魚は生よりスモーク!?種類豊富でおいしいドイツの燻製魚
ドイツでは鮮魚の選択肢は限られてしまうもののスモークした魚は種類豊富。魚好きな日本人としては積極的にトライしていきたい。今回はドイツの燻製魚事情をお伝えします。
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あけましておめでとうございます。
新しい年がみなさんにとってよい年でありますように。
まだまだ厳しい日々が続きそうですが、今年も食べる楽しみを模索し、お伝えしていけたらと思っています。
どうぞよろしくお願いいたします。
2021年最初のテーマは、「魚」
ドイツ料理と聞くと、きっと誰もが肉料理を思い浮かべ、魚をイメージする人はまずいないと思います。実際、ドイツで一般的に出回っている鮮魚の種類は限られますし、肉類に比べると割高に感じる食材。
例外として、海に面する北部の港町では新鮮なシーフードが豊富です。
>>参考記事【ドイツ郷土料理図鑑・北ドイツ編】
ドイツではそもそもお魚屋さんというものがあまりなくて、大きめの都市の市場や大型高級スーパーの中で見かける程度です。どこの町でもある普通のスーパーで手に入る生魚といえば、パック入りの鮭(Lachs)くらい。最近はスーパーでも普通に「SUSHI」が売られるようになったとはいえ、ドイツ人のなかには、生まれてから一度も魚介類を食べたことがないという人や、目の前にあったとしても生魚には手を付けない(食わず嫌い)という人も少なくありません。
そんなドイツでも、燻製された魚(Räucherfisch)の種類は豊富です。
サバ(Makrele)やニシン(Hering)、マス(Forelle)などはどこのスーパーでもたいてい売っていますし、品揃えのよい大型スーパーや業務用スーパーになると種類はぐっと増えて、あれもこれもスモークしちゃうの!?とびっくりするくらい様々な燻製魚が並んでいることも。私はドイツで初めてスモークサーモン以外の燻製魚を食べたのですが、お魚って燻すとこんなに旨みが爆増するんだ…!と感動しました。まさに珍味と呼ぶにふさわしいおいしさです。
ドイツの燻製魚は、冷蔵庫がない時代から保存食として発達してきた、長い歴史がある食文化。海が少ない地域ならではの、先人の知恵なのですね。
海に面した北部ドイツでは、ウナギや海老の燻製をみかけることもあります。
ウナギの燻製。かなり脂がこってりしていて、好き嫌いが分かれる味です。
北ドイツの港町キールでは、町の名を冠した「Kieler Sprottenキーラー・シュプロッテン」という、小さなニシンの薫製が名物。
キーラー・シュプロッテンのオイル漬け缶詰は、ドイツ全国のスーパーで買うことができます。ワインやビールのおつまみにぴったり。ごはんのおともにもなります。
ドイツでポピュラーなのがサバの燻製。写真下にあるのはお頭付きのサバですが、身だけがパックされたものはどこのスーパーでも手に入り、そのまま使えて便利です。写真左上:Rotbarsch(和名はタイセイヨウアカウオというメバルの仲間)は身がぷりっとした白身魚。写真右上:Rogen vom Dorsch(たらこ)。日本のたらこよりずいぶん大きく、魚屋さんでは切り売りしてもらえます。中はねっとりとした半生の状態。
スモークすることで旨みが凝縮された燻製魚は、そのままでおかずの1品にもなりますし、ちょっと手を加えて様々なアレンジが楽しめる便利な保存食。ドイツではパンやポテトと一緒に食べるのが一般的なようですが、ごはんとの相性も抜群で私はもっぱら和食としていただいています。大根おろしを合わせるととてもおいしいですよ。
ごはんとお味噌汁で燻製魚定食。しみじみおいしく、ごはんおかわり必至です。写真のお魚はHeilbutt(オヒョウ)。ほろほろと柔らかい白身魚で、繊細な味わいです。オヒョウよりも身がしっかりとしたRotbarschもお気に入り。
ごはんに燻製魚と薬味をのせて、だし茶漬けに。燻製魚は日持ちがするので、ちょこっと食べたい時にも便利です。RotbarschとRogen von Dorsch(たらこ)のW燻製のせ。
パスタの具にも。写真はたらこスパゲッティ。サバや白身魚の燻製は、にんにくたっぷりのペペロンチーノ風にしてもおいしいです。
在独邦人のみなさんのなかには、日本のように魚が手に入らず魚ロスに陥っている方も多いと思います。そんな時は、ぜひ燻製魚を試してみてください。
自由に日独間を行き来できるようになるまで、スモークで乗り切りましょう!
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