『コロナ時代のドイツは芸術や文化をどう守るか』
今回のテーマは『コロナ時代のドイツは芸術や文化をどう守るか』についてです。
このテーマについて触れる前に、まずはコロナ禍においてドイツ政府が芸術や文化に関わる人達を対象にした経済支援パッケージについてどうでもいいような話から始めてみたいと思います。
コロナ禍においてドイツ政府が設立した経済支援パッケージには様々なものがあり、芸術や文化に関わる人達を補助していこうという目的で設立されたものが多数ありました。
その中のひとつに『Neustarthilfe』という支援パッケージがあります。
これについて少し触れていきたいと思います。
2021年から始まったこの支援パッケージをあまりご存じでない方もおられると思いますので簡単に中身を説明すると、政府が決めたコロナ規制において活動自粛を余儀なくされた芸術や文化に関わる個人や団体に対して毎月決められた期間、一人当たり最高で1500ユーロを支給しようというものでした。
この支援パッケージについての目的は先ほども書いたように規制対象である個人や個別の企業に対して、具体的に経済的な援助をしていこうというものです。
活動の目処を絶たれた人達の生活だけは最低限守っていこうというもっともらしい趣旨だったのではないかといえると思います。
他の支援パッケージと同様にこの支援パッケージについても賛否両論があり、すでに設立されたパッケージの不完部分が補われるのではないかという期待がありました。
その支援パッケージについて目に止まったのは、このパッケージのネーミングセンスの無さにについてです。
『Neustarthilfe』を直訳してみると『New Start Help』『新しいスタートの支援』という解釈で理解していいのではないかと思います。
ピンチをチャンスに変えられなかった人が圧倒的に多かったこの時期、芸術や文化に関わる人々の大半の思いは当時ジレンマ、鬱積ではなかったかと思います。
継続への支援が必要だったこの時期、お粗末な印象を与えたこの名前はどこか軽率に見えてしまいます。
本当に軽率かどうかを確かめる為に他の支援パッケージと見比べてみても、どこか違いが目につきます。
国内外の様々なメディアを当時ポジティブなニュースとしてジャックしたことからも言えることは、芸術や文化に手厚いドイツという国内外からの評価を不動のものにしたという点において、結果的にドイツ政府は大きな成果を挙げ、またこの支援パッケージのインパクトは非常に大きかったといえると思います。
屈強なドイツ人に結果を突きつけられるとスタジアムを掃除して帰ることしかできないので、とりあえずネーミングのセオリーはインパクトが肝だよと言っておくことにしたいと思います。
そのドイツ政府の関わるコロナニュースについて今更ながら調べてみると、医療分野や科学分野、社会分野において感染した人のその後の影響やコロナ感染が人々にどういう影響を及ぼしたかについて、専門家や研究者による検証結果がトピックで紹介されている記事が目につきます。
専門家や研究者がコロナについて検証しているのは、またあるかもしれない世界的な伝染病流行に備え今回のコロナ禍から教訓を得ようとするものだと思います。
アメリカやドイツ、イギリスなどの研究機関からは興味深いレポートが発表されており、これらの分野においてコロナは引き続き現在進行形のテーマであるといえると思います。
何を言いたいかというと、『コロナ時代のドイツは芸術や文化をどう守るか』についての議論があったことを考えると、『コロナ時代のドイツは芸術や文化をどう守ったか、その影響や効果はどれぐらいのものであったのか』についての議論や検証が他の分野と比べて極端に少ないということです。
段階的にコロナ規制が緩和されてきた中で世の中全体が少しずつ以前の状態に向けて動き出しており、芸術や文化に関するトピックは現在進行形のものが目につきます。
他の分野と比べてみて芸術や文化が持つ複雑性やダイナミック性を数値化したり、統計化したり、何を定義して成果指標を測るのかが難しいという特徴が検証の少なさに影響しているといえます。
コロナは既に終わったものと取れる記事や情報を見て思うのは、コロナ禍において可視化された芸術や文化の脆さを補完出来るかもしれない要素を見つけるには、まだ現代の人間には時間が必要なのだろうということです。
自分も世の中の流れに乗ってコロナ以前のように現場に戻り、DJをし、お客さんや仲間と一緒に音楽を聞き過ごす時間を過ごしていく中で、検証そのものの存在の重さを忘れ全てがどうでもよくなる気分に支配されるのです。
世の中や社会を動かしていくためのツールのひとつに過ぎない脆さが同居する芸術や文化の領域はこうだ、未来の音楽はこうだなどと言ってみたところで、そんなもの一体何なのか誰にも分からないことを分かったような気になって語ることの無意味さは、人間の存在の脆さも表しています。
現在の芸術や文化が活動する領域を超えた新しい価値観と概念を持ち合わせた芸術の領域が誕生するとしたら、今のところ現代の人間は不在の世界になるだろうと現時点でいえると思います。
最後にこどもの日の新しい行事として、こどもが薦めるおすすめのマンガや本を教えてもらい一緒に読み始めてみようというのが自分の提案になります。
次回のテーマは『先生の野望と目的とは』です。