ニッポンとドイツ 「食事のマナー」Part2
前回に続いて今回もまた「食事のマナー」についてです。
日本とドイツの「おもてなし」について思い出すのは、かつてミュンヘンに住んでいた日本人女性が話していたこと。女性の夫も日本人で、夫婦ともどもミュンヘンに数年滞在していましたが、ある時、ご主人の仕事関係者であるドイツ人を自宅に招き「おもてなし」をすることになったのだとか。
「せっかくだから和食を食べてもらいたい」「どういうものが口に合うのかしら?」などとかなり悩んだと言います。
でも彼女が一番悩んだのはこれです。
「ドイツのマナーについて調べていたら、ドイツではお客さんを家に招いて食事をする場合でも、食事の最中に妻がキッチンと食卓を頻繁に行ったり来たりするのは失礼だということが分かったの。基本的にはずっと食卓に同席して会話をするのがマナーだって。それを知ったのは、主人の仕事関係者であるドイツ人が家に来る数日前のこと。でもちょっとしたコース料理を出すと、特に和食の場合、私が途中で席を立つのは避けられないのよね・・・」と彼女は語りました。
悩んだ末に彼女は「席を立つ回数と時間を最小限に抑えるために、事前に大量に作り置きすること」にしたのでした。
ドイツ人を「おもてなし」するディナーは無事に終わり、「美味しく食べてもらえてホッとした」と語る彼女でしたが、同時に「あんなに事前に作り置きをするのは本当に疲れたわ。」「もてなす際に、キッチンと食卓を行ったり来たりするのを最小限に抑えるのは、事前の準備が本当に大変すぎる」とも語っていました。
自宅でのおもてなしの最中、彼女が次の料理の準備をするために席を立つと、彼女を気遣いドイツ人のお客さんが会話を何気なく中断し、彼女が戻ってきてから会話を再開させることが何回かあったそうで、「とても紳士的だけれど、やっぱりちょっと疲れたわ」と笑っていました。
これなど、まさに「食事をする際には全員がそろう」のを重視するドイツらしいエピソードですね。
ただドイツでは「美味しい料理にこだわる」よりも「一緒に会話を楽しみたい」と考える人が多いかもしれません。だからドイツの家庭ではお客さんを家に招いたりホームパーティーをしても、必ずしも料理を出すわけではありません。ドイツのホームパーティーだったら、お酒、Salzstangeなどのスナック、ちょっとしたパン類やパテなどがあればそれで大丈夫です。そういった意味で準備に手間暇はあまりかからないわけです。
ちなみに最近は少なくなってきているものの、少し前までよく見られた「家の主婦に「おかわり!」って言えば、家の主婦が茶碗にご飯をよそってくれる」なんていう光景も「日本ならでは」かもしれません。
ただ家長制度はドイツにもないわけではありません。正確に言うと「最近」なくなってきているだけです。ひと昔前は「子供がお腹すいていても、お父さんが仕事から帰ってくるまで、子供に夜ご飯を食べさせない」というようなことが普通にありました。「家長であるお父さんが帰ってくるまで子供は我慢」というような世界がドイツにもあったわけです。まあ今でも残っているところには残っていますが。
・・・というわけで、次回は「食事のマナーPart3」です。お楽しみに。
サンドラ・ヘフェリン