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ハーフはみんなリッチ? 庶民ハーフの叫び

ハーフはみんなリッチ? 庶民ハーフの叫び

© Curnen (flickr.com)

ハーフはみんなリッチ? 庶民ハーフの叫び

ハーフはバイリンガルのはず」、「ハーフは可愛いはず」などハーフは色んなイメージを持たれてしまっていることを以前書きました。でもそれ以外にも世間がハーフに対して持っているイメージがあります。それは「ハーフ=お嬢様」っていうイメージ!



世間には「ハーフ=お嬢様」っていうイメージが浸透しちゃってるみたいです。確かにテレビに出てくるハーフは「お嬢様」が多い。タレントの森泉ちゃんなんかは「おばあさまが、森英恵」というお嬢様ハーフの典型だし、滝川クリステルさんも恵まれた環境に育った印象を受けるし、マリエは超リッチらしいし、梅宮アンナもブランドの匂いがする。テレビでは何かとリッチなお嬢様ハーフが紹介されがちです。「世界バリバリ☆バリュー」にも豪邸に住むお嬢様ハーフが紹介されていましたね。おかげでそれを見ている人は「ハーフはみんなお嬢様なんでしょ」と思っちゃうことも多いみたい。その結果、庶民ハーフは困ってます。



特に団塊の世代は「日本とドイツのハーフ」と聞くと「あ、お嬢様だ」と思っちゃうことが多いみたい。現に私も、とてもかしこまった場で自己紹介をした後に、「お父様がドイツ人ですか?」と聞かれ「はい、そうです」と答えた途端に「やっぱり外交官か何かですか?」と聞かれたり (ちなみにウチは庶民派なので外交官ではありません) 。ドイツと日本のハーフというと「音楽」とすぐに結び付けられることも多く「サンドラさんは何歳からピアノをやってたんですか?」と聞かれたりします (ピアノは習ったこと、ありません) 。



あとは「シェパード飼ってそう」はまだいいとして、「ドイツではお城に住んでたんですかぁ?」とか、冗談だとは思いますけどね。もちろん、お城に住んだことは一度もございません。



ドイツと日本のハーフに限らず、他の欧米の国と日本のハーフも「プール付きの家に住んでそう」とか色々想像で言われちゃったりして大変みたい。



こういう発想はけっこう知識層にも広まっていて、東大卒の団塊世代のある国立大学の教授は、生活費と学費を全部自分で捻出していた、イタリアと日本のハーフの女学生に対して「え? キミは全部自分で出してるの? 君はイタリアだっていうから、裕福なところのお嬢さんかと思った」と言ったらしい。その学生は「イタリアは国自体が昔っから破産寸前なのに、どこから『裕福』『お嬢様』って発想が出てくるのかが分からない! 日本の戦後の『欧米=みんな裕福』みたいな完全な欧米コンプレックスなんじゃないの?!」と怒ってました。



今、日本は格差社会だと言われているけど、ハーフもぶっちゃけ格差社会そのものです。むしろハーフの場合、その差がハッキリ出やすい、二極化しやすい傾向があるんじゃないかな。つまり、ハーフの中には本当に「お父様は外交官で、お母様はピアニスト、学校はずっと日本&外国の私立校、日本語・ドイツ語・英語がペラペラのトライリンガル。楽器はピアノとバイオリンができます」という家庭環境によって教育も何もかも保障されているハーフがいる一方、「お父さんは私が生まれる前にどっかに行っちゃって、お母さんはずっとスナックで生計を支えてきた、学校は地元の公立校、言葉は日本語のみで英語やそのほかの外国語はできない」というように生まれながらにして人生の厳しさに直面し、強く生きていかなければならないハーフも大勢います。



なので「ハーフ⇒バリバリ☆バリュー⇒お嬢様」なんて構図は、想像している側は楽しいですが、それに該当しないハーフからしてみたら酷な話なんであります。聞かれるたびに「いえ、ウチにプールはありません、いえグランドピアノもありません」なんて答えなきゃいけないからさ。大変。なんだかこっちが悪いみたいな気持ちにさせられるしさ。ご期待にそえずにすみませーん、みたいな(笑)



もちろん格差はどこにでもあるもので、ハーフに限ったことではないのだけれど、生まれがお嬢様なハーフは将来バイリンガルやトライリンガルになる確率が高いし、イジメに遭う確率も比較的少ない、と私は見ている。実際、私立のアメリカンスクールやドイツ学園より日本の公立小学校のほうがハーフがイジメに遭う確率が高い。私立校であるドイツ学園やアメリカンスクールにイジメがないとは言いませんが、少なくともクラスの大半の生粋日本人に「やーいお前ガイジンだろー」と言われてしまうようなイジメはありません。何せ日本のドイツ学園やアメリカンスクールにはハーフがわんさかいるのですから、そこではハーフが「少数派」でない事だけは確かです。でも日本の公立校に通うと「ハーフ」は少数派になってしまうので、この手のイジメのターゲットになる確率が高くなる、という事です。私は日本の公立小学校に通いイジメに遭わなかったハーフを知りません。少なくても私の世代では。が、イジメについてはまた別の回で改めてじっくり書いていきます。ハーフとイジメは切り離せないテーマですので…ね。



困ったことに、日本の公立校に通っているハーフに対して周りは普通に「ジェニファーちゃんは、どうしてアメリカンスクールに通わないの?!」なんて聞いてくるんですよね。「インターは高いので…」なんて答えられる訳ないのに。



ハーフにも広がっている格差。世の中が二極化しているように、ハーフも二極化しているのが現実です。私はよく雑誌の『SPA!』を読むのですが、この雑誌に一時期よく出ていた「下流」と「上流」にのっとって、そのうち「上流ハーフ」とか「下流ハーフ」みたいな俗語ができたらどうしよう、と思う今日この頃です。



ちなみにミュンヘン出身のピアニストで日独ハーフのアリス紗良オットさんは私から見るとお嬢様ハーフですが、面識はないもののその才能、精神力、美貌にすごい!! って私は勝手に応援していたりします。



以上ドイツのお城に住んでいないサンドラの独り言でした。





サンドラ・ヘフェリン



ドイツ・ミュンヘン出身。日本歴12年、著書に「浪費が止まるドイツ節約生活の楽しみ」(光文社)など5冊。自らが日独ハーフである事から、「ハーフ」について詳しい。ちなみにハーフに関する連載は今回が2回目。趣味は執筆と散歩。目黒川沿いや碑文谷をよく散歩している。

サンドラ・ヘフェリン

ドイツ・ミュンヘン出身。日本歴19年、著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ) 、「ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ』(原作: サンドラ・ヘフェリン、漫画: ヒラマツオ/KADOKAWA)、「『小顔』ってニホンではホメ言葉なんだ!?~ドイツ人が驚く日本の「日常」~」(原作: サンドラ・ヘフェリン、漫画: 流水りんこ/KKベストセラーズ)」など計11冊。自身が日独ハーフであることから、≪ハーフはナニジン?≫、≪ハーフとバイリンガル教育≫、≪ハーフと日本のいじめ問題≫など「多文化共生」をテーマに執筆活動をしている。ホームページ 「ハーフを考えよう!」 を運営。趣味は時事トピックについてディベートすること、カラオケ、散歩。

サンドラ・ヘフェリン