【今週のドイツ語】Ich glaube, mein Schwein pfeift
苦労して立てた計画に思わぬところで邪魔が入ったり、大事な仕事の約束が突然キャンセルされたりすると、びっくりするし腹が立つしで、思わず「あり得ない!」と大声を出してしまったり。そんな経験、ありませんか?
今日ご紹介するのは、そんな時によく聞くドイツ語です。
Ich glaube, mein Schwein pfeift.
イッヒ グラウベ マイン シュヴァイン プファイフト
ich glaubeは「〜と思う」、mein Schwein は「私のブタ」、pfeiftは「口笛を吹く」。「私のブタが口笛を吹いているようなんだけど」というのがその訳になります。口笛を吹くブタって、それこそあり得ない状況ですが、何が言いたいのかちょっと気になりますよね。
これは、困ったことや不愉快なことで驚いた時に使う表現で「おいおい、嘘だろう」とか「冗談じゃないよ、あり得ない」とかいう気持ちを表しているのです。ブタの要素も口笛の要素もありませんが…。例えば、
Er will mir das geld nicht zurückgeben. Ich glaube, mein Schwein pfeift!
彼、お金を返してくれないんだ。あり得ない!
というような使い方をします。
なぜこんな言い方をするようになったのか、理由はよく分かっていないのですが、一説によると、この表現は比較的新しく、1970年代頃に生まれたようです。60年代後半に盛んだった学生運動の名残で、70年代以降もドイツの左寄りの学生たちの間には自由でやんちゃな雰囲気がありました。そんな学生たちの間で広がった言い回しの一つだったようです。ブタが口笛を吹くというシュールな状況を言葉にすることで、目の前で現実に起きているあり得ないことに対して「そんなこと信じない」という気持ちを表しています。この頃生まれたとされる同じ意味の表現には「ハムスターが床を磨いている」や「トナカイにキスされてる」など、やはり不思議なものがいろいろあります。
もう一つ、笛付きのやかん説というものがって、これはお湯が沸騰するとピーっと鳴って知らせるものですが、そのやかんの胴体が丸くてブタのようなので、例えばつまらない長話を聞かされてもう無理、という時に「私のブタが口笛を吹いている(お湯が沸いた)みたい」と言って席を立つということなのですが…皆さんは、どちらの方が説得力があると思いますか?
Text by Kumiko Katayama
【今週のドイツ語】
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