好きなものを選び抜く、格好いいライフスタイル。それもエコ
今週9月12〜18日は "Climate Diplomacy Days" 週間で、EU各国各国で「気候変動・環境保護」をテーマに催しが行われています。
その一環として、このブログで私も環境について考えてみました。
日本に住んでいた頃、「ドイツは環境に配慮している国」というイメージがありました。もちろんそれは間違いではありませんが、ベルリンに住むようになってから、私の中で「環境に配慮」というニュアンスが少し変化しました。
日本にいたときは、環境に配慮することとは省エネ・節水に努めたり、ゴミの分別に気を使うことだと思っていました。もちろんそれも環境配慮の一端ではあるでしょう。しかしベルリンに来てからは、もっと広い意味で捉えるようになりました。
そのように変化したのは、私の仕事であるベルリンのライフスタイル取材、特に一般宅のインテリア取材を通してです。これまでに200を超える一般のお宅を拝見して著書や雑誌で紹介してきましたが、取材させてもらったほぼ全てのお宅で、何かしらの中古品を使っていたのです。それらは蚤の市や中古品店で購入したり、家族から受け継がれたものでした。
そうしたお宅は、新品だけでインテリアをコーディネートしたお宅よりも、遥かに素敵でした。数ある古いものの中から素敵な品を選ぶ審美眼、そしてそれを部屋に溶け込ませるテクニック。
ベルリンに来て、初めて知った世界でした。
古いパーツを新しいものと組み合わせて、オリジナルの家具を生み出しているお宅もありました。センスがいいだけでなく、なんてクリエイティブなんでしょう。既成概念にとらわれない自由な発想はどこから来るのか、当初はわかりませんでした。
やがて、その創造性の源が理解できるようになりました。
蚤の市、セコンドハンドショップ(中古品店)、リメイク家具店に古い写真集、展覧会……インスピレーションを与えてくれる場がベルリンには至る所にあるのです。
古いものを慈しみ、使えるものは大切に使い尽くす。ときには古いものを新しい形に生まれ変わらせる。そういう行為も広い意味で、環境に配慮することだと思います。
取材した方々のうち、短いサイクルで商品の消費を繰り返すことに反対する人は少なくありません。
大量生産され、低価格で販売される品については、どのような背景で作られたのか、環境を破壊していないか、劣悪な労働条件によって低価格を実現していないかを気にします。
「自分が賛同できない企業の品は買わない」というセリフは、ドイツでもう何度も耳にしました。
インテリア取材を重ねてきて、自分の考えで何かを選択している人は格好いいと思うようになりました。それはインテリアやその人の外見といった表面的なことだけでなく、ご本人の、いわば哲学から生まれるライフスタイルです。
私がドイツで教わったのは、めまぐるしい流行に左右されるのではなく、自分の中に軸を持ち、好きなものをじっくりと取捨選択する暮らし。
それもエコだと思います。
そしてそれは、格好いい暮らしだと思うのです。
文・写真/ベルリン在住ライター 久保田由希
2002年よりベルリン在住。ドイツ・ベルリンのライフスタイル分野に関する著書多数。主な著書に『ベルリンの大人の部屋』(辰巳出版)、『ベルリンのカフェスタイル』(河出書房新社)、『レトロミックス・ライフ』(グラフィック社)、『歩いてまわる小さなベルリン』(大和書房)など。近著に『かわいいドイツに、会いに行く』(清流出版)。http://www.kubomaga.com/