謙虚で優しい人は「研修生」?!
立場上(はい、筆者は日本とドイツの「ハーフ」であり、両方の国で生活をした経験があります)日本とドイツの違いについて考える事が多いのだけれど、最近もまた「違い」を発見!
そう、それは、ミュンヘン都内でバイエルンの民族衣装を買った時のことでした。バイエルンの民族衣装とはDirndlのことなんですが、これを着る時には、Dirndl専用のブラジャーを着用しないとDirndlが綺麗に着られないのですね。そして、そのDirndl専用ブラジャーとは、ズバリ、物凄い胸を寄せて上に上げて谷間を作るブラジャーなのです(笑)基本、バイエルンの大手のデパートの下着売り場では必ずこのDirndl専用ブラジャーが置かれています。
日本の着物の場合も、着物専用の下着がありますが、これはバイエルンの「寄せて上げる」ブラジャーとは真逆をいくものなのですよね。つまり「抑えてペシャンコにし、胸なんか無いように見せる」のが、着物なんですよね。
民族衣装にまつわる「胸」の話(ドイツでは「胸を強調」、着物では「胸を目立たなくする」)ところにも、そんな「違い」があったのですね。
「違い」といえば、先日お友達と興味深い会話をしました。
その友達は大手企業で出世をしている女性(部下もいる)なのだけれど、企業内でドイツに転勤した途端に、現地でよく “Bist Du eine Praktikantin?“(「研修生の人?」)と聞かれたと言います。
そして話をしていく中で、どうやら「物腰」が原因らしい事が分かったのでした。
どういう事かというと・・・日本の「普通」の立ち振る舞いはドイツ人から見ると、「物凄く謙虚」にうつります。そして冒頭の彼女も、日本と同様にドイツでも普通に謙虚にしていたら、ドイツ人に即Praktikantin(研修生)だと間違われた、というわけです。
考えてみると、確かに彼女のポジションの人は、ドイツではもっと偉そうにしている人が多いのですねえ。たとえば10メートル離れた所からその人を見ても、立ち方ひとつ見ても、全体的な雰囲気が「偉そう」というか「私はデキるんですよ!」という雰囲気を発しているものです。ですから、当然話し方や、立ち振る舞いが全体的にボッシーだったりするのですね、ドイツの「ボス」というのは。もちろんそうでないドイツ人もいるにはいるのですが、「会社で上りつめたのに、謙虚なオーラを発しているドイツ人」が「限りなく少ない」のは断言できます(笑)
よって、上記に書いた彼女の例からもわかるように、ドイツではヘタに謙虚で優しいオーラを発していると、そういうオーラをドイツの会社で発しているのはPraktikantin(研修生)ぐらいですから、即、研修生だと間違えられてしまう、というハプニングが起こるわけであります。
露骨ですが、ドイツの場合、謙虚イコール「下っ端」と見られてしまうのですねえ。
ですので、「謙虚さ」に関する感覚も、ドイツと日本では「真逆」だと言えるでしょう。
日本では、謙虚さは立派な事だと考えられている面もあり私もそれに賛成なのだけれど、もしもドイツで生活する場合は、謙虚な態度でいると(日本と違い)即、周囲にナメられる状況に陥ったりするので難しいところです。ですので、ドイツで長く生活し、そこそこ成功するには「偉そうな態度」を身につける事がまず必要なのですね(笑)
もしかしたら海外帰り(ドイツ帰りも含む欧米帰り)の日本人が、日本に帰国した途端、周囲から「あの人は欧米かぶれで偉そう」と言われてしまう背景には、そんなことも関係していると思わざるを得ません。つまりドイツと同じ態度を日本でもとっていたら、即「偉そうな人」と周りに思われてしまうのですね。
そう考えると、二つの国をまたいで仕事をする人間には、「謙虚さ」VS「偉そうな態度」の上手い切り替えが必須なのかもしれません(苦笑)これもかなり器用さが求められる気がしますが、パッパッと切り替えのできる人間って、果たしているんでしょうか。興味のあるところでございます。
サンドラ・ヘフェリン
ドイツ・ミュンヘン出身。日本歴16年、著書にベストセラーとなった「浪費が止まるドイツ節約生活の楽しみ」(光文社)のほか、「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ)、「ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ」(共著/メディアファクトリー) など計7冊。自らの日独ハーフとしての経験も含め「ハーフ」や国際交流について執筆している。趣味は時事トピックについてディベートすること、カラオケ、執筆、散歩。目黒川沿いや碑文谷をよく散歩している。
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