【今週のドイツ語】Keinen Pfifferling auf etwas geben
秋の味覚といえばきのこ。日本では松茸が王座に君臨していますが、ドイツでこの時期みんなが楽しみにしているのはPfifferlingプフィッファーリングというきのこです。日本ではアンズタケと呼ばれていて、オレンジがかった濃い黄色が特徴です。クリームソースで煮込んだり、パスタに入れたりするのが定番メニュー。初夏のアスパラガスと並んで季節の到来を感じさせる食材の1つとなっています。
でも、人工栽培ができない上に、森に自生する数も年々減少しているため、商業用の採集は制限されていて、きのことしては結構お高いものでもあるんです。
ところが今日ご紹介する慣用句
Keinen Pfifferling auf etwas geben
カイネン プフィッファーリング アウフ エトヴァス ゲーベン
の意味はその正反対。
auf etwas gebenは「何かのために支払う、差し出す」という意味で、keinen Pfifferlingは「プフィッファーリング一つも」。全体を直訳すると「アンズタケ一本だって出さない」となり「何の価値も見出さない」「耳を貸そうともしない」というニュアンスになります。
Sie gibt keinen Pfifferling auf meinen Rat.
「あの子ったら私のアドバイスを聞こうともしない」
というような感じで使います。
この慣用句のバリエーションには
Keinen Pfifferling wert sein「アンズタケ1本の価値もない」というものや、やはり「~の価値もない」という意味でkeinen Groschen wert sein、keinen Pfennig wert seinというものも。Groschenグロッシェン、Pfennigプフェニヒともに、昔の通貨の最小単位。日本語で「びた一文払わない」という時の「びた(悪銭)」に近い表現ですね。つまり、それだけ価値のないものの仲間としてPfifferlingも扱われているということです。
高級食材だというのに、なぜこんな不当な扱いを受けているのでしょう。
昔は、ドイツで最もよく見かけるきのこはPfifferlingだったんだそうです。森へきのこ狩りに行くと言えば、採ってくるのは大抵Pfifferling。採れすぎてありがたみがなかったため、こうした表現が生まれたのだとか。時代は変わって、Pfifferling が希少になっても、言葉の表現としてはそのまま残っているのですね。
きのこの日のこの週末、お天気が良ければ山できのこ狩りもいいですね。でも毒きのこにはくれぐれも気を付けて。きのこガイドの本をお忘れなく。
Text by Kumiko Katayama
【今週のドイツ語】
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