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「アイス天国」 ドイツのアイス事情とは? 【伝統編】

「アイス天国」 ドイツのアイス事情とは? 【伝統編】

こんにちは。食いしん坊ライターの坪井です。みなさんいかがお過ごしでしょうか。ドイツは5月後半から猛暑ともいえる暑さが続き、私は早くも夏バテ気味です……

こんな時に欲する物といえばアイス!最近はほぼ日でアイスを食べております。ずばり、ドイツのアイスはとっても美味しいのです!

 

気温の高い日はアイス屋さんに長蛇の列ができます。

気温の高い日はアイス屋さんに長蛇の列ができます。



ドイツ人はアイスが大好き。

夏になって気温が上がるとアイス屋さんの前には長蛇の列ができ、アイス片手に嬉しそうに街を歩く人たちがあちこちで見られます。日本だとアイスを食べながら歩いている人って、子どもはまだしも大人はあまり見かけませんよね。だけどドイツでは、子どもだけでなく両親はもちろん、お年寄りもカップルも、休憩中のサラリーマンや制服を着た警察官まで(!)老若男女がアイスを楽しんでいるので心置きなく食べ歩きを楽しむことができます。

アイスといえばイタリア、というイメージを持っている人が多いと思いますが、ドイツにはアイス屋さんがたくさんあり、その数たるやイタリア以上では?と思うほど。その多くは「アイスカフェ(Eiscafe)」と呼ばれるアイスクリーム専門店とカフェが一緒になったスタイルで、経営者はやはりというか、ほとんどがイタリア人です。

 

伝統的なアイスカフェ。テラス席で太陽をあびながらリゾート気分。

伝統的なアイスカフェ。テラス席で太陽をあびながらリゾート気分。



ドイツには古くからイタリアの移民が多く、19世紀末頃にはすでにイタリア人によってアイスが作られていたといいます。戦後1960年代に入って市民の暮らしにゆとりがでてくると、テラス席を設けたイタリア風アイスカフェが大流行。当時の人々にとってアイスカフェは、ドイツにいながらにしてバカンス気分を味わえる、ちょっと特別な場所だったようです。

山盛りのパフェを楽しむご婦人たち。ヴェルニゲローデの魔女祭りにて。

山盛りのパフェを楽しむご婦人たち。ヴェルニゲローデの魔女祭りにて。



そんな歴史的背景もあってか、アイスカフェの客層をみると、昔から通っていると思われる人々が多く年齢層はかなり高め。おじいちゃんやおばあちゃんたちが山盛りのパフェを食べている姿は、夏のドイツの風物詩ともいえる光景です。

かつてのアイスカフェは、冬になると長期で店を閉めてイタリアに戻るオーナーや別の商品を売る二毛作営業の店舗も多く、気がつくと雑貨屋さんや革製品のブティックに様変わりしていることもありました。ですが最近はワッフルやクレープなど温かいメニューを増やしたりコーヒーにこだわったりして、ほとんどのアイスカフェが一年中営業しているようです。

 

ドイツのアイスカフェの名物といえば「スパゲッティアイス」。マンハイムでアイスカフェ「Eis Fontanella」を経営するダリオ・フォンタネッラさんが1969年に考案し、今やドイツ中どこのアイスカフェでも食べられる人気メニューです。

これが噂のスパゲッティアイス。アイスの下には生クリームがたっぷり。

これが噂のスパゲッティアイス。アイスの下には生クリームがたっぷり。



スパゲッティアイスはその名のとおり見た目がスパゲッティにそっくり。生クリームの上に、専用プレッサーでスパゲッティ状にバニラアイスを絞り、トマトソースのかわりに苺ソースをかけ、その上にパルメザンチーズに見立てたホワイトチョコレート(またはココナッツ)をトッピングするのが基本形。日本的感覚だとたっぷり2人前くらいはあるボリュームですが、ドイツでは子どもでも1人1個をぺろりとたいらげてしまいます。

 

スパゲッティアイスだけでも様々なバリエーションが。アイスカフェのメニューは写真付きで楽しい。

スパゲッティアイスだけでも様々なバリエーションが。アイスカフェのメニューは写真付きで楽しい。



基本のトマトソース(苺ソース)の他にもフルーツやナッツを使った様々なスパゲッティアイスがあります。卵のリキュールがけの「カルボナーラ」や、太麺タイプの「タリアテッレ」「ラザニア」なんていうメニューも。
アイスカフェのメニューは日本のファミレスのように実物のカラー写真が載っていて、種類が多いので見ているだけでもわくわく。先日数えてみたところ、パフェとスパゲッティアイスだけでも50種類以上もありました。

 

もうひとつ、ドイツならではのメニューが「アイスカフェー (Eiskaffee)」。「アイスコーヒー」という名前ではありますが、いわゆる日本のアイスコーヒーとはちょっと、いやかなり違うのでご注意を。

ドイツのアイスコーヒーはデザート感覚。アイスと生クリームがたっぷり!

ドイツのアイスコーヒーはデザート感覚。アイスと生クリームがたっぷり!



冷たいコーヒーが飲みたくて頼んだところ、アイスクリームと生クリームがたっぷりのったコーヒー(あまり冷たくない)が出てきてびっくりした、という日本人が後を絶ちません。これは飲み物というより、食べ物。それをふまえていただくととっても美味しい1品でして、私もデザートとして楽しんでいます。甘党にはココア版の「アイスショコラーデ」もおすすめですよ。

アイスコーヒーに限らず、ドイツではあらゆる食べ物に生クリーム(ザーネ)をこれでもか!と使う傾向が強いです。ドイツのザーネはフレッシュで甘くなく、たしかにとっても美味しいのですが、それにしても。いったいどれだけ好きなの?!と驚かされることもしばしば。

スプレー式の缶入りザーネはほとんどの家庭に常備されていますし、カフェでケーキを食べる時も「ミット・ザーネ(生クリーム付きで)」と頼む人がたくさん。すでに生クリームがたっぷりと使われたケーキにさらにミット・ザーネする強者もいます。アイスもまたしかりで、ドイツのアイスは全体的にザーネの含有量が高くクリーミーなのが特徴です。

 

ドイツのアイスはクリーミーかつボリューミー。そして安い!

ドイツのアイスはクリーミーかつボリューミー。そして安い!



定番のバニラやチョコ、コーヒー、ヘーゼルナッツやピスタチオなどのナッツ系、ストラッチャテラ(チョコチップ入りバニラ)、苺やレモン、マンゴーなどのフルーツ系、クヴァルクやティラミス風味……何十種類ものフレーバーが並ぶショーウィンドウは圧巻。私は濃厚なクリーム系とさっぱりフルーツ系の2種類を組み合わせるのが好きなのですが、ショーウィンドウを凝視しながらいつも迷いに迷ってしまいます。

お値段は現在のところ1スクープ1ユーロくらいが相場でしょうか。これでも充分安いですが、10年前は50セントのところもあったんですよ。さすが乳製品が安い国。
ドイツに来たら、ぜひアイスカフェでいろんなアイスを試してみてくださいね!

Guten Appetit!

 

さて伝統的なアイスカフェ一辺倒だったドイツのアイス界にも、ここ数年で新たな勢力が登場し、アイス界のセカンドウェーブともサードウェーブともいえる現象を巻き起こしています。

次回は【流行編】と題しまして、ドイツでいま注目のアイスの数々をご紹介します。お楽しみに!

 

坪井由美子

日本では「食」に関する仕事に従事。商品開発やリサーチ、テレビ・ラジオへの情報提供及び出演、執筆などに携わる。テレビ東京『テレビチャンピオン・甘味王選手権』で3度優勝するなど食いしん坊ぶりを発揮。2003年よりドイツを拠点にフリーライターとして活動。共同通信、朝日新聞デジタル、NHK他で旅や食文化、最新トレンドなどについて執筆。近年は世界各地でプチ移住&プチ留学を体験しながら発信中。 総合情報サイト「オールアバウト」ドイツガイド担当 /ドイツ・ニュースダイジェスト」レシピ連載中 / 2020年秋『在欧手抜き料理帖』(まほろば社)出版

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坪井由美子