【今週のドイツ語】Eiertanz
ああー、またやってしまった。
買って来た卵をお気に入りのエコバッグから取り出したら、1パックの半分も割れてしまって、新しいバッグもぐしゃぐしゃ。悔しいけど、本当に卵は慎重に扱わないとだめですね。
とても身近なので、いろいろな慣用句に使われる卵ですが、今日ご紹介するのはちょっと変わった使い方です。
Eiertanz
アイァータンツ
EierはEi(アイ、「卵」)の複数形。Tanzは「踊り」。卵の踊りって、なんだかかわいい響きですね。でも、この言葉が表しているのは、卵がころころとかわいいダンスを披露する様子ではなく、もっとシビアな状況なんです。この言い回しが生まれるもととなったのは、たくさんの卵を床の上に並べ、その間を目隠しをして卵を割らないように踊りながら通り抜けるという芸なのだそうです。えっ、卵ダンスってそっち?と思ってしまいますが、文豪ゲーテの小説の中にもそんなシーンが登場するんですよ。
たくさんの卵の間を目隠しして踊るなんて、想像しただけで、もう卵がぐしゃっと割れる音が聞こえてきそう…でも、それを割らずにやってのけるということから「とても慎重に対処する」、うまく回避するという意味で「上手に立ち回る」、あるいは問題から目を背けたり、本題に触れないために「回りくどい言い方をする」、わざわざそんな卵の間を通り抜けるということで「ものごとをややこしく考える」など、とにかく卵を踏んづけないための(?)いろいろな意味が派生しているようです。
Er ist immer sehr vorsichtig und führt einen Eiertanz auf.
「彼っていつも慎重で、回りくどい言い方をするよね」
それにしても、目隠しをして卵の間を踊って見せるなんて、ものすごい練習が必要だったのではないかしら。それとも、ぐしゃぐしゃは承知の余興だったのかな?
後片付けが大変なので、実験してみるのはやめておいた方がよさそうです。
Text by Kumiko Katayama
今週のドイツ語
これまでに紹介した今週のドイツ語が本になりました。
「見るだけで楽しく学べる「暮らし」と「文化」 ドイツのことば図鑑」 というタイトルで、これまで3年以上に渡ってこのサイトで連載をしてきたものを、大幅に加筆修正し、さらに詳しくわかりやすく、そして面白く、例文や関連用語なども載せて紹介しています。
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