「間」を好む日本人、「間」を埋めたがるドイツ人
日本人とドイツ人の両方と長くかかわっていて感じるのは、会話の際の「間」をドイツ人は嫌う人が多いということ!
二人または三人で会話をしている時、沈黙が一瞬でも生まれてしまうとそれをpeinlich(気まずい)と感じるドイツ人が多いようです。そのせいか、沈黙が絶対に起きないよう、みんなしゃべるしゃべるしゃべる(笑)日本の感覚で言うと、まさに「しゃべり倒す」感じですね。観察していると、ドイツ人の二人組がいると、二人とも同時にしゃべっていたりします(笑)
ドイツの場合、「相手に敵意を持っていない」ということを表明する手段がイコール「話すこと」だったりしますから納得です。
日本人同士の場合、人と会っている際に何度か沈黙があったとしても、たいしてお互いに気にしていない人が多いように感じます。現に日本人が「あの人、無口だよね」と言う場合、それが必ずしも悪い意味ではなかったりします。ニッポンの職場などではむしろ「無口」とされている人のほうが真面目に仕事に取り組んでいる(「黙々と仕事をしている」)人として評価されていたりもします。
そんなふうに日本とドイツでは「沈黙」に関する感覚がだいぶ違うのですね。
余談ですが、「ドイツ人男性と日本人女性のカップル」のありがちなケンカに、比較的口数が少ない日本人妻に対して、ドイツ人男性が“Hast Du was? Was hast Du denn? Bist Du sauer?“(和訳:「どうしたの、どうしたの?怒ってる?」)と繰り返し確認をし、女性側が「別に怒ってないんだけど。なんで怒ってると思うのかしら?」と不思議に思う、ということがよくあるようです。ドイツ人の場合、人にもよりますが相手の「沈黙」を「怒り」ととらえる人がいるのですね。ドイツ人に限らず、ドイツ語圏全体が基本「しゃべること」で良い人間関係を保とうとする傾向があるように感じます。
さて、私が「ドイツ人はよくしゃべる。(日本人と比べて)あまり無口な人はいない。」と言うと、驚く日本人がいます。それもそのはず、“Reden ist Silber, Schweigen ist Gold“(「言わぬは言うに優る」)という諺がドイツにもあるからです。ただ、実際のところ、昔の話はわかりませんが、現在のドイツでは「言わぬは言うに優る」を実践している人は少ないというのが私の印象です。どちらかというと無口な人や沈黙が多い人というのは評価されにくいですね。たとえば口数が少ない人がいると、日本だと「あの人、静かだよね」「あの人、無口だよね」で終わることが多いですが、これがドイツの場合だと「あの人、私のこと、嫌い?」と疑問を持たれたり、「あの人って、やる気がない感じだよね(“Er/Sie wirkt so desinteressiert.”)」なんて思われたり言われたりしてしまいます。ヘタすると「話す内容がないから話さない人」と、つまりは頭の中が空っぽな人、という烙印を押されかねません。
そんなこんなでこのあたりの感覚は、ドイツと日本ではだいぶちがうのですね。もちろん最終的には、どこの国にもおしゃべりな人と無口な人はいるので、個人差もありますが、私が今回書いたのはあくまでも全体の傾向です。
私自身もドイツに住んでいた頃のほうが今よりよくしゃべる人でした(笑)日本に来てほぼ20年ですが、最近はしゃべるよりも書くことのほうが多いですね。コラムもそうですし、連絡作業も電話よりもメールが多いですし。
あ、そうそう、日本人(とくに女子)の一部には、会って「お話し」しているとわりと無難な内容を話すのに、メールで「書いている」時こちらがビックリするぐらい大胆になったりする人がいます。おもしろいですよ。ドイツ人はその点、会話でハッキリ言う傾向にあるのでメールで自分の意外な一面を暴露したり意思表示をしたりというのは比較的少ない気がします。
・・・と長くなりましたが、“Reden ist Silber, Schweigen ist Gold“(「言わぬは言うに優る」)という諺に関しては、意外と日本人のほうが実践しているな、と感じた次第です。
今日はこの辺で。
今後ともどうぞよろしくお願い致します。