ドイツ情報満載 - YOUNG GERMANY by ドイツ大使館

『ベルリンアンダーグラウンド』

『ベルリンアンダーグラウンド』

今回から半年の契約で連載をすることになった田中フミヤといいます。
サッカーに例えると、冬のマーケットでレンタル移籍してきた外国人選手という位置づけですが、おそらく期待通りの働きが出来ないお荷物助っ人としてここを去っていくのではないかと思います。
短い間になるかもしれませんが、お付き合い頂けると幸いです。

まずは今回の執筆経緯について少し触れておきたいと思います。
依頼があったのは在日ドイツ大使館の広報担当者からで、依頼内容にオンライン上でリサーチしたところ見つけたと書いてあります。
ドイツでアートや音楽活動をされている方を見つけるには、自分でも現在の状況を知ることが重要ではないかと思い、色んなキーワードで検索してみたところ、華々しい経歴や活動をされているアーティストやミュージシャンがいることを知ることができます。

目につくのはクラシック音楽や現代アートに特化した方々で、こういう方々がドイツ社会に根ざし、日本とドイツの文化交流の架け橋を担ってきたのだろうと想像できる一方で、どこかとっつきづらい、強いていうならばお堅いイメージもつきまといます。

少し幅を広げて見ていくと、ストリートアートやクラブカルチャー、ダンスミュージックやバンドといったサブカルチャーに特化した方々がいることも知ることができますが、こちらはこちらで活動としてどのように成立しているのかが分かりにくく、遊んでいるだけにもみえるどこか軽いイメージもつきまといます。

自分も例外ではありませんが、アートとも言える音楽活動とも言える、よく分からない存在を出発点としたDJという立場を他人に説明する際に、適当な言葉を持ち合わせていない場合はふわっとした理解で処理されることになり、分からないままふわっとした存在で認識され続けます。

そもそもDJを説明するのに適当な言葉がまだ見つかっていないと言ってしまえばそれまでですが、世の中には分からないまま存在する見えない世界というのが確かに存在していて、検索キーワードに引っかかってこない人やもの、世界が現実として存在しています。
DJという立場ももともとは見えない世界に存在していたという仮説を立ててみると、今ではDJとはどういう活動なのかをなんとなくでも理解していただける領域に来ている現実が証明しているように、クラシック音楽や現代アート、ダンスミュージックやテクノといったもののほとんど全ては、名前のついていない、カテゴライズされない、遊びに見えてしまうものが出発点であったと言えると思います。

この仮説が成り立つとするなら、実際に今こうやって自分が原稿を書いている間も、何か面白いアートや音楽が想像もつかない状態や形態で活動をしていると想像することが出来、それらはまだ名前を持っていない見えない世界に存在しているという仮説も成り立つと思います。

これはオカルトの話でもなんでもなくて、まだ見えない・見えてない世界に面白い何かがどうやらあると考えて良さそうだということです。

我々は見たいものを見るので、見てないものはまだ見えない・見えてない世界に存在しています。
まだ見えない・見えてない世界に手が届かないのは、見たいものを千差万別する時点で個別のストーリーが作られるところにたどり着くからで、見えない・見えてない世界が存在していることをなんとなくでも了解することを出発点にして、自分が見てる世界とどう向き合うかを実践していくことが、まだ見えない・見えてない世界と付き合う出発点になるのではないかと思います。

ここにたどり着いた読者にとってはDJという存在がまだまだ分からないと思いますが、自分にとってもDJとは何かがよく分かっていません。
分からないということでいえば最後に自分の原稿がそれを体現しているということと、自分に依頼をしてくれた広報担当者は既に居ないということも付け加えておきたいと思います。

お気に入りの作品を紹介したいと思います。

Bibo/Mini Club So36

冒頭の写真です。

次回のテーマは「コロナ時代のドイツは芸術や文化をどう守るか」です。

田中フミヤ

DJ,ミュージシャン 2022年現在ベルリンに在住。 https://www.fumiyatanaka.com/biography/ Facebook Instagram @fumiyatanaka.101

田中フミヤ