ドイツ情報満載 - YOUNG GERMANY by ドイツ大使館

3カ月ぶりのドイツ国内移動(前編)

3カ月ぶりのドイツ国内移動(前編)

6月後半、久々にドイツ鉄道に乗って長距離移動をし、バイエルン州のアウクスブルクからベルリンに行ってきました。ドイツでもコロナ危機が始まってから3カ月が経過、新規感染者数の減少を受けて社会生活制限が徐々に緩和され、私がベルリンに出かけた6月17日は、ちょうどドイツ国外への移動制限が緩和されてEU域内での旅行が可能になった週でした。今回はその旅行記を綴ってみたいと思います。

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朝7時のニュルンベルク中央駅のホーム。 通常ならば出勤時間なのに、人気が少なかった



 

3カ月続いたロックダウン

3月半ば以降、ドイツでは新型コロナウイルス対策のために学校、飲食店、劇場などの娯楽施設が次々と閉鎖・営業停止になり、WHOの「パンデミック認定」を受けて3月23日には接触制限が発令され、本格的なロックダウンが始まりました。

私の住んでいるバイエルン州は、ドイツの中で最初に感染者が見つかった州でもあり、感染者数は国内16州の中で常に上位に位置してきました。そんな緊張感あふれる地域に在住している上、フリーランスでもともと在宅率80%くらいの仕事に従事しており、なおかつ小心者の私は、この3カ月間というものほとんど自宅に引きこもり、優良StayHome市民としての日々を送っていました。家の外へ出るのは1日1回、歩いて5分程度の近所のスーパー及びパン屋に買い物に出かける時のみでした。

この時期、ほぼ世界中の人が似たような状況に置かれていたと思いますが、さすがにインドア派の私でも、この状態が3カ月続くと、今まで経験したことのないタイプのストレスが蓄積してくるのを感じました。

そのため、3カ月ぶりのバイエルン州からベルリンへの600kmの移動は、不安もある一方で心躍るものでもありました。そんなわけですので、うっすら浮かれ気味の人が書いている旅行記だと思ってご理解ください。また、ドイツ国内のもろもろの規制や状況は時々刻々と変わっていますので、あくまでも6月後半の話としてお読みください。

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ドイツ鉄道は、車内だけでなく駅構内でのマスク着用必須。ニュルンベルク中央駅構内にて



 

ドイツ鉄道の乗車率は?

ドイツ鉄道のチケットを取ったのは、旅行の1週間前でした。リアルタイムの情報を知りたかったので、券売機ではなく人がじかに応対してくれる窓口でチケットを購入しました。チケットカウンターでは窓口職員とお客の間に透明板が設置され、ここを訪れる人はマスク着用を義務付けられていました。

ドイツ鉄道がコロナ対策として実施している規則は、電車内および駅、プラットホームで職員も乗客も口と鼻を覆うマスクを着用すること。しかし、これを守らなかった場合の罰金や、強制降車などは規定されていませんでした。また乗車率制限も厳密ではなく、ICE(日本の新幹線に相当する高速特急)などの長距離移動でも指定席予約義務はありません。

それではどのように車内のソーシャルディスタンシングが保たれるのか?

指定席予約率が50%を超えると、ドイツ鉄道の予約アプリなどで「満席」のピクトグラムが表示されるという説明でした。それ以上乗車率を押し上げるかどうかは利用者各自の判断に委ねられるというわけです。

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ドイツ鉄道の予約アプリに表示される満席表示のピクトグラム。 コロナ禍を受けて、乗車率50%が「満席」と表示されるようになった



 

これらの説明を聞いたとき、「えー!それじゃ私の真横に、だれかが座ることがあるかもしれないってことですか?」と思わず反応してしまったのですが、「そういうこともあるかもしれませんね、ま、乗客がいればの話ですけど」という具合の玉虫色の返事が返ってきました。

しかし実際に乗車してみて、窓口職員の人が言っていたニュアンスが理解できました。行きも帰りも、車内はガラガラだったのです。

往路は水曜日の早朝アウクスブルク発、ニュルンベルク乗り換えのベルリン行きICEだったので、それほど驚きはなかったのですが、復路は金曜日の午後3時台ベルリン発アウクスブルク行き。通常時ならば週末旅行や、別の町に住む家族や恋人を訪ねる人たちで電車がいっぱいになる時間帯です。往路の乗車率はざっくり10%、復路は30%くらいという印象でした。

 

6月17日(水)午前中のニュルンベルクーベルリン間の車内。ひとつのコンパートメントに乗客が10人いなかった時間帯も

6月17日(水)午前中のニュルンベルクーベルリン間のICEの車内。ひとつのコンパートメントに乗客が10人いなかった時間帯も



 

州境を超えて移動する

アウクスブルクからベルリンまでの距離は約600km。日本でたとえるならば、東京から岡山まで移動する距離に匹敵します。バイエルン州から旧東ドイツ地域のテューリンゲン州、ザクセン=アンハルト州、ザクセン州、ブランデンブルク州を通過してベルリンに至るというルートですが、近年この区間は開発され、最速の場合は4時間半で目的地に到達することができるようになりました。

バイエルン州からテューリンゲン州へ向かう車窓から見える景色。赤いケシの花が野原に咲く風景が広がっている

バイエルン州からテューリンゲン州へ向かう車窓から見える景色。赤いケシの花が野原に咲く風景が広がっています



ひさびさの遠出にうかれて、お弁当にサンドイッチ作りました

ひさびさの遠出にうかれて、お弁当にサンドイッチ作りました



この中で今回、個人的にじゃっかんの緊張感をもって通過した地域はエアフルトを州都とするテューリンゲン州でした。テューリンゲン州は、他の旧東ドイツ州同様に感染者数が少なく、6月17日時点での感染者累計数は3188人(ドイツ全体では18万7184人)、過去7日間の新規感染者数も人口10万人に対して3.3人でした(ロベルト・コッホ研究所調べ)。州政府間で取り決められた7日間の新規感染者数の警戒水域は、10万人に対して50人。これをはるかに下回っていたため、州独自の緩和措置に踏み切ることを早々に発表。マスク着用やソーシャルディスタンシング(ドイツ国内では1.5m)が「義務」ではなく「推奨」へと緩和されたばかりでした。そのため、テューリンゲン州と州境を接しており、なおかつ感染者数の多いバイエルン州(6月17日時点での感染者累計数は4万7710人)からすると、無法地帯へ足を踏み入れるかのような緊張感があったのです。

ただ通り過ぎるだけなのですが、エアフルトから乗ってくる乗客は、マスクも着用せずにうかれてやしないだろうか?などと、妄想がかき立てられたのです。しかし、決してそんなことはありませんでした。ドイツ鉄道のルールは全国統一なので、エアフルト駅のホームでもマスク着用は守られていました。

むしろ、地域差を如実に感じたのは、ベルリンに到着した時でした。(後編に続く)

エアフルト中央駅を通過中

エアフルト中央駅を通過中



エアフルト中央駅のホームでも、マスク着用率は100%でした

エアフルト中央駅のホームでも、マスク着用率は100%でした



*6月17日時点での感染者数について、追記しました(6月21日)

見市 知

みいち・とも。東京都出身。ライター、ドイツ在住。東西ドイツ統一の年に渡独、ベルリンの東側に1年住む。この時、統一直前の「東ドイツ」を体験した思い出をもとに旅エッセイ、『ベルリン 東ドイツをたどる旅』(産業編集センター)を執筆。このほか、『ドイツ クリスマスマーケットめぐり』『ドイツで100年続くもの』などの著書がある。 ドイツの中でも大好きなものは、北ドイツのバルト海の自然風景。しかし、なぜか南ドイツに住んでいます。
Twitter: @gutereise_

見市 知