ハーフと就職活動
このあいだ「ハーフは逆境に強い」と書かせていただきましたが、ピンチに強くないと、そして逆境に強くないとハーフはやってられません(笑)たとえばハーフが就職活動をするとき。本当の意味で(ハーフ側の)根気が試されます。・・・というわけで今回のテーマは「ハーフと就職活動」です。
就職活動というものは、ハーフに限らず誰でも大変ですが、たとえばハーフの大学生が就職活動をする際に、ハーフ特有の壁にぶち当たるのもまた事実です。
ハーフ特有の壁とはつまり企業側が「ハーフ」に対してする質問の数々です。
はい、もちろん「普通の純ジャパ」であれば、されない質問ですね。
たとえば「ウチは日曜日も出てもらうことあるんですが、日曜日、教会に行ったりしますか?」という質問。(⇒白人系はイコールカトリック教徒であり日曜日は教会に行くと思われている?!笑。にしても、日曜日に出勤の可能性とはブラック企業のニオイがプンプンします。)
あとは、「よくあちらにはお帰りになるんですか。」または「国にはよく帰られたりするんですか。」という質問。(⇒あちら、とはアメリカやドイツだったりしますが、日本企業としては有休を長く取って休まれるのを警戒しているのでこのような質問で探りを入れているわけです。)
もっと厄介なのは、「ご両親は日本にお住まいですか。それとも外国にお住まいですか。」(⇒これは、両親は日本に住んでいる、と答えたほうが「入社後、両親に会いに頻繁に海外に行かなさそう」と思われる面もありますが、逆に言うと、両親が日本に住んでいると言ってしまうと、ラッキーが重なり入社できた場合、「両親に会いに海外へ」という常套手段が使えなくなることを同時に意味してます、笑。)
「納豆は食べられますか。」(⇒面接で納豆の事を聞かれるなんてビックリですよね、笑。ちなみにこの質問に対する模範回答は「もちろんです~。私、こんな顔ですが、納豆は大好物で毎朝食べてます~。」しかし調子にのって、くれぐれも私のようにトーストに納豆をのっけて食べている話などはしないように。変な人と思われるだけです。)
ちなみに面接の際に一番大変なのはやはり「顔は外国人風だけど、日本語のみを話し、英語や外国語ができない日本育ちのハーフ」であります。
なぜなら、履歴書に「日本の幼稚園卒、日本の小学校卒、日本の中学校卒、日本の高校卒、日本の大学卒」と書いてあっても(つまり海外の学校を出た形跡ナシ、留学の形跡ナシ)、面接当日、面接官はガイジン顔の学生さんについ「もちろん英語はできるんですよね?」と確認してくるからです。
いや、確認事項が「英語」の場合はまだいいんです。「英語ができるかどうか」は今時は純ジャパの大学生も確認されますから。
でも父親がフランス人であるばかりに、履歴書に「日本の幼稚園卒、日本の小学校卒、日本の中学校卒、日本の高校卒、日本の大学卒(情報工学部)」(←「フランス語学科」ではないところに注目!)と書いているのに、「フランス語はできるんですよね?(ペラペラなんですよね・・・?)」と当たり前のように聞かれてしまうのは、ちょっと面接官が現実離れしているといわざるを得ません。
そこでハーフ学生が誠実に「いいえ、日本育ちで日本で教育を受けてきたのでフランス語は挨拶程度しかできません。」、またはその「前向きバージョン」である「フランス語はただいま勉強中です。」と答えると、面接官に、「あっそ」とか「ふ~ん・・・」(不満気)とか「くすっ^^(できないの~?フランス人のクセにフランス語ができないだとかフランス語を勉強中だとかウケるんだけど^^)」というリアクションをされる事があります。
ハーフとしては非常に自尊心が傷つきます。
そして更に更に、しつこいようですが、冒頭のように「日本の幼稚園卒、日本の小学校卒、日本の中学校卒、日本の高校卒、日本の大学卒」と履歴書に書いているのに、面接で「漢字は読めますか。」なんて確認された日には死にたくなります。
漢字が読めず、どうやって日本の大学を出るというのでしょうか・・・?誠に疑問でございます。
ご覧いただいたように、ハーフにとっての就職活動は、一般の「純ジャパ学生」以上に、自分の根気との戦いだったりします。
そして「世間」はやはり人を容姿(外国人風の顔)で判断をするのだな、と再確認させられる場でもあります。人々が一度かかった呪文(あの人は外国風の顔だから外国人のはずだ、英語ができるはずだ、外国語ができるはずだ、教会に行くはずだ、などなど)は、そう簡単に解けるものではないようです。なので、就職活動はいわば修行のような場であるわけです。
余談ですが、私は企業側がハーフに対して面接の際に、「納豆は食べられますか?」と聞くのは、学生さんが企業に対して「御社のトイレは和式ですか。それとも洋式ですか。」と聞くのと同じ次元だと思っております。つまり的外れだということですね。
皆さんはどう思われますでしょうか。
サンドラ・ヘフェリン
ドイツ・ミュンヘン出身。日本歴15年、著書に「浪費が止まるドイツ節約生活の楽しみ」(光文社)、近著「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ) など6冊。自らの日独ハーフとしての経験も含め「ハーフ」について執筆している。趣味は時事トピックについてディベートすること、カラオケ、執筆、散歩。目黒川沿いや碑文谷をよく散歩している。
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