ドイツでロバ(Esel)というと・・・
最近の私の日課。それは朝起きてから、「クサツネ」の動向をチェックすることです。
クサツネはロバで、太郎丸さんと一緒に日本各地を旅しているのですが、その旅レポートが何ともほのぼのとしていて、楽しいのです。
今(これを書いているのは8月21日)はクサツネと日本を旅している太郎丸さんですが、過去には中東をロバと旅したこともあるとのこと。その時のことを知りたくて、先ほど『ロバのスーコと旅をする』(河出書房新社)を買ってきました!
ツイッターを通してすっかりロバのファンになってしまった私ですが、実はドイツで「ロバ」はちょっと可哀想な状況に置かれているのでした。
何が可哀想かって、「ロバ」はドイツ語でEselといいますが、ドイツでEselは昔から「マヌケな存在」として扱われてきたのです。
ドイツでは本のページの端っこを折ってしまうのは「だらしないこと」とされています。そして「本のページの端っこが折れている」状態をドイツ語ではEselsohren(和訳「ロバの耳」)と言います。むかし、ドイツの学校の先生はよく「教科書にEselsohrenを作るな!」と生徒に注意をしていました。
こちらがEselsohrenです(笑)
昔ギムナジウムで同級生だった子も、何か自分がドジをすると、大きな声で“Ich Esel!“(和訳「私ってばロバみたい!」)と独り言を言っていました。
そう、ロバのドイツでの立ち位置は、「頑固でドジ」というものです。いわゆる「高貴」なイメージからかけ離れたところにいるのがEselなのです。
理由については諸説ありますが、かつてヨーロッパでは裕福な人は馬で移動していたため、ロバで移動する人について「裕福ではない」「貧しい」というイメージが長年にわたって作られてしまった、という点が大きいかと思います。
でもクサツネをSNSを通して見ていてもわかるように、ロバは暑さに強く、長時間歩けますし、人間と「つかず離れずの距離を保てる性格」で、我慢強い生き物です。長距離の移動に適した優秀ななパートナーだといえるでしょう。前述通り、ドイツでは「ロバは頑固」だと思われているわけですが、例えばロバが「移動中にいきなり動かなくなる、という頑固さを見せる」のも、危険を察知してのことだといいます。
食事に関しても、草があれば大丈夫で、太郎丸さんによれば、以前、中東を旅していた時のロバ「スーコ」はサボテンも食べていたのだとか。
そんなこんなで「移動」にはうってこいのロバであるわけですが、私自身はロバと言うと、数年前から話題になっているこの絵のことを思い出します。
ロバとともに旅する人間を描いた絵ですが、「どんな形でロバと旅しても、人は人に対して文句を言う」ということが分かるイラストです。
左上から・・・二人でロバに跨れば、「ロバが可哀想!」(と人に言われる)
右上・・・・・男性がロバに乗り、女性が歩けば、「夫だけロバに乗って、妻が可哀想」(と人に言われる)
左下・・・・・「妻をロバに乗せて、夫の自分が歩くだなんて、馬鹿な男だな」(と人に言われる)
右下・・・・・二人ともロバに乗らずに、ロバの隣を歩けば「ロバがいるのに、ロバを活用できていないなんて、あいつらは本当に無知」(と人に言われる)
一番下にDie Leute meckern immer, egal was du tust. Sie haben immer was zu sagen.(和訳「あなたが何をしても、人はいつも文句を言う。人はいつも、口を出し、ひとこと言いたいものだ」)とありますが、世の中、まさにその通りだと思いませんか?
サンドラ・ヘフェリン