ディーター・ラムスがデザインしたブラウン社のaidio310
1971年のデザインハイライト
今日は、最近私が一番欲しかった、待ち望んでいた物が届きました。ブラウン社のオーディオ装置、audio310です。ディーター・ラムスがデザインしたこの製品は、デザインの古典ともいうべきもので、彼のデザインの中で最も優れていると、私は思います。
ディーター・ラムスは、20世紀で最も影響力のあった、ドイツのプロダクトデザイナーのひとりとされています。彼は1960年代から80年代初頭にかけて、フランクフルト・アム・マインで、家電品や電子機器のメーカー、ブラウン社のプロダクトデザインを手がけ、世界的に有名になりました。電気シェ-バーから、コーヒーメーカー、ラジオ、レコードプレーヤー、ライターに至るまで、彼はあらゆる日用品をデザインしました。またラムスは、家具デザインでも受賞し、家具デザイナーとしても有名です。
彼は自分のデザイン哲学を、「良いデザインのための十か条」としてまとめていますが、これは、現在でも十分に通用するものです。
ここ数年、彼のデザインを再発見する動きがひろがっていますが、これはアップル社製品の人気の高まりと関係があります。アップルのチーフデザイナーであるジョナサン・アイブは、自分でも認めるラムスのファンで、アップル社の製品の多くには、明らかにラムスのデザインからのインスピレーションが感じられます。一番有名なのが、iPhoneの電卓画面で、そのデザインには、80年代のブラウン社の電卓からの影響が明らかです。
audio 310は1971年に製造され、レコードプレーヤー、コントローラー、ラジオがひとつになったオーディオ装置です。技術的には、当時としては標準的な製品でした。この製品が新しい尺度を作ったのは、そのミニマリスティックなデザインでした。
製品は全体として、白、灰色、チャコールグレーでまとめられていて、スイッチボタンの緑と、FM放送ボタンの赤が、カラーアクセントになっています。これに合わせて、小さいコントロールランプには緑、FM放送の数字は赤が使われています。
操作ボタンの数が少ないのに対して、大きな表示板が目立ちます。表示板の文字は、その四角い枠の大きさに比べると小さいですが、表示板の周りのこの枠が、文字を美しく見せているのです。下の表示板の方は、上の表示板に比べると文字が多く感じられますが、バックライトのおかげで読みやすくなっています。
さらに、文字自体に関しても書く意味があるでしょう。使用されているのは小文字だけで、普通のドイツ語にあるような、大文字と小文字の区別はされていません。これが、文字に特別な効果を与えています。
また、フォントの大きさは、表記される機能の重要性に従って決められています。このため、「audio130」のフォントが一番大きく、操作ボタンに関係する表示が次の大きさ、ボタンと関連しない情報は、いちばん小さいフォントです。
ネジの配置も良いと思います。今日の製品は、ネジは見せない傾向にありますが、ラムスは優れたデザインのネジを使って、それを製品の独自なスタイルエレメントにしています。
このオーディオ装置は、もう40年前のものですが、そのデザインは時の経過に左右されず、私が持っている現代の製品と合わせても、違和感がありません。また、アルミニウムとホワイトの仕上げは、今のトレンドそのものです。私は改めて、この製品をすばらしいと感じ、デザインの魅力が変わらないことに感銘を受けていま。まさにラムスの「良いデザインの十か条」にあるように、「良いデザインは色あせない」ということですね。