイツ語とドイツ文化を学ぶこと、そしてその後にベルリンでイラストレーターとして挑戦することでした。

卒業後またいろんな人たちに助けてもらいながら、昨年10月にはベルリンで初個展を行ったり、ベルリンで立ち上がったwebマガジンのアートワークを担当したり、とても嬉しいことに日本からもお仕事を頂けるようにもなり、『世界はこんなにも広くて、こんなにも選択肢があるんだ』って気づけるようなものを残していけたら、最高だなと思いながら日々絵と文章をかいています。

オペアを卒業して、自分の夢への道を歩んでいます。わたしのオペアの経験は古い情報になってしまっているし、それを発信し続けることに違和感を感じていました。だから、インタビュー記事の連載も、オペア留学経験者のツテが途切れたことを機に、終えることにしました。わたしがオペアをしていたときは、日本人のオペアさんなんて全然周りにいなかった!彼女たち9人に出逢えたことがとても嬉しいです。どうも、ありがとう!

オペアのお話はこれで幕を閉じますが、Young Germanyさんでの連載は、新しいお話がはじまります。『イラストレーターとして、ベルリンで生活するということ。』をテーマに、身近な立ち位置でベルリンのアートカルチャーをご紹介していけたらなと考えています。それから、オペア留学後どんな感じでイラストレーターとして生活しているのかなども、わたしは全然武勇伝のようなものはなく、素朴に、地道に生活しているのですが苦笑、そんなことも書いていけたらなと思っています。

 

前置きが長くなりましたが!第一回目は『イラストレーターとして、ベルリンで生活して気づいた10のこと』を、ベルリン生活3年間を振り返って、書いていきたいと思います!

 

 

1.アートが、ほんとうに身近。

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ぎゅうぎゅうのノアの方舟

ベルリンはアートが身近と言いますが、どのくらい身近なのか。ギャラリーやカフェや何気ないお店や、道端でも出会うことができます。イベントもしょっちゅう。日常に当たり前に寄り添っている様子が、とても嬉しいです。

個人的に好きなのは、街中で突然出会う手作り感満載のアート作品。例えば上の写真は、車になにやら可愛いぬいぐるみがぎゅうぎゅうに詰め込まれているのですが、近づいてみると、そこには『Die arche』の文字が。これ、『ノアの箱船』を表現してるんですよね。これを見つけたとき、なんだか癒されて笑ってしまいました。笑 ちなみに、この車は東ドイツ時代のものらしいです。


2. 国際色豊か!

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友達の個展のオープニングパーティーの様子

本当に世界中のいろんな国の人たちが住んでいるので、『みんなが違うことが当たり前』という空気感が、とても生活しやすいです。お互いの文化を尊重して、お話してくれる印象を持ちます。私たちが外国人をどこの国の人か見分けられないことがあるように、私もよく違うアジア人に勘違いされますが、日本人だというと、みんな『ごめんね、日本って〜…』と話を振ってくれます。多くのことが、悪気はないんだんあと最近思います。人種差別的なことは、今のところ受けたことはありません。(寿司に関して聞かれることには、ちょっと飽き飽きしていますが…)

最近面白いなって思っているのは、ベルリンに来て3年目の私のfacebookのタイムラインが異国語だらけになっていること!日本語・ドイツ語・英語・フランス語・スペイン語・アラビア語・イタリア語・チェコ語・グルジア語・ロシア語・ポルトガル語が流れてくる!日本語とドイツ語と英語以外は、よくわからないので翻訳をかけて読んでみるのがささやかなfacebookの楽しみ方になっています笑。そして国は違えど、みんな書き込んでいる話題は、家族のことだったり、恋人のことだったり、仕事のことだったり、世界共通なのだなあと眺めています。


3. 毎日どこかで、何かのアートイベントがある

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この間行ったアートブックフェアで行われていた公開シルクスクリーン

そのアートイベントをどこで知るのかというと、カフェや本屋さん、スーパー、それから道に立ってる柱にも面白そうなイベントのフライヤーがベタベタ貼ってあり、いつでも見つかります。(怪しいのもあるけれど…)街を歩くだけで、ちょっと宝探しをしている気分!それからまたまたfacebookのお話ですが、イベントページ機能で、友達が『興味ある』だったり『参加する』とボタンを押すと、自分のタイムラインに流れてくる仕組みになっていて、そこでも国際色豊かないろんなイベントに出逢うことができます。たまに、英語でもドイツ語でもないものが流れてきて『なんだこれー!』ってなったりするのも、面白いんです。それから友達から展覧会の案内が届いたり。今日の夜も、友達に誘われた展示会のディナーパーティーにお邪魔してきます。本当にたくさんありますが、だいたいわたしが行くのはイラストや本、アニメーションのイベントです。先日、アートブックフェアに行ってきたので、このことは次の記事のときにでも、ご紹介できたらなって思っています◎


4. 飽きない

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乗った電車の床に魔法陣が描いてあることが日常なくらい、飽きない!

皆さんは、飽き性ですか?わたしは結構、飽き性です。と言うより、好奇心旺盛かも。ベルリンという都市の中に、ドイツの文化ももちろんあって、少し気分転換したいなと思ったらすぐ身近に違う国の文化に出会える。母国が恋しいなあと思ったら、日本のイベントだってたくさんある。都市の開発も進んでいて、いつも何か新しいものができているかと思えば、昔からのものもきちんと大切にとっておいてある。タイムトラベルも、この街でできてしまいます。いつもイラストの資料探しに明け暮れているわたしには、ほんとうに興味深い街です。


 5, アーティストが国に守られている

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KSKから送られてくる封筒

例えば、社会保険。イラストレーターとしてフリーで仕事をすることを選ぶと自営業になるので、日本だと国民健康保険に切り替えるなど、個人での社会保険料負担額が多くなります。しかしドイツには『Künstlersozialkasse(芸術家社会保障、以下KSK)』という制度があり、一定の条件と審査をパスすると加入することができます。わたしも今年の1月から加入しているのですが、イメージとしてはKSKという会社に所属し、KSKが収入に応じて一定の額を負担してくれて、KSKを通して社会保険料を支払う感じです。これは本当に常に戦っているアーティストにとってはとても心強い味方で、社会で生きていきやすい環境です。(加入方法については公式サイト、もしくはサポートをしている人を探してお尋ねください。わたしは対応できません!)

それから最近嬉しかったことがあります。オペアをしていた頃大変お世話になったホストファミリーから、『KiKiの銀行宛の書類がうちに届くから住所変更してねー!』と連絡があり、ああそっか、すっかり忘れてた!と思って急いでオンラインで変更手続きをしようとしたときに、職業を選択する欄がありました。そこになんと、『Künstler(アーティスト)』も文字が!日本だったら、学生と、会社員と、自営業…?くらいしかなく、自営業に分類されるのかなあと思うのですが、きちんと職業としての選択肢にアーティストがありました。わたしはイラストレーターなので、アーティストなのか…?と言われると??なのですが、それでも『選択できる』という現実に、とても感動しました。

こういう背景もあり、アートが盛んで身近な国が成り立っているのだと思います。


6, アートのお仕事に対して、とても暖かくオープンマインドな印象。

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アートワークを担当していたウェブマガジンのシェアオフィス

こちらのマガジンは編集部の連絡先としてメールアドレスがきちんと記載されていることが多いです。そこにメールを送ると、数日のタイムラグがあったとしても、きちんと返信をしてくれるケースがほとんど。もし正しいお問い合わせ先がそこでなかった場合、正しいお問い合わせ先に繋いでくれたりもしますし、上司に提案する!と、連絡先を回してくれたりもします。

気になるマガジンのローンチパーティーに行き、自分はイラストレーターで、と声をかけたら、僕じゃなくて彼がつくっているんだよってきちんと繋げてくれる。嫌がらずに、和かに、フレンドリーに話を聞いてくれる。もちろんお互いのニーズが合致したとき、信頼関係ができたとき、初めてお仕事が頂けるものだと思うので、その一つ一つがすぐに仕事につながるわけではないのですが、この繰り返しがとても大切だなと今までの人生で感じています。

日本と比べ、ベルリンはイラストを使ってくれている人たちにたどり着きやすいオープンマインドな街だと思います。(日本はイラストを使ってくれる人たちの前にある壁が厚かったり、扉すら叩けないことが多かったです)ただ、辿り着いたとして、アーティストが歓迎される環境だとしても、自分がどのようなスキルを提供できるのか、うまくプレゼンしなくちゃいけないし、技術の向上も日々必要だし、星の数だけいるイラストレーターの中から自分を選んでもらう努力を続けることは、日本と変わらないなあと感じています。世界共通でみんなが抱えている課題なんだなあと、こちらで出来た友達と話していても感じます!

 

7, 他のヨーロッパの国へのアクセスがしやすい

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イタリア・ボローニャで毎年開催される世界最大の絵本見本市

ドイツから飛び出すお話になりますが…今年の2月ホストファミリーのおうちに遊びに行き、お仕事のお話をしていると、ホストパパに『KiKiはこどものために絵を描いたらいいと思うよ』とアドバイスを受け、ホストキッズたちのキラキラした笑顔を見ていたら絵本に挑戦してみたいなと思いました。そこで、さっそく世界最大の絵本見本市が毎年行われているイタリアはボローニャへ4月に飛びました!世界中の絵本を手にとって実際に観れたこと、出展している出版社の方に直接お話を聞けたこと、作品を直接見てもらえたことはとても多くの学びになりました。ベルリンに戻ってきてから、描くイラストにも大きな変化がありました。ドイツはもちろん、ヨーロッパには様々なアートイベントがあります。それに気軽にいけるということも、とても感謝している環境です。

今月はボローニャの絵本見本市で友達になったフランス人のイラストレーターの子を訪ねにベルギーはブリュッセルへ、また、他の友達が住んでいるエストニアはタリンを訪れる予定です。いつになるかはわからないけれど、私の次にオペアをしているジョージア人の女の子のファミリーのおうちに遊びに行く約束もしています。いろんな国の友達ができると、いろんな国に行ける、ありがとう!


  8, 人混みや情報に疲れたら、自然に帰れる場所がある

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テーゲル湖にある、大好きな樹齢900年の太っちょマリー!

これは人によるかもしれないのですが、わたしは人と一緒にると、その人の感情に当てられてしまったり、たくさん人がいると、いろんな感情や空気感が混ざってとても酔ってしまいます。なので定期的に1人になったり、静かになれる場所に行きたくなるのですが、ベルリンは首都で大都市でありながら、自然との距離が近いんです。緑豊かな公園が多いし、突然森みたいになる場所もあります。限界!って思ったら、すぐ自然に帰れる!笑


9, 自分のペースで生きていても、干渉されない

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いつも使っている画材たち。

よくネット上で『ドイツでは、学生になること、何かをはじめること年齢は関係ない』という話題を見かけます。その通り、学び続けることに貧欲だったり、仕事をやめて旅に出たりしている人のお話を現地でも聞きます。しかしドイツ人の集まりの話を聞いている感じだと、やはりある程度の年齢にきたら色々と考えないといけないよね、という風潮はあると感じます。それでも『個人は個人』という考えが浸透してるので、『それはその人の判断』という結論に至るのだと思います。わたしはこの、『個人は個人』という考え方がとても好きです。『社会の流れに乗りなさい!』という強制感はない代わりに、『自己責任』という文字は、はっきり見える環境です。


 10, ステレオタイプなんて、存在しない。どこの国の人だろうと、みんな同じ人間なんだなあと心で感じるようになる。

 

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街中で見つけた、可愛い落書き!

ここ最近、心から感じることナンバーワンです。その国の癖は、ちょっとあるかもしれないけれど、結局人は人でみんな違って、同じ人間という生き物なんだなあと感じます。だから、最初からその国のステレオタイプに当てはめて接している人を見ると、残念だなあと思います。

でも私たちには『言語の違い』というものがあって、どうしても初めての国の人と接する機会があるときに、本だったりインターネットだったりで、その国のことについて調べますよね。だって、仲良くなりたいから。

そこで読む情報がステレオタイプだったり、その書き手の目を通して見た世界だったりするんです。それは、嘘ではないけれど、違う側面も、いっぱい、いっぱいあります。情報を知ることも大切だけど、ただその国の言葉で『こんにちは』と『ありがとう』ぐらい言えるようして、あとは国じゃなくて人を見て、付き合っていくことが大切だなあと思います。

この発見から願うことは、わたしがご紹介する情報をそのまま受け取らず、どうか自分自身の目線を含めた感情で読んで欲しいなということです。これも同じく、わたしが見た世界の断片を切り取った破片でしか、ありません。

読んでくださった方の興味が刺激されて、ドイツやベルリンや、海外に目を向ける一つのきっかけになったらとても嬉しいし、自分の目で確かめてやる!くらいになったら、最高だなと思いながら書いていこうと考えています。誰かの、何かのきっかけになりますように^^

・・・

さて今回は、これでおしまいです。最後まで読んでくださって、ありがとうございました!

次回も読んでいただけたら嬉しいです◎

KiKi

西伊豆の小さな限界集落出身。交通機関もない、1番近いお店まで車で1時間。とにかく大自然しかない小さな集落で、紙とペンと空想で無限大に遊べることが、この上ない娯楽で贅沢でした。

2012年京都造形芸術大学キャラクターデザイン学科卒業。その後、同大学マンガ学科副手を3年間務めながらイラストレーターとしての仕事を少しずつ増やしていき、2015年からフリーランスに。居場所を探して旅するように生きていたらベルリンに辿り着き、2016年の夏からオペア留学を利用して移住。2018年にアーティストvisaに切り替えました。

例えば、私のように小さい集落で暮らしている子が、そこから旅立つ時期を迎えたときに、『世界はこんなにも広くて、こんなにも選択肢があるんだ』って気づけるようなものを残していけたら、最高だなと思いながら絵と文章をかいています。

Portfolio site : http://kiyonosaito.com/
instagram : https://www.instagram.com/kikiiiiiiy/

KiKi