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なぜドイツでは北にだけソフトクリーム屋さんが多いのか?

なぜドイツでは北にだけソフトクリーム屋さんが多いのか?

この夏、北ドイツの海沿いの村でソフトクリーム屋さんのお手伝いを体験。当地のソフトアイス事情を調査しながらあれこれ考えてみました。長年の謎がとけたような、さらに深まったような……。バルト海沿岸で驚いたアイス事情をお伝えします。

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突然ですがみなさん、ソフトクリームは好きですか?
私は昔から大好きで、時々無性に食べたくなります。

日本でソフトクリームというと、観光スポットやパーキングエリアにある「○○牧場のソフト」みたいなちょっとスペシャルな感じのソフトもありますが、コンビニやフードコートなどでも食べられる身近なスイーツ。食べたいと思った時に、わりと苦労せずにみつけられますよね。
だけどドイツではなかなかお目にかかることができません。普通のアイス屋さんやアイスカフェはイタリアに匹敵するほどたくさんあるのに。加えて、数年前からフローズンヨーグルトのお店も増えているのに、ソフトクリームは見かけないんです。

*ドイツのアイス事情については以前書いたこちらの記事をどうぞ~~

>>>「アイス天国」ドイツのアイス事情とは?【伝統編】

>>>「アイス天国」ドイツのアイス事情とは?【流行編】

アイス好きなお国柄なのに、なぜドイツにはソフトクリームがないのか?長年の謎でした。

理由として思いつくのが、ソフトクリームは基本バニラのみで、バリエーションはあってもチョコ味くらい。普通のアイスのように種類がたくさんないから流行らないのではないか、というもの。
だけど同じく味が1種類のフローズンヨーグルトは、相変わらず流行っているという不思議。フローズンヨーグルトの方は、トッピングのバリエーションが多く写真映えするのも人気の理由かもしれません。

そんなわけで、私にとってソフトクリームとは、ドイツでは食べることができない夢のスイーツだったのですが、この夏、思う存分食べられるチャンスがめぐってきました!なんとソフトクリームを売る側になったんです。

場所はドイツ北部、バルト海沿岸のダース半島。海沿いののどかな村、プレローにあるソフトクリーム屋さん兼青空カフェ的なお店で、数週間お手伝いをさせていただくことになったのでした。

 

プレローのビーチ。かご型万能チェア「シュトラントコルプ」が並ぶ北ドイツらしい風景



この辺りは日本ではあまり知られていませんが、ドイツ人には人気のリゾート地。夏の間のウアラウプ(休暇、バカンス)で長期滞在する人々のための貸別荘がたくさんあります。お店にやってくるお客様もUrlauber(ウアラウプ中の人々)― つまり急ぐ必要がなく余裕がある(ようにみえる)人々―が多く、穏やかで平和な雰囲気が終始流れていました。

ラズベリーとチョコレートソースの組み合せがお気に入り



さてソフトクリーム(ドイツでは「ソフトアイス」と呼ばれます)ですが、ミルキーでとおーーーーってもおいしかったです!フルーツやキャラメルなど手作りのソースがこれまたおいしくて、毎日あれこれ組み合わせて堪能させていただきました。

ラクリッツソースも人気。グミでおなじみの日本人が苦手な味ラクリッツですが、これは意外にも黒蜜みがありおいしい



驚いたことに、村にはソフトクリーム屋さんが何軒もありました。この村だけでなく、休日に訪れた近隣の村や町、有名な保養地リューゲン島にも。どうやらバルト海沿岸では、ソフトクリームが市民権を得ているようなのです。こんなにソフトクリーム屋密度が高い地域がドイツにあったとは!

世界遺産の町シュトラールズントにて。ラクリッツ味のトッピングも意外にいける!



 

ここでまた新たな疑問が。なぜバルト海沿岸だけでソフトクリームが人気なのでしょう?
同じ北ドイツでも、例えばハンブルクは大都市なのにソフトクリームは見かけたことがありません(もしかしたらどこかにあるのかもしれませんが)。リゾート地ではないからでしょうか?
ドイツの人々にとって、ソフトクリームとは「海辺のウアラウプで食べる特別なアイス」という位置付けなのか……?

噂の高級リゾート、リューゲン島にて。この後カモメにとられて涙(カモメってアイスも食べるのね!?)



 

私なりにバルト海沿岸で調査を重ねた結果、この「ドイツのソフトクリーム人気は海辺のリゾート限定説」が今のところ濃厚です。

そして新たに、北海(ノルトゼー)の方はどうなのだろう?という疑問が湧いてきました。かの有名な高級保養地ズュルト島や世界遺産ワッデン海など、北海のリゾートにもバルト海同様ソフトクリーム屋さんが多いのか……とても気になるので、機会があれば調査に出かけたいと思っています。

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(おまけのあとがき)

海辺の村に滞在しながらソフトクリームを売り、毎日思う存分食べることができた夢のような日々。

別世界にのようにのどかな村の穏やかな店で、なんだか自分が『かもめ食堂』のもたいまさこさんにでもなったような気分で、日々やってくる名もなき出演者たちに色んなドラマを見せていただきました。

わいわい楽しそうなファミリー、自転車旅行中に休憩する人、一人で静かにコーヒーを飲んでいくおばあさん……みんなそれぞれ色んなものを背負っているのだろうけれど、お店にいる間は本当に幸せそうで、その光景を見ると心が温まりました。とりわけ印象深かったのが、休暇で滞在中に毎日通ってくれたかわいい老夫婦。最後の日もいつものようにいらっしゃり、「これが最後のアイス」とニコニコとめしあがって、手をつないで帰られました。お二人をみているとなぜだかいつも涙が出そうになるので気をつけていました。今、思い出しても泣けてきます。

私はふだん一人で仕事をすることが多いせいもあるかもしれませんが、一日に何百回も「ありがとう」を直接交わしあうことの喜びがとてつもなく大きかったです。どんなお店もそうですが、働く人、訪れる人、みんなにとってお店の与える影響って計り知れず、時に人生を左右することもあるのですよね。親類縁者に飲食関係が多く、その大変さを知ってはいても、やはり「店」っていいもんだな、面白いなとあらためて思いました。

ソフトクリームにかこつけて、ちょっと語りすぎてしまいました。

最後になりますが、お店のオーナーをはじめ、(届かないかもしれないけれど)ご縁のあった方々に心より感謝申し上げます。
ここで経験したことを、どういった形でかわかりませんが、残していけたらいいなという気持ちでいます。

坪井由美子

日本では「食」に関する仕事に従事。商品開発やリサーチ、テレビ・ラジオへの情報提供及び出演、執筆などに携わる。テレビ東京『テレビチャンピオン・甘味王選手権』で3度優勝するなど食いしん坊ぶりを発揮。2003年よりドイツを拠点にフリーライターとして活動。共同通信、朝日新聞デジタル、NHK他で旅や食文化、最新トレンドなどについて執筆。近年は世界各地でプチ移住&プチ留学を体験しながら発信中。 総合情報サイト「オールアバウト」ドイツガイド担当 /ドイツ・ニュースダイジェスト」レシピ連載中 / 2020年秋『在欧手抜き料理帖』(まほろば社)出版

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坪井由美子