【今週のドイツ語】man muss auch gönnen können
man muss auch gönnen können
マン ムス アオホ ゲンネン ケンネン
今週のドイツ語は、レーペル大使が一番好きなドイツ語慣用句をご紹介します。
Mer muss och jünne könne! メア ムス オッホ ユンネ ケンネ!
…!!?! これ、ドイツ語?と思った方…はい!これはれっきとしたライン地方の方言です。ケルンやその周辺のライン川流域で話される言葉です。
標準ドイツ語にすると
Man muss auch gönnen können マン ムス アオホ ゲンネン ケンネン
となります。こちらで説明していきましょう。
gönnenという言葉がこの表現の主役で「喜んで認める、許す」という意味があります。manは一般的な人を指す形式上の主語。mussは「~しなければならない」、auchは「~も」、könnenは「できる」という助動詞です。
そのまま訳すと「心から認めてあげられるようにならなければ」となり、ライン地方でよく使われる慣用句とされています。何を認めてあげるのでしょう?
一般的に、gönnenには、努力を認めてその結果何かを許すという意味があり、例えば
Ich gönne mir ein Stück Kuchen! 「頑張った自分にケーキのご褒美!」
というような言い方ができます。これを名詞にした #GönnungというハッシュタグもSNSでよく見かけます。
でも、この慣用句にはもっと深い意味があって、そこには「ねたみや嫉妬を抱かずに相手を認める、祝福する」というニュアンスが含まれています。相手が自分よりも幸せだったり成功しているように見えても、それをうらやむのではなく、素直に祝福してあげましょう、という意味が込められているのです。
スポーツで、ライバルと対戦して負けた時に、自分を打ち負かした相手に対して、心から「おめでとう」と言うような気持ちですね。または、自分も狙っていた地位に昇進した同僚に、本当に良かったね、と言ってあげられること。なかなか難しいけれど、そうなれたら人として一つ成長できた証しになるのではないでしょうか。
なぜライン地方でこのような表現が生まれたのか、はっきりとは分かりませんが、この地方は敬虔なカトリック教徒が多く、ねたみを禁じる教えがこのような言い回しと結びついたのではという説があります。また、ライン地方の人たちはおおらかで、上下関係なくケルシュ(ケルンの地ビール)で乾杯し、人と比べずに節度を保って自分の役割を果たす人が多く、そんな彼らの気質を良く表している表現だと言う人もいます。
ところでgönnen がライン方言でjünneになっているのは、この地方では単語の最初のg(グ)がj(ユ)と発音されるからなんです。他にもgut(グート、良い)がjut(ユート)に、gestern(ゲスターン、昨日)がjestern(イェスターン)になったりします。興味のある方は、ケルンのロックグループ、Bläck Fööss の歌詞などご参照ください(非常に難解です…)。
©ドイツ大使館 / Text by Kumiko Katayama
今週のドイツ語
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