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ブドウ畑が広がるカイザーシュトュール

ハウプト通りとケーニヒスシャフハウザー塔@tomogermany

ブドウ畑が広がるカイザーシュトュール

皆さんこんにちは。

 

ドイツも暖かい日が多くなり春がきたかと思えば、4月の初旬、フランクフルトでは雪が降りました。

ドイツ語では、「April macht was er will(4月は自分のやりたいことをする)」という言い回しがあります。4月は晴れの日が増えて暖かくなったかと思えば、急に寒くなったり今回のように雪が降る、そんな4月の天気をさして使います。日本語の三寒四温にも似ていますね。これから日が伸びて暖かく外に出るのが楽しい時期が来るかと思うと、ウキウキします。

 

さて、今日はドイツ南西部に広がるブドウ畑とその周辺の街を紹介したいと思います。バーデン=ヴュルテンベルク州はフライブルクを州都とし、フランスとスイスと国境を接している州です。この州には「Kaiserstuhl(カイザーシュトュール:皇帝の椅子)」と称される丘が広がっており、一面ブドウ畑となっています。西側のフランスにはヴォージュ山脈があるため、雲がそこに留まり「ヴォージュの雨影」と呼ばれる雨が降ります。日照時間は長く、南西からローヌ渓谷を越え山脈の隙間を通って暖かい空気がこの地方に流れ込むなど、ブドウ栽培に適した気候となっています。ドイツでも「最も暖かい場所」と呼ばれているそうです。

カイザーシュトュールの景色@pixabay



カイザーシュトゥールという名前の由来は。オットー3世が994年に現在のSasbach(ザスバッハ)と言う街の近くで「宮廷の日」と言う行事を催したことにあると言われています。この宮廷の日以降、山系全体が「Königsstuhl(ケーニヒスシュトゥール:王様の椅子)」と呼ばれるようになりました。その後996年にオットー3世が皇帝に即位すると、「ケーニヒスシュトゥール」は「カイザーシュトゥール」と、「王様」から「皇帝」に名称が変わったとされています。

 

私はある夏の日、フライブルクに住む友人を訪ねた際に、カイザーシュトゥール近郊をドライブしたことがあります。この丘周辺には小さな街や村があり、多くの散歩道やハイキングコースがあります。辺り一面何段にも連なるブドウ畑が広がる光景はとても美しいものでした。

 

そのカイザーシュトゥール近郊の街の一つ、Endingen am Kaiserstuhl(エンディンゲン・アム・カイザーシュトゥール)は、1万人ほどが住んでいる小さな街です。

エンディンゲンの街並み @tomogermany



862年に初めて文献に記載されたこの街は、15世紀には一時自由帝国となりました。また1751年には、ヨーロッパ最後の魔女狩りの裁判のひとつがエンディンゲンで行われたと言われています。Kleinstadtperle(クラインシュタットパーレ・小さな町の宝石たち)と称されるこの街は、第二次世界大戦の戦果を逃れたため、400年や500年もの歴史を持つ木材建築の家々が今なお立ち並んでいます。

 

そしてエンディンゲンの市民は、伝統をとても大切にしているそうで、昔からの習慣が今も残っています。クリスマスイブの真夜中に教会の鐘が鳴るとき、エンディンゲンのたくさんの井戸から流れる水を汲んできて、「Heiliwog(ヘイリウォグ)」として飲んでいました。

エンディンゲンの人々は、持参したワインジョッキで教会の鐘が12回鳴る間にこの「ヘイリヴォグ」と呼ばれる井戸水を飲むそうです。この鐘が鳴ってる間だけ水が聖なるものとみなされるという言い伝えがあるのです。「Heiliwog – Gottes Gob, Glick ins Hüs – Unglick nüs!“ (Heiliwog – Gottes Gabe, Glück ins Haus, Unglück raus)『ヘイリウォグ ー ゴット・ゴブ、グリック・インス・ヒュースーウングリック・ニュス!(Heiliwogー神の贈り物、家に入るのは幸運、外に出るのは不運!)』」



エンディンゲンの旧市街には、東西にハウプト通りと呼ばれる中央通りがあり、いくつかの通りで市街が丸く囲まれています。石畳のハウプト通りの入り口にはKönigschaffhauser Tor(ケーニヒスシャフハウザー塔)が人々を迎え、左右には小さなお店が立ち並びます。

ハウプト通りとケーニヒスシャフハウザー塔@tomogermany



こういった塔はドイツの旧市街にはよく見られますよね。

「いらっしゃい、これからおとぎの街が広がりますよ。」と出迎えられている気分になり、私は塔を通るときいつも心が躍ります。

 

町の中心にあるMarktplatz(マルクト広場)には噴水があり、1500年代に建築された旧市庁舎が見受けられます。この建物は現在は郷土博物館になっており、工芸品やブドウ栽培、街の歴史などを知ることができます。

奥に見えるギザギザ屋根の建物が旧市庁舎です。@tomogermany



 

マルクト広場と噴水@tomogermany



 

フライブルクから鉄道も通っており、駅は旧市街のすぐ北側に位置しています。夏の間、この辺りではRebenbummlerと呼ばれる観光列車がカイザーシュトュールのブドウ畑を走ります。列車内では地元のワインとともに雄大な景色を楽しむことができます。



エンディンゲンはとても小さい街です。

暖かい日にブドウ畑のハイキングも兼ねて、訪れてみてはいかがでしょうか。

@tomogermany

もこちゃん

茨城県出身。幼いときにスイスに住んだことがきっかけで海外、特にドイツ語圏に興味を持つ。大学卒業後、ドイツ関係の仕事を転々とし、2018年からフランクフルトに在住。仕事後や週末の趣味はボルダリングやドイツ国内、ヨーロッパ各地の小旅行。

もこちゃん