【今週のドイツ語】Eselsbrücke
夏休みが終わり、新学期が始まり、もう少ししたらもう試験、なんて人もいるのでは?
テスト前は覚えることがたくさんあって本当に大変。そんな時、皆さんはどうしてますか?
今日扱うドイツ語は、そんな時にドイツの生徒や学生たちがとてもお世話になるものを指す言葉です。
Eselsbrücke
エーゼルスブリュッケ
Eselは「ロバ」、Brückeは「橋」。何かを覚えるときに役立つ「ロバの橋」って…?
「ロバの橋」とは、何かを覚える時に助けになるような暗記術のことです。日本でも、年号を覚えるときに便利な「語呂合わせ」を使いますね。「鳴くよ(794)うぐいす平安京」とか…ああ懐かしい。ドイツにも、何かを覚えなければならない時に助けになる記憶しやすい言葉やフレーズがあるんです。例えば、戦後ドイツの首相の名前を在任順に覚えるときの「ロバの橋」はこんな感じです。
Alle ehemaligen Kanzler bringen samstags knusprige Semmeln mit.
アレ エーエマーリゲン カンツラー ブリンゲン ザムスタクス クヌスプリゲ ゼンメルン ミット(元首相たちは皆、土曜日にはバリっとしたプチパンを持って来る)
まるで何かのおまじないのようですが、このように覚えておくと、
A: Konrad Adenauer コンラート・アデナウアー(1949-63)
E: Ludwig Erhard ルートヴィヒ・エアハルト(1963-66)
K: Kurt Georg Kiesinger クルト・ゲオルグ・キージンガー(1966-69)
B: Willy Brandt ヴィリー・ブラント(1969-74)
S: Helmut Schmidt ヘルムート・シュミット(1974-82)
K: Helmut Kohl ヘルムート・コール(1982-98)
S: Gerhard Schröder ゲアハルト・シュレーダー(1998-2005)
M: Angela Merkel アンゲラ・メルケル(2005-21)
の順にすらすらと(?)言えるという具合です。
ドイツの現首相はOlaf Scholzオラフ・ショルツですが、就任後、この暗記用の文にショルツのSをどうやって入れるか、SNSでちょっと話題になったことがったことがありました。結論はまだ出ていないようですが。
ところで、何でこういうものを「ロバの橋」と言うのでしょうか。ロバは昔、荷物を運んだりするのに大切な家畜でしたが、頑固で用心深く、浅い川でも怖がって水に入らないので渡すのが大変だったそうです。そんなロバを無理やり水に入れて歩かせるよりも、そこに橋を作った方が、余計な労力のようで実は早いのと同じように、わざわざ暗記のために新しい文を作るのも手間のようで実は効率が良いということで「ロバの橋」と言うようになったそうです。
歴史の中で覚えるべきことは年々増えていくので、これからも新しい「ロバの橋」がどんどん誕生することでしょうね。まだショルツ首相のSが気になっているのですが、どなたか面白いアイディアありませんか?
Text by Kumiko Katayama
今週のドイツ語
これまでに紹介した今週のドイツ語が本になりました。
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