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「同棲」について~日本とドイツの感覚の違い~

「同棲」について~日本とドイツの感覚の違い~

はい、またまた恋愛ネタです。

 

今回は「同棲」についてです。

 

最初から結論を言ってしまうと、ドイツの場合、カップルが付き合って自然な流れで一緒に住むことが多いです。

 

ドイツでは一昔前こそ、結婚していない男女が一緒に住むこと、つまりいわゆる「同棲」が“in wilder Ehe leben“(和訳「野合の夫婦になる」)と揶揄されたりしましたが、今や恋愛の延長線上には自然な流れで「同棲」がある感じです。

 

現に私のドイツ人の女友達も、学生時代または社会人になってから、彼氏と同棲をしていた人が多かったです。ドイツでの同棲は親も公認だったりして「ごくフツー」のことなのでした。私自身は同棲をしたことはないものの、ドイツに住んでいた頃、十代の時などは「私もオトナになったら、恋人と一緒に住むのかしら」なんて漠然とですが想像したりしたものです。

 

私の女友達のKさん(ドイツ人で30代。お母さんが日本人のいわゆる「ハーフ」)も長年、恋人のMさん(ドイツ人)と付き合っており、ドイツで同棲をしていました。ある時、二人は日本に遊びに来ることになり、その際、Kさんは埼玉のおばあちゃんの家に泊まることになりました。Kさんが、おばあちゃん&お母さん(共に日本人)に「彼も一緒に、おばあちゃんの家に、泊まってもいい?」と聞いたところ、おばあちゃんとお母さんの返事はノー。おばあちゃんには「結婚しているとか、婚約しているならいいのだけれど、そうでない場合、男性を家に泊めるのはダメ」と言われたそうです。

 

ドイツ育ちのKさんは「私はドイツで彼と同棲してるんだけど、日本の感覚だとやっぱり未婚のまま、おばあちゃんの家とかにお泊りするのはダメなのね~」と笑いながら話していたものです。

 

こういう話になると、ドイツ人同士だと、どうしても“Japan ist schon etwas konservativ.“(「日本ってやっぱり、ちょっと保守的だよね」)という結論になりがちなのですが、やっぱり結婚前のお泊り、とくに同棲については、ドイツと日本ではだいぶ感覚が違うみたいなのですね。(その後、例のKさんと彼氏さんMさんは、おばあちゃんの家の近くのホテルに、泊まりました。)

 

さて、同棲について、ドイツ的な感覚 VS 日本的な感覚をザッと書くと・・・

 

★「同棲」~ドイツ的な感覚~

 

・「カップルなら一緒に住むのは当たり前だよね」という感覚が親の世代にも広く浸透している。

 

・「一緒に住むことで家賃が折半できていいじゃない?」という現実的かつ実用的な考え方も強い。

 

・「結婚制度」を「保守的なもの」と見なす風潮も強い。(だから結婚せず長く同棲するカップルも多い。)

 

★「同棲」~日本的な感覚~

 

・日本的な感覚だと(もちろん、人にもよりますが…)入籍をせず同棲するのは「だらしない」というイメージがある。特に女性側は「いったい、親御さんはどういう教育をされてきたのかしら?」と、一部保守的な人達に言われかねない。

 

・同棲後に結婚に至らずカップルが別れ、同棲を解消した場合、「女性の経歴に傷がつく」という考え方がある。

 

・「長く同棲していると結婚が遠のく」つまりは日本で言う「長過ぎる春」を懸念する声がある。

 

全体の傾向として、日本の場合、同棲は(特に女性側の)親の教育がキチンとしていない、女性の経歴に傷がつく、結婚が遠のく、という考え方があるようです。婚約をしている場合は別として、同棲はあまりよろしくないことと見なされているフシがあるのですね。

 

考えてみると、たしかに私の日本人の女友達に同棲している人はあまりいないのでした。「発言小町」を見てみても、「同棲を提案したら別れを切り出されました」という男性からの相談トピックがありますが、それに対する皆さんの反応を見ていると、レスの多くに「結婚でなく同棲を提案する事自体が女性に対して失礼」という意見が多数ありました。ドイツの感覚だと、「恋愛⇒同棲」はよくあるパターンなのですが、日本の感覚だと「恋愛⇒結婚」が「スジを通す」ということなのですね。

 

日本の場合、「恋愛⇒同棲」となるのはワケあり、つまりは不誠実ととらえられることも少なくないようです。大学生、または例えばバツイチ同士の40代や50代の同棲ならまだしも、妙齢の20代女性に同棲を提案するのはかなりアウトのようです@日本。

 

いわれてみれば言い方一つにもそれが現れている気がします。ドイツでいう恋人や、同棲をしている恋人は、Partner/Partnerin またはLebensgefährte/Lebensgefährtinといいますが、この両方の言葉には真面目な響きがあります。Partner/Partnerinは文字通り「パートナー」ですし、Lebensgefährte/Lebensgefährtinに関しては、人生を共にする人という意味合いも含まれています。

 

fresh cherryその点、日本では結婚をしている場合は「主人です」「妻です」と紹介できますが、結婚をしていない例えば「同棲中の恋人」の場合、堅い場であればあるほど、紹介の仕方が難しいのですね。「内縁の妻」という言い方がありますが、私のサスペンスドラマの見過ぎかもしれませんが、その手のドラマで「内縁の妻」は常にかわいそうな登場の仕方をしていたと記憶しております。もしかしたら「パートナー」という言い方をしても良いのかもしれませんが、やはり横文字なのが気になりますし、では「恋人です」はどうかというと、やはり堅い場で目上の人に「コイビトです」と紹介するのも日本の感覚だと「なにか違う」のですね。かといって「彼女です」「彼氏です」という言い方は、更に軽い感じですし。

 

たかが「呼び方」かもしれませんが、そこから色々見えてくるものもあるので、面白いですよね。

 

また近いうちに、日本とドイツの恋愛について、続きを書きますね。

サンドラ・ヘフェリン

ドイツ・ミュンヘン出身。日本歴19年、著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ) 、「ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ』(原作: サンドラ・ヘフェリン、漫画: ヒラマツオ/KADOKAWA)、「『小顔』ってニホンではホメ言葉なんだ!?~ドイツ人が驚く日本の「日常」~」(原作: サンドラ・ヘフェリン、漫画: 流水りんこ/KKベストセラーズ)」など計11冊。自身が日独ハーフであることから、≪ハーフはナニジン?≫、≪ハーフとバイリンガル教育≫、≪ハーフと日本のいじめ問題≫など「多文化共生」をテーマに執筆活動をしている。ホームページ 「ハーフを考えよう!」 を運営。趣味は時事トピックについてディベートすること、カラオケ、散歩。

サンドラ・ヘフェリン