【今週のドイツ語】Den Wald vor lauter Bäumen nicht sehen
何かを探している時、すぐ近くにあるにもかかわらず見えない場合や、小さなことや細かいことをたくさん処理するために、全体像が見えなくなってしまう時に、ドイツ語では
den Wald vor lauter Bäumen nicht sehen
デーン ヴァルト フォア ラウター ボイメン ニヒト ゼーエン
という表現を使います。
den Wald は「森を」、vor lauter Bäumen は「多くの木を前に」、そしてnicht sehenは「見ない」、という意味なので、直訳すると「多くの木を前に森を見ない」、つまり日本語の「木を見て森を見ず」という意味に当たります。
細かいことを気にしすぎて全体を見失ってしまう、あるいは、あらゆる選択肢のために問題に対する最適な(そして本来は簡単な)解決策に気づかない、などの意味で使われます。
ドイツと日本共通のことわざですが、1本1本の木に注意を奪われると、森全体を見なくなることからくるこの表現は、もともと西洋から日本に伝わったとされ、またドイツにおいては、この表現の起源は明らかにある人物に遡ると言われています。
18世紀に活躍したドイツの詩人、作家、翻訳者のクリストフ・マルティン・ヴィーラントです。その当時ドイツで最も重要な詩人の一人だった彼は、古代ラテン語の表現を手本に、自身の作品の中でこの表現を何度か使用しました。それがきっかけでこの表現がドイツで広まったのだそうです。
例えば:
"Die Herren dieser Art blendt oft zu vieles Licht, Sie sehn den Wald vor lauter Bäumen nicht."
(この種の紳士は、しばしばあまりの光に眩惑され、木を見て森を見ない。)
ヴィーラント作の韻文物語『ムザーリオン』より
【今週のドイツ語】
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