ドイツ語の「話し言葉」
長く日本に住んでいるので、いまドイツで使われているスラングというかUmgangsspracheというか「話し言葉」に疎かったりする私です。
Umgangsspracheは「俗言」「俗語」「口言葉」「話し言葉」という意味です。
日本に住んでいて、日々「最新のドイツ語」に触れているわけではない私は、友達や本を通して、ドイツ語の俗語を知るとなんだか嬉しくなっちゃいます。
Hätte, hätte, Fahrradkette
先日ご紹介した書籍Das Leben ist zu kurz für späterにHätte, hätte, Fahrradketteという俗語というか言い回しが出てきました。
このHätte, hätte, Fahrradketteは日本語でいうと「たられば」といったところです。「もし、あの時に何々をしていたら、もし、もっと違う選択をしていたら・・・」などと今の現実とは関係のない【仮定の話】について考え込み後悔することをHätte, hätte, Fahrradketteと言うのですね。
HätteはHaben のKonjunktiv II(接続法第二式、仮定法過去)で、Fahrradketteは自転車のチェーン。自転車が壊れて、「あの時に自転車のチェーンをちゃんとしておけばよかった。もしもあの時、チェーンを交換していたら・・・」などと後悔している様子が浮かんでくるようです。HätteとKetteがReim(脚韻。つまりは言葉の語尾が同じ響き)だというのも、ポイント高しです!
このHätte, hätte, Fahrradketteは2009年か2010年に既にドイツのテレビコメディに出てきていたようですが、その後、2013年に司会者のSven Lorig氏が「SPDの選挙戦の失敗」について、政治家Peer Steinbrückに容赦のない質問をし、彼がHätte, hätte, Fahrradketteと答えたことで、この言い回しが一気に流行りました。
Luxusmaus
これも先日読んだ本に出てきた言葉です。Luxus(和訳:贅沢)に、女性の愛称のMaus(和訳:ネズミちゃん)で、Luxusmausでございますよ。
日本語に訳すと「贅沢が大好きな女」「お金がいくらあっても足りない女」「ブランド狂の女」といったところでしょうか?
まあでもLuxusmausという名詞があること自体、やっぱりドイツでは「消費は悪」ととらえる人が多いのでしょうね。そういう意味でLuxusmausは非常にドイツらしい言葉だと言えます。
でも日本に20年以上住み、「消費の楽しさ」を知ってしまった私は・・・消費が悪いことだとは全く思っていません。ドイツの人はmaterialistisch(和訳:物質主義的)という言葉をよく使いますが、消費を悪い悪いと非難するのは個人的にはあまり好きではなかったりします。理由は色々ありますが、Sie ist so materialistisch(和訳:彼女は物質主義的である)だとか、Sie ist so berechnend.(和訳:彼女は計算高い)など、ドイツでは「女性」とつなげて拝金主義や、物質主義、消費社会を非難することが多いのも一つの理由です。
女性が「私の趣味はショッピングです~」と堂々と言えちゃうニッポンは緩くていいですね。
女性の消費を“悪”とするなんて、そういう意味(“女性”にまつわる“お金”の話)では、やっぱりドイツはちょっぴり厳しい社会だと思うのでした。
Beratungsresistent
そうそう、友達がこのあいだ使っていたberatungsresistentというドイツ語も私のお気に入りです(笑)Beratungは専門家によるアドバイスや指導のこと、resistentは耐性があるという意味。つまり、どんなに専門家やプロの助言を受けても、全くそれを受け入れない「あまのじゃく」な人のことをberatungsresistentというのですね。ですので、はい、Er/sie ist beratungsresistent.というのは明らかに悪口です。
日本にも新しい俗語(ぞくご)が続々(ぞくぞく・・・ダジャレではありません)登場していますね。たとえば「親ガチャ」なんていうのもそうです。
新しくできた言葉について、好きな人も嫌いな人もいるでしょう。でも言葉は常に変化し続けているので、その流れを止めるのは難しいかもしれません。
かくいう私は立派な(?)中年で、日本語の新語や俗語に関しても決して詳しいほうではないのですが・・・新語が登場するたびに即「品がない!」とか「そんな日本語はない!」と否定してかかる「石頭」にはなりたくないものです。
サンドラ・ヘフェリン