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着物が似合わないハーフ

着物が似合わないハーフ

© sosuke1

着物が似合わないハーフ

「その国」を代表するイベント、例えばオリンピックやワールドカップ、ミスコンでは各国がその国の国旗を揚げ実力や美しさを競う。



最近は多くの国が国際的になってきていて、移民を受け入れている国も多いことから、移民の二世などがオリンピックやワールドカップの代表選手に選ばれることも多い。例えばドイツサッカーも、一昔前みたいに容姿がいわゆる「ドイツ人の典型」とされる人達ばかりでなく、トルコ系やアフリカ系など様々なバックグラウンドの人がドイツ代表に選ばれている。



日本だって、室伏広治選手のようにハーフの選手がオリンピックに出て大きな成果を挙げた。



しかし世間一般では、やっぱり「その国らしい人」が優勝をすると、喜びが大きいみたい。少し前だと、柔道のヤワラちゃんや国民栄誉賞を受賞したマラソンの高橋尚子選手。最近だとワールドカップで優勝し、やはり国民栄誉賞を受賞した「なでしこジャパン」。「なでしこジャパン」は決して条件がよくない中、長い期間にわたり努力をし、その諦めない姿勢が震災後の日本に大きな夢をあたえた。その後の「なでしこフィーバー」については皆さんご存知の通りだ。



フィーバーの背景には「我々と同じ日本人ががんばって優勝をした」という気持ちがあるのだと思う。やっぱり同じ日本人として「なでしこジャパン」の優勝は見ていてうれしいし、がんばっている「なでしこ」が身近に感じられ大フィーバーとなった。




そこで私はいろいろと妄想をする。例えば「なでしこジャパン」のような代表チームに、ハーフが1人や2人いたらどうなるのか。いや、1人や2人と言わず、3人や4人ぐらいいたらどうなるのか。仮にサッカーの実力を持ったハーフ選手が集まって日本代表となり勝ったとしても、今回のようなフィーバーは起きないと思う。というより、だれもそういうチームを「なでしこジャパン」とは呼ばないだろう (笑)。



そういう意味でやっぱり「親しみやすさ」に関しては、「ハーフ」は「生粋日本人」に負けるのだ (ベッキー以外ね)。



ではミスコンに関してはどうか。ドイツのミスコンでは2004年にイラン系の Shermine Shahrivar がミス・ドイツ (その後、2005年に彼女はミス・ヨーロッパの快挙を成し遂げる) に選ばれたが、やはりミスコン全体の流れを見ると、「ドイツ女性の美貌」というとやっぱり多くの人が「金髪碧眼」を想像するし、実際に歴代のドイツ・ミスにはそういう典型的なドイツ美人の風貌をした人が多かった。日本のミスコンでも、やはりまっすぐな黒髪が魅力的な日本人女性がミス・日本になる。最近のミス・日本が、果たして「古来の日本人顔」かどうかは別として、やっぱりあまりにバタ臭い顔、例えば欧米とのハーフがミス・日本になったとしたら、違和感を持つ日本人は多いだろう。「あの人、キレイはキレイだけど、あれって『日本』なの? ちがうでしょ?」なんて言われちゃうかもしれない。



欧米×日本のハーフの顔立ちには「アジアンビューティー」や「金髪美人」のような「わかりやすさ」がない(例外もまれにいるが)。



でも実は私が言いたいことは、ハーフがミスコンに出る、とか、ハーフがオリンピック代表になる、という話ではなく、やはりハーフはなんというか無国籍顔 (というよりも色んな国が混ざった多国籍顔?) であることが多いため、メジャーではない顔立ちをしていることが多く、たとえきれいだったとしても本人は疎外感を感じやすい、ということだ。



そしてこれは私自身の悩みなのだが、半分日本人であるにもかかわらず着物がかわいそうなぐらい似合わない!



友達のハーフからも「私も、着物似合わないんだよね…」という悩みをよく聞く。



でも考えてみれば多国籍料理というものがあるように、私たちハーフは「多国籍顔」なのだと思う。「その国らしさ」を競ったら確かに負ける顔ではあるけれど、そのぶん個性的な顔。その国らしい顔、着物に合う顔に無理やりなる必要はないのかもしれない。そう思ったら、着物が似合わないのも、あまり気にならなくなったぞ。



★コラム ドイツ人には『日本人に似てるね』と言われ、日本人には『ドイツ人に似てるね』と言われる日独ハーフ も是非ご覧ください。




サンドラ・ヘフェリン



ドイツ・ミュンヘン出身。日本歴 13年、著書に「浪費が止まるドイツ節約生活の楽しみ」(光文社) など 5冊。自らが日独ハーフであることから「ハーフ」について詳しい。ちなみにハーフに関する連載は月刊誌に続き今回が 2回目である。趣味は執筆と散歩。目黒川沿いや碑文谷をよく散歩している。

サンドラ・ヘフェリン

ドイツ・ミュンヘン出身。日本歴19年、著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ) 、「ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ』(原作: サンドラ・ヘフェリン、漫画: ヒラマツオ/KADOKAWA)、「『小顔』ってニホンではホメ言葉なんだ!?~ドイツ人が驚く日本の「日常」~」(原作: サンドラ・ヘフェリン、漫画: 流水りんこ/KKベストセラーズ)」など計11冊。自身が日独ハーフであることから、≪ハーフはナニジン?≫、≪ハーフとバイリンガル教育≫、≪ハーフと日本のいじめ問題≫など「多文化共生」をテーマに執筆活動をしている。ホームページ 「ハーフを考えよう!」 を運営。趣味は時事トピックについてディベートすること、カラオケ、散歩。

サンドラ・ヘフェリン