広い世界に出て、新しい価値観に触れてほしい
「ドイツで羽ばたく日本人」で伝えたかったこと
こんにちは。ベルリン在住ライターの久保田由希です。
2015年にこの「ドイツで羽ばたく日本人」のコーナーを始めて、もう5年近くになります。ドイツでがんばっている若い日本の人たちに、これまでたくさんお話をうかがってきました。大学で勉強中、アーティストとして活動、現地で就職など滞在の理由はさまざまで、ひと口に「ドイツに滞在する」と言っても多様な可能性があると感じていただけたのではないでしょうか。
取材のほとんどは、私が住んでいるベルリンで行いました。2015年に始めた当初に取材をした方々はアーティストやフリーランサーが多かったのですが、ここ数年は現地企業に就職した人も増えました。それは、ベルリンで就職できるチャンスが増えたということだと思います。約5年の間にも町の変化を感じました。
この企画を考えたのは、ベルリンに住みはじめた若い人が増えたと感じていたことと、そういう人を応援したい、そして日本にドイツのリアルな一面を伝えたいと思ったからです。どのくらいの人が記事を読んでくださったかはわかりませんが、そうした私の思いが少しでも届いていたことを願っています。
ドイツで活動している人はまだまだ大勢いらっしゃいますが、このあたりで区切りをつけてもいいのではと思い、今回でこのコーナーを終えることにしました。
最終回として私自身のことを書こうと思います。若者ではありませんが、最後のご挨拶ということで。
日本での仕事がベルリン滞在につながった
私がベルリンにやって来たのは、ただ単に住んでみたかったからです。誰か知り合いがいたわけでも、どこかの団体に呼ばれたわけでもありません。何回か旅行をしていたときになんとなくベルリンの雰囲気が気に入って、1年ぐらい語学学校に通いながら現地の生活を体験したいという気楽な考えでした。
1年が過ぎる頃、まだまだベルリンにいたいと願っていた私に、知人からライターの仕事の依頼が来ました。私が日本の出版社で編集の仕事をしていたときの知人です。
仕事の内容は、日本の雑誌にベルリンのお店紹介記事を書くこと。ドイツ語はまだまだでしたが、そんなことは言っていられません。必死で仕事をしていると、ほかの雑誌にも書けることになりました。
カフェにインテリア、パン・お菓子、ビール……ベルリンの人やお店を次々に取材して紹介しているうちに、今度は本を書くことになりました。こちらもインテリア、カフェ、雑貨と旅のエッセイ、ライフスタイルなどベルリン・ドイツの暮らしにかかわることを書き続け、今では15冊の本が出ています。
日本でやってきた仕事が期せずしてこの地でつながって、書くという形でベルリンに関われたのです。フラッとベルリンにやって来たことを考えると、信じられない展開でした。周りの人に助けられながら、ひたすら走ってきた日々でした。
自分の無計画ぶりを振り返ると、このコーナーに登場してくださった方々はきちんと将来を考えていて本当にすごいと思います。
どんどん外に出てほしい
そんなわけで、私はいつもドイツやベルリンのライフスタイルを中心に書いているのですが、それはドイツと日本を比較して優劣をつけたいからではありません。そうではなく、現地の情報を伝えることで、考えの幅が広がったらいいと願って書いています。
たとえば、日本にいて何かに悩んでいたとします。でもそれは、一歩外に出たら何でもなかったりするものです。新しい考え方や価値観を知ることで、心がラクになったり、希望が見えてくるものです。
このコーナーで特に若い人たちにインタビューをしたのは、このブログの名がYoung Germanyだからということもありますが、特に若い人にどんどん外に出てほしいという思いもありました。
広い世界で知識と経験を得ることは、自分のなかで選択肢が増えるということ。それは自由になることにつながります。そういう若い人が増えてほしい。きっと、ドイツと日本の将来にいい結果をもたらすと思っています。別にドイツに永住しなくても、短期滞在や旅行でもいい。こういう記事を読んでくださるだけでもいいです。
私もこれからもたくさんのことを知って、経験して、よく生きていきたいです。
最後に、これまで取材に応じてくださったみなさん、本当にありがとうございました。
読んでくださったみなさん、ありがとうございました。