ドイツ情報満載 - YOUNG GERMANY by ドイツ大使館

天然ボケがウケる国(日本) VS 天然ボケが通用しない国(ドイツ)

天然ボケがウケる国(日本) VS 天然ボケが通用しない国(ドイツ)

だいぶ前からですが、日本では「天然ボケ」が流行っていますね。



テレビをつければ、「何にも、わかりませーん」のオーラを出している人がトンチンカンな受け答えをしては笑いをとっています。



まあテレビのそれは、タレントさんなので、作られた部分もあるのかと想像しますが…。



でもテレビの中だけではなく、リアルな世界においても日本では「天然ボケ」が重宝されている気がします。



学校で、「天然ボケ」で「いじられキャラ」の人が周囲にかわいがられていたり、飲み会でも「天然」の女子が人気だったり、あと所謂「ママ友」の間でも「天然ママ」が人気なんだそうです(笑)



「天然ボケ」は日本では重宝されているというか、市民権を得ているのですね。「何も分からないおバカなキャラ」はむしろその場の空気が和むということで大人気だったりします。



以前、飲み会で「ドイツってブラジルの隣?」と質問していた女性がいましたが、皆さん大ウケでした。当然、彼女がその晩のアイドルでした(笑)



ではドイツの場合はどうなのでしょう?



結果から言うと・・・ドイツは「バカ」に厳しい国です。



誤解を受けそうな発言ですので、説明させて下さい。



これは、「ドイツには頭の悪い人がいない」、「いや、ドイツにも頭の悪い人はいる」といった話ではなく、「ドイツ人の傾向として、誰もが自分を『インテリ』に見せたがる傾向がある」ということなのです。したがって、自分がたとえ無知であっても、その無知ぶりを素直にさらけ出すようなことはしませんし、ましてやインテリの人が「天然ボケ」の「フリ」をするなんてこともドイツではまず無いわけです。



私はよく日本人と「ドイツ」や「ドイツ人」についてお話をします。その中で、ドイツに滞在経験のある日本人が「ドイツ人に関する感想」を話して下さることも多いです。よく「ドイツの方って本当にしっかりしてるんですね」とか「ドイツの方って、頭いい人ばかりですよね」などと (社交辞令も入っているとは思いますが) 言われるのですが、、、いえいえ違います! ドイツでは、「とりあえずインテリっぽい話し方をしている人」が多いだけです(笑)



本当にインテリな人も、実際にはインテリではない人も、両者とも、ドイツでは、「とりあえずインテリな振る舞い」をすることが多いのですね。つまりは「全部わかってますよ」「なんでも把握してますよ、ワタシ」的なオーラを出すことがドイツでは大事なのですね。そのためドイツには当然ながら「天然ボケ」というものが入り込む余地はありません(笑)



ドイツの日常生活で使う「言い回し」が、それをよくあらわしていると思います。



“Die kann nicht bis “3” zählen.” (訳:「彼女は『3』まで数える事が出来ない。」)はい、これはつまり「彼女は頭が悪いので、数字の 3まで数える事さえ出来ないんだよ」と、まあ、いかにその女性が「バカ」なのか、いかにその女性の「頭が悪いのか」を、見下した感じでバカにする言い回しなのですね。



あとは、”Die ist nicht gerade die Leuchte.”(訳: 「彼女は明らかに無影灯ではないね。」) はい、これもつまりは「彼女は頭が悪いね」と言いたいわけです。



あとは、”Die Dummen haben immer Glück!”(訳:「バカはいつもラッキー」)なんていうのもあります。完全に人をバカにしていますね(苦笑)私が子供のころ通っていたミュンヘンの公文の教室で、生意気なことに、ドイツ人の小学生の生徒が、日本人の先生に向かって、いつもこれを言っていました。先生が何か「なくしもの」をして、色々と探し回った後、その先生が「あー!!見つかったー!よかったー!!」と言うと、すかさず隣のドイツ人の小学生の男の子が”Tja…,die Dummen haben immer Glück.”(「ほーら、それ見ろ。やっぱりバカはラッキーだ。」)と言うわけです。



ね? 感じ悪いでしょ?



これらの言いまわしを見てもわかるように、ドイツはどうやら頭が悪い人に大変厳しい社会のようです。「天然」が入る余地、ナシでございます。



しかし「ドイツはそのような厳しい社会だから、みんな知識を身につけたりインテリになる努力をしているのか?」と聞かれると、微妙なところです。もちろん、知識を身につける努力をしている人もいるかとは思いますが、どちらかというと、「とっても薄っぺらい内容の話がインテリ風に聞こえる」ように、「内容」というより「見せ方」において「努力」をしている人が多い印象を受けます。



その点、日本は言い回しひとつをとっても、基本、「天然ボケ」や「よくわかっていない人」に対して優しい社会だと言えます。



たとえば、日本には「バカとハサミは使いよう」という言い回しがあります。これって、つまりは「バカを上手に使えない人にこそ問題がある」というふうに私には聞こえるのですが、いかがでしょうか。私なりの解釈で恐縮ですが、この言い回し、あまり「バカ」本人を責めているわけではないように感じます。



「天然ボケ」という言葉も考えてみたら、なんだかかわいらしいですよね。そしてそして「不思議ちゃん」なんて言葉もありますが、こちらもちょっとニュアンスは違いますが、そんなに悪意のある言葉ではないように感じます。「天然ボケ」同様、「不思議ちゃん」もどこかかわいらしい印象を受けますね。



しかし、しつこいようですが、ドイツに関しましては「バカなフリをする」とか「実は知っているのに、知らないフリをする」人は男性女性を問わずあまりいません。



ちなみに、亡きジャクリーン・ケネデイ女氏は、ジョン・F・ケネディと出会う前はジャーナリストだったそうで、大変知的な女性だったのですが、ジョン・F・ケネディとのデート中には「わからな~い!」を連発し、見事ジョン・F・ケネディのハートをがっちりつかんだそうです。



・・・話がそれてしまいました。まとめると、日本は「天然ボケ」に優しい国、ドイツは「天然ボケ」を許さない国、といったところでしょうか。



ちなみに、このコラムのタイトルを当初は「ドイツの『バカ』、日本の『バカ』」にしようと思っていたのですが、あまりにも強烈で誤解を招きそうなタイトルなので、冒頭のようなやわらかいタイトルになりました(笑)



みなさん私の比較文化的な雑談にお付き合い下さり、どうもありがとうございます。これからもどうぞよろしくお願いいたします。




YG_JA_3163[1]サンドラ・ヘフェリン



ドイツ・ミュンヘン出身。日本歴16年、著書にベストセラーとなった「浪費が止まるドイツ節約生活の楽しみ」(光文社)のほか、「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ)、「ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ」(共著/メディアファクトリー) など計7冊。自らの日独ハーフとしての経験も含め「ハーフ」や国際交流について執筆している。趣味は時事トピックについてディベートすること、カラオケ、執筆、散歩。目黒川沿いや碑文谷をよく散歩している。



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サンドラ・ヘフェリン

ドイツ・ミュンヘン出身。日本歴19年、著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ) 、「ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ』(原作: サンドラ・ヘフェリン、漫画: ヒラマツオ/KADOKAWA)、「『小顔』ってニホンではホメ言葉なんだ!?~ドイツ人が驚く日本の「日常」~」(原作: サンドラ・ヘフェリン、漫画: 流水りんこ/KKベストセラーズ)」など計11冊。自身が日独ハーフであることから、≪ハーフはナニジン?≫、≪ハーフとバイリンガル教育≫、≪ハーフと日本のいじめ問題≫など「多文化共生」をテーマに執筆活動をしている。ホームページ 「ハーフを考えよう!」 を運営。趣味は時事トピックについてディベートすること、カラオケ、散歩。

サンドラ・ヘフェリン