ハーフの名前のつけ方についてPart 5
国際的な名前イコールDQNネーム?
その国の流行りが分からず自分の感覚で子供に名前をつけてしまうと、日本昔話に出てくるような名前(桃太郎)やドイツの古い名前を子供につけてしまい、その結果子供が大変な思いをすると書きましたが、かといって今風の名前 & 国際的に通用しそうな名前をつけるのも考えものだったりします。というのは、いわゆる「今風の国際的に通用しそうな名前」というのは一歩間違えると「DQNネーム」になりやすいからです。DQNネームが何か分からない方のために説明をすると、DQNネームとは、暴走族の「夜露死苦(よろしく)」を連想させるような名前のこと。
私の個人的な好みだが、人間に飲み物や動物のような名前はつけてほしくないなあ。飲み物のような名前には心愛(ココア)、動物のような名前には心愛羅(コアラ)があり、聞いていてかわいいとは思うけど、将来子供が真面目で堅い職業に就いた時に苦労しそう。だってその子が将来、裁判官になったとして、名前が「コアラ裁判官」では、説得力がないと思うのですよ。それに一見、欧米風のようだけれど、実際に欧米にはココアやコアラという人間の名前はないのでやはりビックリされますね。
「DQNネーム」について、インターネットでリストを検索したら出るわ出るわ凄い漢字のものが沢山出てきました。飲み物系の名前だと、海月彰(カルア)や海聖亮(カシス)。それとは別に、男の子の名前で輝流愛(キルア)、精飛愛(セピア)。女の子の名前で、楽瑞凛(ラジュリ)や実愛(ミュア)。…一体、いつから「実」という漢字は「ミュ」と読むようになったのだろう…。あと、いくら美しい晩に生まれたからといって美晩(ビバ)ちゃんというのも個人的にはクエスチョンマークです。そういえば、夏杏(カアン)ちゃんというのもいたなあ。お母様がオリバー・カーンのファンだったのでしょうか。
リストには「今日」と書いて「ほいて」と読ませるドイツ語を意識したDQNネームもありました(注:ドイツ語で heute=ホイテは今日の意味)が、いくらドイツが好きでもやめておいたほうが無難かもしれません。大体「ほいて」という名前でドイツに行ったら、ドイツ人に「そんな名前は我が国にない」と言われそうです。あとビックリしたのは「ユーロ(悠路)」っていう名前。欧州連合の通貨を意識した名前ですが、もし欧米人が子供に日本の通貨である「Yen」と名付けたら日本人として違和感を持つのと同じく、おそらくユーロという名前もヨーロッパでは違和感を持たれるに違いありません。だって通貨なんですもの。
名前って不思議で、少し変わった書き方や読み方で素敵!と思うものもあれば、これはないだろう、と思ってしまうのもあります。おそらくほんのちょっとした「差」なのでしょうね。
最近いい名前だなと思ったのは、雑誌に載っていた夫婦なのだけれど、3月11日後の被災地で子供が生まれ、生まれてきた女の子につけた名前「寿美礼 (すみれ)」。母親は震災後の被災地で周りの人に助けられながら無事出産できたので、感謝をし、子供に「美しく、人に感謝をし、寿命を全うしてほしい」という思いを込めて命名したという。いい話だな。
しかし「DQNネーム」に話を戻すと、私はDQNネームについてアレコレ考えるのが好きみたい。楽しい (笑)。それと同時にやっぱり私は保守的で古臭いんだなあ、と自分でも思った。サンドラの考え方は一世代前の考え方だよ、と言われてしまうかもしれない (笑)。
★コラム「言葉と文化は切り離せない」も是非ご覧ください。
サンドラ・ヘフェリン
ドイツ・ミュンヘン出身。日本歴 13年、著書に「浪費が止まるドイツ節約生活の楽しみ」(光文社) など 5冊。自らが日独ハーフであることから「ハーフ」について詳しい。ちなみにハーフに関する連載は月刊誌に続き今回が 2回目である。趣味は執筆と散歩。目黒川沿いや碑文谷をよく散歩している。