ドイツ情報満載 - YOUNG GERMANY by ドイツ大使館

日本では話しやすいけれど、ドイツでは話しにくいこと

日本では話しやすいけれど、ドイツでは話しにくいこと

ドイツと日本を比べながら、色々と「あんなところが違う、こんなところが違う」と違いを見つけることを楽しみにしているワタクシですが、

 

こう見えて「違い」が目についても、なかなか発信するのが難しいなと感じる内容のものもあります。

 

何年も前から、違いに気付いていながら「発信するのはどうなのかな・・・」と中々書けずにいました。でも今回は思い切って書いちゃいます!

 

・・・で、肝心のその内容なのですが、、、

 

日本のテレビを見ていて驚かされるのが、健康関連の商品のCMになると、女性が登場して「私は長年便秘に悩まされてきましたが、これを飲んでスッキリ!」だとか「一度にドサッと出るので爽快感があります」などと堂々と語っていることです。

 

「以前は1週間に一度しか出ていませんでしたが、これを飲んでから毎朝ドッサリ出ます」だとか、「以前は力(りき)むのが苦しかったですが、これで楽に出ます!」などと内容が詳細に及ぶことも少なくありません。

 

「便秘解消のための商品なのだから、こういう詳細を語る人がCMに出てくるのが当たり前なのではないの?」と思われる方も多いのでしょうが・・・日本では、日常生活でも女性同士で便秘の話が堂々とされていることが多い印象です。ドイツ人としてはビックリさせられます(笑)

女子会などで誰かが「ストレスで便秘がち」だと言うと、一緒にいる人が「私もそうなの!!」と共感したり、「何々を食べると便秘にいいみたいよ」といった解決案に向けて盛り上がったりと、こと便秘になるととにかく話が尽きない印象です。

 

それで実はこの雰囲気を私は面白いと感じながら、嫌いじゃないのです。

 

というのもドイツではこと便秘、いえ「便」関係については、非常に話しにくい雰囲気があるのですね・・・

 

ドイツでは「便や便秘」の話をするぐらいなら、性的な話のほうがまだオッケー・・・という印象を私は受けます。

 

ドイツでは「便のことを話すのは幼児に限ったこと」…と思われているフシもあります。

 

私はドイツで育ったので「語らないこと」が「マナーとして当たり前」だと思っていたのですが、日本に来て皆さんあまりにも堂々と当たり前のように便秘の話をするので、良い意味でビックリしました(笑)

 

日本では道を歩けば、薬局の前の貼り紙に「便秘の方、ご相談ください」なんて書いてあったりしますしね。

 

そんなドイツとニッポンの「言いにくい違い」について色々と考えていたところ、子供の頃に親が読んでくれた日本語の絵本のことを思い出しました。

 

この本を読んだ(というか親が読んでくれた)のは私が5歳ぐらいの時のはずですが、内容にかなりインパクトがあったのか、今でも絵本に書かれた内容を思い出すことができるのです。それは「ひとこぶラクダはひとこぶウンチ、ふたこぶラクダはふたこぶウンチ」そしてページをめくると「・・・・これはウソ!」と書かれたとっても楽しい絵本でした。

 

そこで気になってインターネットで検索をかけてみたところ・・・・ありました!その名も「みんな うんち」という本です。


 

思い出の絵本を発見できたことが嬉しくてドイツ人の友達に「でも「みんな うんち」なんてタイトルはドイツ語には訳せないよね?もしドイツ語に訳したら、うんちの部分はどう訳すんだろう・・・・?」なんて疑問をぶつけてみたところ、友達はこう言いました。

 

「うんちはHäufchenと訳すんじゃないかなあ」・・・さすが日本語もドイツ語もバッチリの我が友達。すごいなあ。

 

それにしてもドイツ人は日常生活の中での些細な失敗に“Scheiße!“と口癖のように舌打ちをするのに、いざ真剣なウンチの話になると、皆さん口をつぐむのが何とも面白いと感じます。

 

先ほど5歳で読んだウンチ本のインパクトが強かったと書きましたが、最近読んで感動した本もやはり「出すこと」をテーマとしています。

 

頭木弘樹さんが書いた「食べることと出すこと」(医学書院)という本です。難病を抱える著者が「出すこと」つまり排泄についてご自身の経験を書かれています。「目から鱗」の情報がたくさん含まれていて、この本の虜になった私は図々しくも書評を書かせていただきました。

 

人間にとって欠かせない「食べること」と「出すこと」。前者について語られることは多いのに、後者については文化によって語りやすかったり(日本)語るのがむずかしかったり(ドイツ)するのが面白いですね。

 

新型コロナウイルスの収束がまだまだ見えないなか、「健康」というものについて考える時間も増えました。皆さんも健康に気をつけてお元気で。また来月お会いしましょう。

 

サンドラ・ヘフェリン

サンドラ・ヘフェリン

ドイツ・ミュンヘン出身。日本歴19年、著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ) 、「ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ』(原作: サンドラ・ヘフェリン、漫画: ヒラマツオ/KADOKAWA)、「『小顔』ってニホンではホメ言葉なんだ!?~ドイツ人が驚く日本の「日常」~」(原作: サンドラ・ヘフェリン、漫画: 流水りんこ/KKベストセラーズ)」など計11冊。自身が日独ハーフであることから、≪ハーフはナニジン?≫、≪ハーフとバイリンガル教育≫、≪ハーフと日本のいじめ問題≫など「多文化共生」をテーマに執筆活動をしている。ホームページ 「ハーフを考えよう!」 を運営。趣味は時事トピックについてディベートすること、カラオケ、散歩。

サンドラ・ヘフェリン