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不落の城、エルツ城

不落の城、エルツ城

あっという間に2022年も残り1ヶ月ほどになりました。ドイツでは、今週末からクリスマスの始まりとも言えるアドベントが始まります。

 

さて、今回は夏に訪れた、森の中に佇む難攻不落の城と呼ばれる「エルツ城(Burg Eltz)」を紹介します。エルツ城は1965年からの当時のマルク紙幣に描かれたこともあり、ドイツでも人気のあるお城です。

正面から見るエルツ城。@tomogermany



この城はラインラント=プファルツ州のトリーア(Trier)とコブレンツ(Koblenz)の間、モーゼル川中流にあり、ノイシュバンシュタイン城、ホーエンツォレルン城と共にドイツ三代美城の一つとされています。またエルツ城が特徴的であるのは、建築された12世紀初頭から一度も戦争などで陥落したことがなく当時の姿を残しているからです。

 

エルツ城は、12世紀初頭にモーゼルケルンのモーゼル川と肥沃なマイフェルドを結ぶエルツ川(Eltzbach)沿いの交易路に建てられたと言われています。このエルズ川は、高さ70mの楕円形の岩頭にそびえる城の3面を囲むように流れており、建築家たちは、この岩の尖塔の形状をもとに建築を行ったそうです。そうして一部変わった個室の間取りの城が誕生しました。その後も増築を繰り返していたため、この城には、ロマネスク様式とゴシック様式が残っています。

歴史を感じる城。@tomogermany



1157年、フリードリッヒ1世((Friedrich I. 、通称赤髭王)からの贈与証書で初めて言及され、最初の城主は「ルドルフ・デ・エルツェ(Rudolfus de Elze)」とされました。エルツ家は1268年、城とそれに付随する領地をルドルフの曾孫エリアス(Elias)、ヴィルヘルム(Wilhelm)、テオデリヒ(Theoderich)兄弟で分割することにし、共同で相続することになりました。

 

そして、分割相続されたエルツ城は、それぞれケンペニヒ(Kempenich)、リューベナッハ(Rübenach)、ローデンドルフ(Rodendorf)と、3兄弟の妻に由来する名前で呼ばれるようになりました。

また、ケンペニヒ家は「金獅子のエルツ(Eltz vom goldenen Löwen)」、リューベナッハ家は「銀獅子のエルツ(Eltz vom silbernen Löwen)」、そしてローデンドルフ家は「水牛の角のエルツ(Eltz von den Büffelhörnern)」との愛称があったそうです。

 

これ以来エルツ城は複数の所有者を持つようになり、それぞれの家系がいずれも城内に居住用の塔を建てました。城のほとんどが3つの家族らの居住部分で100以上の部屋があり、100以上の人々が住んでいたそうです。家族が増えるに従い増築も繰り返され、現在の形になったのは16世紀ごろとされています。塔は全部で8つあり、高さは30〜40メートルあります。

城の中に入っていきます!@tomogermany



1815年以来、エルツ城はケンペニヒ家の単独所有となっているそうですが、800年以上にわたって、この城は同名の一族によって所有され続けました。現在の所有者は第34代目で、彼は城に住んではいませんが、週に1回は訪れているそうです。

 

城の駐車場は城から徒歩15分ほど離れたところにあります。フランクフルトからは車で片道約2時間の道のりです。そこに車を停め、森の中を歩いていくと突然エルツ城が目の前に現れます。「本当にこんなところにお城があるの?」というくらい森を歩いた先に開けた土地が出てくるので、城の美しさに思わず、「わあ!」と声が出てしまうくらいでした。

(駐車場からは城までの有料バスも出ているので、歩くのが困難な方でも城の入り口まで行くことができます。)

森から急に姿を現したエルツ城。@tomogermany



城の内部はガイドツアーでしか見ることができず、写真撮影も基本的に禁止です。私たちが訪れたのは夏の休日。ドイツからの観光客以外にも多くの人々が訪れており、内部ツアーに参加するまでに並んで待ちました。ガイドツアーは約40分で、当時の姿のまま残っているさまざまな部屋や広間を見ることができます。残念ながら日本語のツアーはないのですが、ガイド紙があるのでツアーと合わせて読んでみるのも良いかと思います。

ガイドツアーでは内部をじっくり見ることができて楽しいです。@tomogermany



人目につかない森の奥にひっそりと建っているエルツ城は、春夏秋冬どの季節に行っても山々に映えて美しいので、ぜひ訪れてみてください!

 

もこちゃん

茨城県出身。幼いときにスイスに住んだことがきっかけで海外、特にドイツ語圏に興味を持つ。大学卒業後、ドイツ関係の仕事を転々とし、2018年からフランクフルトに在住。仕事後や週末の趣味はボルダリングやドイツ国内、ヨーロッパ各地の小旅行。

もこちゃん