「シュトレン」と「シュトーレン」の違いとは?
新年最初のブログ更新。みなさま本年もどうぞよろしくお願いいたします。怒涛のクリスマスシーズンが終わり年が明けたと思ったら、あっというまに1月も末。こんな調子でまたあっというまにクリスマスがやってくるのでしょう。忘れないうちにクリスマスのお菓子、シュトレンについて書いてみたいと思います。
最近は日本でもすっかりおなじみとなったシュトレン。みなさんはお好きですか?私のまわりにはレーズンやドライフルーツが苦手という人も多いので、日本でこんなに人気を得ていることが意外でもあり、嬉しく思っています。聞くところによると、日本では抹茶や黒糖、フルーツなど様々なフレーバーのシュトレンがあるのだとか。想像しただけでおいしそう……ぜひ食べてみたいです。バウムクーヘンといい、シュトレンといい、日本で進化しどんどんバリエーションを増やしていっているドイツ菓子の世界。じつに興味深いですね。
昨冬はシュトレンの本場ドレスデンの最古のクリスマスマーケットのひとつ、シュトリーツェルマルクトを訪ね、マイスターの指導のもと、シュトレン作りを体験しました。
詳しくはこちらの記事でどうぞ
>>本場ドイツのクリスマスマーケット シュトレンの故郷ドレスデンと魔女の町ヴェルニゲローデ
シュトレンの食べ比べ
ドレスデンで作ったシュトレンは、1か月ほど寝かせた後にいただきました。ちょうどデュッセルドルフのクリスマスマーケットで入手したシュトレンがあったので、ドイツ大使館ブログ「ドイツ・ワークスタイル研究室」でおなじみのめぐみさんをお誘いし、食べ比べの会を開催。3種類のシュトレンを食べ比べてみましたが、それぞれ全く違った味わいがあり、どれもとってもおいしかったです。やはり良い材料で丁寧に手作りされたものは、スーパーで買う安価な商品の何倍もおいしいなあと感激。値段もけっこう張りますが、比べ物にならないくらいおいしいです。冬のドイツを訪れたなら、ぜひお菓子屋さんやパン屋さんの手作りシュトレンを食べてみてください。
クリスマス菓子が店頭に並び始める時期は年々早くなっているようで、スーパーでは夏の終わり頃から登場しますが、専門店のシュトレンは冬季限定です。おいしいシュトレンを食べたい!という人は、冬のドイツをめざしましょう。
シュトレンorシュトーレン問題が解決しないのはなぜ?
ところで、度々話題になるのが、シュトレンの呼び方問題。みなさんご存じのように、ドイツ語では「シュトレン」ですが、日本では「シュトーレン」と伸ばして呼ばれることが多いですよね。これをドイツで言うと、ゲシュトーレンgestohlen(盗むという意味の過去分詞)と間違えられるおそれがあります。
なぜ日本ではシュトーレンとして定着したのでしょう?最近は「ドイツ語ではシュトレン」ということがだんだん知られてきたような感じもしますが、まだまだシュトーレンが主流。とくにオンラインメディアなどではSEO対策として通名が使われることも多く、私も日本の媒体で記事を書くときは、シュトレン(シュトーレン)と併記することがあります。
この通名問題はなかなか厄介で、間違いを指摘されたりもするのですが、じつは媒体の意向であえてそうしている場合も多く、表記揺れがみられます。例えば、パンのBrezel。ドイツ語の発音に近いのはブレーツェルですが、日本ではプレッツェルの方がなじみがありますよね。
ドイツ語には、カタカナで表現するには難しい単語が少なくありません。私は現在、NHK「旅するためのドイツ語」のテキスト版で「おいしいドイツ」という連載を担当させていただいているのですが、語学学習のための媒体なだけに、正しいドイツ語が大前提。カタカナ表記については、編集部やドイツ語の先生など専門家の方々のご意見をうかがい、入念なチェックが行われます。ここではもちろん、Stollenは「シュトレン」となります。
ところが、先日驚いたことがありました。NHKのニュース番組でドイツのクリスマスマーケットをレポートした時のことです。クリスマス菓子としてシュトレンを紹介したのですが、NHKが使用する用語集によれば「シュトーレン」なのだそう。つまりNHKのニュースではシュトーレンと読むということ。ですが、さすがに私の口からシュトーレンと言うことはできず、相談の結果、シュトレンとして紹介させていただけることになりました。本番でキャスターの方が「本当はシュトレンなんですね」と言及してくださったのは、嬉しいサプライズでした。日本で「シュトレン」が認知されるよい機会になったかも?と期待しています。
放送は日本からは見逃し配信で視聴できるようです。12月はこのニュースリポート初挑戦で、いっぱいいっぱいになっておりました。お見苦しいかと存じますが、よければご笑覧ください。
※NHK「ニュースLIVE ! ゆう5時」12月22日放送分 5時40分頃から登場します。
さて、今回の記事で私は「シュトレン」「シュトーレン」という単語を何回使ったでしょうか……なんだかややこしくなってしまいすみません。
とにもかくにも、本場のシュトレンはとってもおいしい!ということをあらためてお伝えして、しめたいと思います。