【今週のドイツ語】Aus dem Stegreif
音楽、演劇、絵画…皆さんは、何かの即興パフォーマンスを見たり、自分でやったりしたことがありますか?最近では英語で即興を表すインプロヴィゼーションを略した「インプロ」という言葉も広がっているようですが、何の準備もなしにいきなり何かしなければならないことって、仕事や日常生活でもたまにありますよね。すごく焦りますが。
今日はドイツ語で、即興で何かをすることを表す慣用句をご紹介します。
Aus dem Stegreif
アウス デム シュテークライフ
Stegreifとは、乗馬するときに足を掛ける「あぶみ」を意味する古い言葉ですが、今ではこの慣用句の他には「即興~」を意味する名詞の構成要素として使われる以外、単独で使われることはまずありません。最初のausは「~から」という意味です。乗馬と即興と、どんな関係があるのでしょう。
昔、王様や領主のお触れを伝える使者は、馬に乗って町や村にやって来ました。映画やアニメでそんなシーンを見たことがあるという人もいらっしゃると思いますが、大事な知らせを伝える際には、文字通り足をあぶみに掛けたまま、つまり馬から降りもせずに急いで伝えていたようです。そこから派生して、準備したり深く考えたりせずに何かを行うことを「あぶみ(に足を入れた状態)から」というようになったのだそうです。
Er erzählt den Kindern eine Geschichte aus dem Stegreif.
彼は子どもたちに即興の物語を話して聞かせた。
また、上で触れたStegreifを使った「即興~」には、Stegreiftheaterシュテークライフテアーター「即興演劇」、Stegreifdichterシュテークライフディヒター「即興詩人」、Stegreifredeシュテークライフレーデ「即興スピーチ」などがあります。
現在ではあぶみのことをSteigbügelシュタイクビューゲルと言います。「乗る」「上がる」を表す動詞steigenシュタイゲンから来るSteigと、弧の形にまがったものを表すBügel(服を掛けるハンガーもこれです)をつなげた言葉です。古い方の言葉、StegreifのStegもsteigenに由来し、Reifは昔の言葉でロープを指していて、馬に乗るときに先を輪っかにしたロープを鞍から垂らし、そこに足を掛けて乗ったことからそう呼んでいたということです。
Text by Kumiko Katayama
【今週のドイツ語】
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