再統一記念日によせて‐「東ベルリンの熊、デザイン」
10月3日は、ドイツ再統一記念日です。
ベルリンが再び1つの町となり、「東ドイツの首都」から「ドイツの首都」に返り咲いた日でもあります。
実は、わたしは、ベルリンに来るまでドイツにも歴史にも全く興味がありませんでした。
正直なところ「ベルリンの壁崩壊」や「東西分断」という出来事は、社会科の授業で聞いたかもというくらいで、具体的なイメージはありませんでした。だから2000年にベルリンに来た当初は「東と西が統一されてから、もう10年も経ってるんでしょ?もう違わないでしょ?」と思っていたのです。
それが、来てびっくり。
まずは、建物の色や雰囲気が全然違う。歩いている人の顔もなんとなく違うみたい。
そして東側の方が街灯が少ないので、夜の暗さの質が全然違う。
そして冬になると、まだ石炭暖房が多い東ベルリン側を歩けば焦げ臭いような香りが漂い、「あ、ここ東側だ」と分かるほど。
中央駅もまだ完成してなくて、路面電車も壁沿いには通ってなくて。
五感をもって、「東」と「西」の違いを実感したのでした。
当時はまださびれた雰囲気だった、パンコウにほど近いアパートの隣人は東ドイツ出身の人ばかり。最初の語学学校の先生も東ベルリン出身の人だったこともあって、そこで壁崩壊や歴史に関する生の言葉を聞く機会に触れ、俄然東ドイツに興味が湧いてきたのでした。
特に気になったのが、東ドイツのデザイン。蚤の市で目にとまるモノが、東ドイツのものが多かったこともあって家具に始まり、自転車、雑誌、切手や食器などはちょくちょく買うように。ベルリンをモチーフにしたものやテレビ塔モノは、いまでも蚤の市で見かけると素通りできず、目が合うとつい……。
というわけで、今回は、ベルリン市の紋章ともなっている「ベルリン・ベアー」東ドイツ版を少しご紹介させて頂こうと思います。
東ドイツでは「プラステ」と呼ばれるプラスチック、ビニール素材なのですが、手触りや表面加工がちょっと独特。デザインは、「素朴」と表現してしまうことが多いのですが、それだけとも言いがたい不思議なセンス、色や素材使い。西ベルリンの熊とは、顔立ちや体のバランスも全く違うのが興味深いところ。
なんでこんなにぶつぶつしてるの!?頭が大きすぎない?
なんでチェーンでベルリン市の紋章を体に巻いてるの?ボンテージ?
……とツッコミどころ満載ですが、じっと見つめているとじわじわと可愛くなってくるのは、私だけでしょうか?
いまは残念ながら、ベルリンの蚤の市では「掘り出し物」はほとんど見つからなくなってしまいましたが、ドレスデンをはじめ、旧東ドイツの中都市~小都市にも蚤の市はざくざく!たいていは日曜日、そしてベルリンを始め10月3日の統一記念日にも各地で大きな蚤の市が開催されます。
日曜日は少し早く目を覚まして、蚤の市へ。
お気に入りの、東ドイツデザイン、に巡り会えるかもしれません。
© Hideko Kawachi
著者プロフィール
河内秀子(かわちひでこ)
東京都出身。2000年からベルリン在住。
ベルリン美術大学在学中からライターとして活動。雑誌『Pen』や『giorni』などでもベルリンやドイツの情報を発信しています。ガイドブック『ことりっぷフランクフルト・ベルリン』編など。
趣味は漫画とカフェ巡り、食べ歩き。蚤の市やオーガニックコスメも大好物。
Twitterで『一日一独』ドイツの風景を1日1枚、アップしています。