【今週のドイツ語】Mein Name ist Hase
新年度が始まって1カ月半。学校でも職場でも、新しい環境に少し慣れてきたころでしょうか。
新しい環境に入ってまずやることといえば自己紹介。ドイツ語の自己紹介にはいろいろありますが、最も基本的なのは
Mein Name ist… 「私の名前は…」
という言い方でしょう。
でも、今日取り上げるドイツ語表現は、自己紹介の方法ではありません。
Mein Name ist Hase
マイン ナーメ イスト ハーゼ
Haseは「うさぎ」。ということは「私の名前はうさぎです」⁇ いいえ、ここでHaseは「ハーゼ」さんという苗字です。では「私の名前はハーゼです」?でも、そんなことを言いたいんじゃないんです。ハーゼさんでなくてもこの表現は使えます。
この慣用句は、実際にはもう少し長く
Mein Name ist Hase の後に
ich weiß von nichts. イッヒ ヴァイス フォン ニヒツ
と続きます。
「私の名前はハーゼです。私は何も知りません」というのがその直訳ですが、実はこの後半部分がキモでして…。
背景には歴史上の出来事があるそうです。19世紀半ば、ハイデルベルク大学にViktor von Haseヴィクトール・フォン・ハーゼという法学部の学生がいました。ある時、ハーゼの友人が、決闘で相手を死なせてしまったのですが、ハーゼはその友人をかばって自分の学生証を貸し、おかげで友人はフランスへ逃げることができました。ところがその後、学生証が国境付近で発見されたため、ハーゼは事情を聴取されることになり、その時彼が言った言葉が
Mein Name ist Hase, ich weiß von nichts.「私の名前はハーゼです。私は何も知りません」だったそうです。これが当時話題になり、そのうちに「それについては何も知らない」「全く見当が付かない」という意味の慣用句として定着したというお話です。
話は変わりますが、1970年代に、ドイツのChris Robertsクリス・ロベルツという歌手のMein Name ist Hase という歌謡曲がありました。恋人たちが花咲く木の下に寝転んでいると、うさぎが出てきて“Mein Name ist Hase, ich weiß von nichts!“「おっとごめん、何も見てないよ~」と言ったという歌詞ですが…
#どうでもいいドイツ でした。
Text by Kumiko Katayama
今週のドイツ語
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